前回、田子夏坂⇔鹿角大湯の「世紀越えトンネル」に触れたが、今回は1月28日の東奥日報朝刊の方から『西十和田トンネル』について。

西十和田トンネル

記事に、「平川市温川と秋田県小坂町を結ぶ」とある。

小坂町のどこか触れられていないので、最初、温川から十和田湖外輪山の西側を縦断し小坂町中心部に至る長大トンネルでも掘る気か!?と、早とちりした。

調べてみたら、国道454号の滝ノ沢峠にバイパスをつくろうという構想の一部のようだ。

平川市温川のどこかから、『西十和田トンネル』で十和田湖外輪山を貫いて、小坂町滝ノ沢と和井内の間の十和田湖岸に出てくるバイパスらしい、とはわかったが、青森の県土整備事務所のサイトを見ても秋田県のサイトを見ても、ルート図が出てこない。


ルート図は出てこないが、ググったら、衆議院で木村太郎衆院議員(青森4区)が質問をしているのが出てきた。
平成二十二年六月四日提出の質問第五四三号『西十和田トンネル(仮称)に関する質問主意書』をそのままコピペする。

自公政権時の平成二十年に、東アジア等諸地域との交流を深めつつ、我が国の国土構造が自立的に発展し転換することを目的とした「国土形成計画」を策定した。しかし、国際的観光地である十和田湖と津軽一円への観光ルートの充実において不可欠な西十和田トンネル(仮称)の建設は、平成元年度から新規要望し、平成七年度には、青森県単独で地質調査・環境調査等を実施してきたが、遅々として進んでいない。西十和田トンネル(仮称)は、国道一〇二号の拡幅整備との相乗効果があり、津軽と南部の動脈形成東北縦貫自動車道への連結が容易になるなど、十和田八幡平圏域においての観光振興と経済波及効果が、秋田県北地域も含んで期待され、特に本年十二月の東北新幹線全線開業予定により、その重要性が今後益々高まってくるものと予想される。
従って、次の事項について質問する。

 西十和田トンネル(仮称)建設予定部分を含む六キロメートルの区間は、現在豪雪により冬期間の閉鎖を余儀なくされ、物流としての役割も寸断されている現状にあるが、これについて今後どのように応えていくのか、政府の見解如何。

 これまでの経過として、平成七年度から、青森県単独で地質調査・環境調査等実施してきているが、国はこれについてどう捉えているのか、政府の見解如何。

 西十和田トンネル(仮称)の建設及び国道一〇二号の拡幅によって、より一層津軽と南部の動脈が形成され、また東北縦貫自動車道へのアクセスが容易になると考えるが、政府の見解如何。

 三に関連し、本年十二月の東北新幹線全線開業予定により、地元ではさらなる観光振興と経済発展が期待されているが、今後の国土形成の観点から、西十和田トンネル(仮称)の建設に向けて、国は青森県と協力しながらどのように対応していくのか、政府の見解如何。右質問する。



この木村太郎衆院議員の質問に対する、政府(菅直人内閣総理大臣)の答弁を下記にコピペ。

御指摘の「国道一〇二号の拡幅」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、青森県においては、青森県が管理する一般国道百二号及び一般国道四百五十四号について、平成七年度から、西十和田トンネル(仮称)の整備を含む改良計画を策定するために地質調査及び環境調査を実施してきていると承知している。青森県によれば、当該改良計画の対象区間の全部又は一部が十和田八幡平国立公園内に位置することとなることが見込まれるため、環境保全等の観点から現在慎重に調査・検討を進めているとのことであり、政府としては、現段階において、西十和田トンネル(仮称)の整備に関する事業効果等について判断していない青森県による今後の調査・検討の推移を見守ってまいりたい。

ものすごくかいつまんで言うと、『青森県が西十和田トンネルの調査とか検討してるのは知ってるけど、政府はそれに関わってない。青森県の動きを見守るわ』という話。

公共事業に対し厳しい民主党政権ではあったけれど、みもふたもない言い方すると、『西十和田トンネル構想は国に相手にされてない』ということかと。



木村太郎衆院議員の質問と、東奥日報の記事で触れられているものに共通するのが、「物流の輸送路として現道では機能していないからトンネル掘って便利にしよう」というのと、「トンネル出来れば津軽と南部の交流が活発になるぞ」という点だと思われる。

推進派と、当時の民主党政権、双方にいろいろ思惑があるんだろうけれど、ちょっと考えてみる。


まず、滝ノ沢峠の冬季閉鎖の問題から。
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【画像はクリックで拡大します(青森県庁、弘前市役所HPより引用)】
冬も十和田湖では十和田湖冬物語、弘前では弘前城雪燈籠まつりと、素直に「良い」とおススメできるイベントをやっているので、温川⇔十和田湖の国道102号が冬季閉鎖というのは残念なのは間違いない。

十和田湖雪道【画像はクリックで拡大します(青森県庁HPより引用)】
左の図は、青森県が作成した八甲田周辺の冬季の通行規制図である。
十和田湖冬物語といえば冬の夜空を彩る花火が名物だが、花火終了後に青森市民が家に帰ろうと思っても、八甲田越えの国道103号と394号が夜間通行止になってしまう。
夏場は重宝する県道40号でも帰れないし、新郷経由で八戸方面へ向かう国道454号も冬季閉鎖。
青森県側は、一般道では奥入瀬川に沿って国道102号で十和田市まで出て、国道4号という、とんでもない遠回りルートしかないのだ。

