昨年後半ごろから、岩手日報なんかが宮古港へのカーフェリー誘致を記事にしていたりしたがすっかり忘れていて、今朝の室蘭民報を見ていてたまげた。

一部、抜粋して引用する。

■ 室蘭―東北フェリー新航路検討、岩手・宮古が有力
国内大手フェリー船社が、室蘭港と東北を結ぶ新フェリー航路を検討していることが9日までに分かった。岩手県宮古市は初のカーフェリー誘致を積極的に進めており、有力とみられる。(中略)
複数の関係者によると、大手船社は苫小牧港発着のフェリー航路を持っており、きょう10日にも今後の新航路検討の方針を発表する模様だ。
新航路検討の背景には、物流を担うトラック業界のドライバーの労務管理問題があるとみられる。関越自動車道のバス事故を契機に、国はトラック事業者などに重大な法令違反があった場合の処分を厳格化している。
長距離輸送では、ドライバーは8時間の休憩が必要になる。現航路では苫小牧―八戸が8時間、苫小牧―仙台は15時間掛かる。フェリーに乗船していても2時間はドライバーの拘束時間とみなされるため、室蘭や苫小牧発着の10時間程度の航路のニーズがトラック業界で高まっている。(中略)
フェリー誘致に力を入れる宮古市は、東日本大震災からの復興に向けて道路網整備が進み、物流面から初のカーフェリーの誘致を進めている。
(以上 引用)

で、昼過ぎに、ウォールストリートジャーナルが時事通信社の配信ながら、続報を。

これも引用する。

宮古—室蘭にフェリー航路=18年春開設—川崎近海汽船
川崎近海汽船は10日、宮古港(岩手県)と室蘭港(北海道)を結ぶフェリー航路の2018年春の開設に向けて検討を始めたと発表した。所要時間は片道10時間で、1日1往復する計画。本州と北海道との間で貨物を運ぶトラックや観光客の利用を見込んでいる。 [時事通信社]
(以上 引用)


まずは、室蘭の皆様、フェリー航路復活おめでとうございます。



室蘭はおめでとうなのだが、なぜ宮古なのか。

室蘭民報がなかなか詳しく分析していて、トラック運送業界の労務管理問題に触れ、法令で8時間の休憩を取ったと見做される10時間程度の航路の需要が高まっているというのが、宮古⇔室蘭航路の開設の背景にあるのだろう。

時事通信は「観光客の利用を見込んでいる」ともある。

が、宮古のアクセスが悪すぎるイメージがあって、仙台港や八戸港に対する宮古港の優位性がよく見えない。


航路に接続する道路の概況を調べるために道路交通センサスを用い、札幌の南の玄関口である札幌南ICと、東北道と三陸道が合流する仙台南I.Cの間で、現行ルートと新航路の比較をしてみた。

室蘭 宮古
【画像はクリックで拡大します】

ご覧のとおり。


最速で移動できるのは、八戸⇔苫小牧航路
フェリーの上下船作業や手続きの時間を無視すれば、札幌南ICから仙台南I.Cまで、12時間40分を切る。

仙台⇔苫小牧航路の場合は、フェリーの上下船作業や手続きの時間を無視すれば、札幌南ICから仙台南I.Cまで約16時間というところ。

これに対し、宮古⇔室蘭航路の場合、国道106号で盛岡⇔宮古を横断し、盛岡南IC以南を東北道で走れば、フェリーの上下船作業や手続きの時間を無視して札幌南ICから仙台南I.Cまで15時間30分程度になる。
時間面でいえば、宮古港なら仙台港を利用するより30分の短縮にはなる。

が、札幌南IC仙台南I.Cの移動における休憩時間の確保という面で見ると、八戸港利用は6時間(労働時間6時間40分)、仙台港利用は13時間(労働時間3時間)、宮古港利用は8時間(労働時間7時間30分)で、宮古港利用の場合の労働時間が最長になるというデメリットも。
フェリー移動中に法令の休憩時間を確保するために、「宮古まで走れ」って、どうなんだろう。




費用を押さえて移動できるという面では、優位に立つかもしれない。
まだ、詳細な運賃の情報がないので、なんとも言えないが、就航する川崎近海汽船はシルバーフェリーの運営会社なので、八戸⇔苫小牧航路の運賃がある程度、参考になるかもしれない。

それより宮古⇔室蘭航路の強みになりうるのは、建設中の三陸自動車道の大部分が無料供用ということだろう。

三陸道は宮城県の桃生豊里までは4車線化事業が進んでおり、それ以北の宮古中央までの約175kmは暫定2車線ということになる。

全通時をシミュレーションするにあたり、仮に、仙台南⇔桃生豊里の62kmを平均旅行速度80km/hで流れると固定し、桃生豊里⇔宮古中央の175kmの平均旅行速度を変動させて計算してみよう。

現在、岩手県内で開通している三陸道の中で、大船渡周辺の連続した20.8km区間の平均旅行速度は73.2km/hである。
これに対し、山田道路は69.7km/hにとどまる。

この2区間の数値を元に、桃生豊里以北が73.2km/hで流れる(速い)ケースと、69.7km/hで流れる(遅い)ケースでそれぞれ算出すると、前者は3時間10分で仙台⇔宮古を結び、後者は3時間16分程度となる。

これなら宮古港経由でも、三陸道全通時には、札幌南IC仙台南I.Cを、フェリーの上下船作業や手続きの時間を無視して14時間45分〜14時間50分程度にて結ぶことが出来る。

これで、価格設定次第では、八戸道の通行料金を節約したい層の需要を、八戸港からある程度、奪える可能性はある。
乗用車で5,000円、大型車で8,000円程度、三陸道の方が通行料金は安くなるからだ。
(でも二戸と滝沢の間の国道4号が北海道ナンバーの爆走トラックで木曽高速みたいになってるわけで、やっぱ厳しいかも)




こう考えると、イマイチ、宮古⇔室蘭航路の需要というのがよくわからない。

個人的に、観光客の利用はあまり見込めないと思う。

ざっくり仙台の人口が105万、八戸の人口が25万として、宮古は5万強しかいない。
港の後背地の人口で見ても、仙台には南東北3県分、八戸にも青森太平洋側+岩手北部の分があるのに対し、岩手沿岸の市である釜石や大船渡、陸前高田、久慈を全部足しても八戸にすら及ばない(そもそも久慈は宮古より八戸に流れるだろう…)。

東北以南の関東や中部地方から遠路はるばる宮古まで走ってくる層の需要も、どれくらいあるか、厳しい数字になる予感だ。

北海道から震災復興の物資輸送が続くうちは、宮古へ物流の需要もあるだろうが、それならフェリーがなくなった釧路港のように室蘭港もRO-RO船でやむなしという気もしてくる。



宮古も思い切って、釧路港にフェリー航路を復活させて本州と道東と結ぶ唯一のフェリー航路にするとか、
室蘭港も苫小牧東港に不満がある(という噂を聞く)日本海側の港と組むとか、
そうすればインパクトがあったと思う。

海運に関しては完全に素人ながら、以上が雑感。

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