JR北海道が留萌本線の廃止を検討しているという報道が出たのは6月。
それに続いて、北海道新聞は「JR廃線拡大の可能性 第三者委、7路線8区間を例示」という記事を掲載。

・札沼線(北海道医療大学−新十津川)
・石勝線(新夕張−夕張)
・留萌本線(深川−増毛)
・根室本線(滝川−新得)
・日高本線(苫小牧−様似)
・宗谷本線(名寄−稚内)
・根室本線(釧路−根室)
・釧網本線(東釧路−網走)


ああ、ついに廃止の話が出てしまったかという思い。
上から順に平均通過人員が少ない(利用者が少ない)ということになるので、最も利用者数が多いのは釧網本線(東釧路−網走)である。

釧網本線の2014年度の平均通過人員数は466人だ。

青森や東北5県の人も対岸の火事と思うなかれ。

466人しかいないと見ればよいのか、466人いると見ればよいのか。



道新は記事内で「2014年度の輸送密度(1キロ当たりの1日平均輸送人員)が500人未満で、赤字ローカル線の中でも極端に採算が厳しい」と書いてある。

路線によって事情が異なるので、一概に500人を割ったら廃止対象だとは言うつもりはないが、北海道+東北6県の平均通過人員数(輸送密度)が500人以下の路線リストと、21世紀以降で廃線となったJR線の廃止直前の輸送密度をまとめたのが下表である。

路線名区間輸送密度備考
山田線盛岡−上米内 500人
米坂線米沢−小国 497人
可部線可部−三段峡 492人JR西、2003年11月30日廃止
陸羽東線最上−新庄 490人
北上線北上−ほっとゆだ 484人
釧網本線東釧路−網走 466人
磐越西線喜多方−五泉 465人
五能線東能代−五所川原 458人
根室本線釧路−根室 436人
陸羽西線新庄−余目 409人
宗谷本線名寄−稚内 405人
磐越東線いわき−小野新町 360人
山田線宮古−釜石 305人
日高本線苫小牧−様似 298人
気仙沼線柳津−気仙沼 278人BRTの数値
根室本線滝川−新得 277人
水郡線常陸大子−磐城塙 266人
気仙沼線前谷地−柳津 256人
大船渡線気仙沼−盛 250人BRTの数値
山田線上米内−宮古 241人
只見線会津坂下−会津川口 208人
米坂線小国−坂町 191人
留萌本線深川−増毛 142人JR北、廃止検討
津軽線中小国−三厩 135人
北上線ほっとゆだ−横手 132人
花輪線荒屋新町−鹿角花輪 124人
石勝線新夕張−夕張 117人
只見線只見−小出 109人
陸羽東線鳴子温泉−最上 103人
札沼線北海道医療大学−新十津川  81人
只見線会津川口−只見  43人
江差線木古内−江差  41人JR北、2014年5月12日廃止
岩泉線茂市−岩泉  23人JR東、2014年4月1日廃止



JR北海道が平均輸送人員で、JR東が平均通過人員数の公表なので、厳密には違う指標だが、どちらも輸送密度として扱うことをご容赦を。

出典:JR東管内分は同社HP「路線別ご利用状況」から2014年分を転載(岩泉線は2013年度分)。
JR北は上述の道新記事掲載の表から2014年分を転載。
JR西(可部線)分は1997年の数値(JR西が同線廃止に言及した1998年4月の記者発表から)


国鉄民営化の際、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法施行令 第三条第四項によれば、平均乗車距離が三○キロメートルを超え、かつ、輸送密度が一,○○○人以上の路線は廃止対象から外れるという基準があった。
一応、これらの路線でも、1987年時点では1,000人を超える輸送密度があったところがほとんどだ。
(岩泉線のように、当時から利用状況は悪かったが並行道路未整備を理由に存続した路線もある)

それが、このリストに載っている線区では500人を割るところまで落ち込んでいるということだ。

さて、釧網本線の乗客は466人しかいないと見ればよいのか、466人いると見れば良いのかだが、東北6県では釧網本線より平均通過人員が少ない路線が多数あることがわかる。

「おらが村のJRさ比べれば、釧網本線は466人いる!」というケースが意外とあるのだ。

北海道で廃止の話題が出るのに東北で話題が出ないのは、JR北海道の経営状態が厳しいから、だけではないのだ。

東北のローカル線は、管轄するJR東日本の首都圏のドル箱路線や東北新幹線の黒字分があるから、JR北海道のように急いで赤字路線の廃止に手を付けなくて済んでいるのが大きな理由だろう。

もし仮に国鉄分割時にJR東北なんてのが発足していて、東北6県が関東地方と分離されていたら、今頃はJR四国JR北海道に次いで経営基盤が脆弱な鉄道会社になっていただろう。
JR北海道がローカル線の廃止を進め始めたように、JR東北も同じように廃止を進め始めるであろうことは想像に難くない。
上の表に乗っている輸送密度の数値が悪い線区は、廃止の対象になっていく可能性が高いと考える。


東北6県のJR在来線の大半で平均輸送人員数が減っている


ここで、東北6県のJR東日本の路線ごとに、国鉄民営化の1987年と2014年を比較して、輸送密度がどれだけ増減したか、比率を色分けした地図を掲載したい。

東北6県のJR線
画像はクリックすると拡大します。



各色ごとの具体的な比率は図に掲載した凡例をご覧いただくとして、どす黒い赤色の線区ほど平均通過人員の減少が深刻で、青色や紫色に近い線区は逆に増加していることを示す。