そんな状況下で、滝ノ沢峠を挟む温川⇔十和田湖の国道102号が冬でも通行できるなら、黒石ICまで出れるので、奥入瀬渓流経由より相当便利である。

トンネルじゃなくても、除雪して24時間通行可能であれば、せめてもの救いであるとは思う。

が、今すでにある十和田大館樹海ライン(秋田県道2号)小坂ICに出れるので、それほど不便を感じないというのも事実。
樹海ラインは山岳ハイウェイ然としているのでスピードが出すぎて怖いというのはあるが、急カーブや急勾配もそれほど多くなく、スノーシェルターも多いので走りやすい道路である。

冬季ではなく、非積雪期のデータになるけれど、十和田湖休屋から、黒石ICまでの所要時間を、国道102号経由樹海ライン経由で比べてみよう。
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【画像はクリックで拡大します】
休屋から黒石ICまでは、樹海ライン経由で1時間5分56秒かかるのに対し、国道102号経由が58分5秒と、8分程度早く着く計算になる。
なるほど、黒石であれば滝ノ沢峠を含む国道102号を冬季通行可能な道路として整備したくなる。

では、津軽地方の中心都市である弘前であればどうか。

国道7号国道102号が接続する高田までの所要時間を算出したのが下図。

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【画像はクリックで拡大します】
弘前高田までとなると、国道102号経由の所要時間が1時間13分13秒に対し、樹海ライン経由は1時間6分44秒と、6分ほど逆転する。

休屋⇔弘前なら、樹海ライン経由の方が早いのである。

こうしてみると、弘前なら樹海ラインで既に便利という印象。

個人的な考えだが、十和田湖畔を離れれば黒石の街が近くなるまでコンビニもろくにない山中の国道102号をえんえんと50km近くも走って黒石ICまで行くよりも、さくっと小坂ICで高速に上がってしまいたいと思う。
国道102号が仮に冬季閉鎖から解放されても、雪道に不慣れな観光客のレンタカーとか観光バスを先頭にした、低速の大名行列ができるのを想像してほしい。
雪の山道だ。遅いのが1台や2台なら追い越して行けても、3台から4台連なったら、もう諦めて眠気と戦いながらのろのろ行くしかない。

自分なら、西十和田トンネルが出来ても、樹海ライン小坂ICから高速だ。


次は、津軽と南部の物流のルートとして意義があるかどうか。

黒石のために、国道102号の温川⇔滝ノ沢峠の冬季閉鎖は解除しても良いかもしれないが、そもそも現在の青森県が冬季閉鎖に踏み切るのは、道路事情以上に需要の問題もあるのだと思う。

こちらは、八甲田・十和田湖周辺の津軽・鹿角⇔南部の24時間交通量を図にしたものだ。
青森の峠交通量 (1)
【画像はクリックで拡大します】
ご覧の通り、十和田湖岸の往来は、発荷峠⇔休屋⇔奥入瀬渓流という流れで、秋田県鹿角市⇔青森県十和田市の流れが主流なのだ。

同じ青森県同士で津軽と南部を結ぶ山越えのルートで、24時間交通量が1,000台を越えるのは、みちのく有料県道40号だけ。

十和田湖⇔黒石・弘前方面の交通量は、お世辞にも多いと言えないのが実情だ。

黒石方面から西十和田トンネルで、滝ノ沢と和井内の間の十和田湖岸に出て来たとしても、それは津軽⇔南部の移動が格段に便利になると言えるルートだろうか?
宇樽部から迷ヶ平に登る国道454号の急勾配と急カーブ連続地帯を超改良しまくって、五戸に抜けるのが便利になれば話は別だろうが、西十和田トンネルだけでは津軽⇔南部の新しい移動ルートとしての効果はだいぶ薄い。
本当は、十和田湖北岸の御鼻部山を抜けて、奥入瀬バイパスや子ノ口方面へ抜ける方が便利なはずだ。


西十和田トンネルができても、黒石・平川⇔小坂・鹿角の物流の需要が、活発になるのかもだいぶ疑問である。
碇ヶ関⇔小坂を最短で結ぶ国道282号の坂梨峠は通年通行可能だが、24時間交通量はわずか約800台。
西十和田トンネルが出来ても、坂梨峠経由から十和田湖経由にシフトする数が多いとは、到底思えない。



現在の西十和田方面の交通量は、『世紀越えトンネル』を欲している田子夏坂⇔鹿角大湯の交通量の半分以下でもある。

『世紀越えトンネル』では弘大病院への大幅な搬送時間短縮の可能性を挙げたが、『西十和田トンネル』は短縮時間の想定もまだ出ていないようだし、効果がいまいちよく見えない。

優先順位は、『世紀越えトンネル』『西十和田トンネル』を凌駕していると考える。



どうせ十和田湖の外輪山にトンネルを掘るのなら、和井内から発荷峠を貫いて、樹海ラインの中腹に出てくるようなトンネルの方が良いと思ってしまう。
樹海ライン経由のルートで、平均旅行速度を落としているのは、和井内⇔発荷峠の急勾配と急カーブの連続地帯だから、これを克服してしまいたい。

十和田湖岸の標高と同じ400m地点同士で水平に掘ろうとすれば9km弱の長大トンネルになってしまうと思われるので、片勾配で良いから3〜4km程度のトンネルなら現実味のある話ではなかろうか。

それが無理でも、同じカルデラ外輪山の急勾配をループ橋とトンネルで克服している鹿児島県道16号などの前例もある訳で、今日の日本の土木技術をもってすれば、発荷峠の克服は難しくはないはずだ。

だから、「秋田県さん、発荷峠にトンネル掘ってくださいよ」と、元青森県民が言っていいのか微妙だけれど、僕は発荷峠にトンネルができる方が良い(仮称は発荷トンネルか、それとも樹海トンネルか)。

『西十和田トンネル』推進の方々には申し訳ないが、ちょっと意義があるのかどうか、疑問があるトンネルである。

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