東北6県で、民営化直後より増加している線区は東北新幹線などごく僅かなのだ。

在来線でみると、1987年より増加という成績を残せているのは仙台都市圏の仙山線(仙台−愛子)や東北本線(福島−白石−仙台、岩切−利府)程度しかない。
田沢湖線も増加していることになっているが、これもミニ規格とはいえローカル線から秋田新幹線に変貌を遂げた線区である。

あとの在来線はみな、幅の差異こそあれ、1987年より減少しているのである。


特に、県境を越える線区で成績が落ちているように思う。
奥羽本線(大館−弘前、新庄−大曲)や花輪線(荒屋新町−鹿角花輪)、北上線(ほっとゆだ−横手)、東北本線(小牛田−一関)、陸羽東線(鳴子温泉−最上)、仙山線(愛子−羽前千歳)、羽越本線(村上−鶴岡、酒田−羽後本荘)など県際区間は明らかに前後の線区より成績が落ちている。

同一県内の線区であれば、自動車の運転免許を持っていない高校生が通学に使うとか、お年寄りが県庁所在地など地域の中心都市に所用で出かけるとか、需要はある程度残るのだろう。
が、県境を越える広域移動ではJR在来線を使用する人の減少が大きいということだ。

高速道路や空港(庄内空港など)の整備が進んだことで、広域移動の手段は、高速バスや自家用車、航空機への傾斜が進んでいるのだろうと推測できる。
あるいは、山形新幹線の開業で福島−秋田直通特急がなくなった奥羽本線の沿線の横手・湯沢なんかは奥羽本線から秋田新幹線経由で東北新幹線にシフトしているし、秋田新幹線だって秋田沿岸部から新潟で上越新幹線に乗り継いでいた羽越本線の需要を東北新幹線にシフトさせただろう。
他の交通機関のみならず、自社の新幹線開業など、さまざまな高速交通網の選択肢が増えたことと、沿線の人口減が理由で、県際線区では利用者が大きく減ったのだろう。


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2013年の正月4日の五能線五所川原駅 弘前駅行の最終列車
五所川原で酒を飲んだ帰りに撮影するが、乗客は1両に自分含めわずか3名だった。
これでも、五能線内ではもっとも乗客数が多い区間(五所川原−川部)である。




もっとも、減少率が廃止の議論に直結しないことは理解している。
一例を挙げると東北本線の黒磯−新白河は1987年の約3分の1まで減っているが、それでも上の表に載せた線区に比べれば格段に多い2,600人近い輸送密度を持つ線区である。
国土軸を構成する幹線なので貨物列車の通過もあるし、廃止させられないだろう。
これは日本海縦貫線を構成する羽越本線などにも同じことが言えると思う。

が、幹線から外れる上に減少幅も著しく利用者数も少なすぎる状態の線区に関して言えば、今後も利用減少傾向は避けられず、厳しい状況に追い込まれていくのが想像できる。


2015年の現時点では、JR東日本は、輸送密度の低い線区や、利用者数が激減した線区を廃止するとは言っていない。


が、東日本大震災の津波で被災した気仙沼線と大船渡線は、鉄路での復旧を断念する方針であることが河北新報などに報じられている。
また、福島の豪雨災害で被災し運休中の只見線についても、『仮に復旧するとした場合の安全対策費用と工期等について』という資料を公表し、「只見線の厳しい現状」(原文ママ)を訴えている。

JR北海道は高波で被災した日高本線を自社だけで復旧させるのは難しいと言っているが、JR東日本だって利用者数が少ない線区は大災害に見舞われたら復活が難しい状況になりつつあるのは間違いないのだ。

僕の個人的な見解だが、自然災害が原因で廃止に追いやられるかJRの判断で廃止になるか、もうどっちの要因が先で廃線になるか微妙な営業状況に追い込まれている線区が少なくないと思う。


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震災直後の2011年4月14日に撮影したJR気仙沼線。
(写真左:南三陸町志津川、写真右:本吉町)
国道45号を走行中の車載カメラより撮影。


2年後の2017年には、民営化から30年なのだ。

売上がかつての10分の1強まで激減している、なんて部門があれば、民間企業なら費用対効果を再検討し、ダメなら撤退やむなしだろう。
それを30年も続けた。
株主総会で「30年もやったんだし、もう良いでしょう」という提案をする株主がいてもおかしくない。

2017年以降になって、「○○市のみなさん、○○線は廃止させてください」と言いにきた時、「公共的な性質を持った会社だろう」という正論や「寝耳に水」なんて言葉を、30年にわたって不採算路線を維持してきてくれた株式会社に吐くのは酷だ。



「在来線鉄道イラネ」が県民の総意なら別に良いけど、「鉄道が無くなるのは困る」と思うのであれば、北海道で起きているJR線存廃問題は対岸の火事じゃないと思わないと。

自分の子供や孫が高校生になった時に「○○高校に通いたいけど交通機関が無い」では困るという人は、自分だけは無いはず。
夏に青森に帰ったら、在来線に乗っておくか。

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