青森県産米の新品種・ 青天の霹靂 がとうとう特Aを獲得した。

1456481153579わしも買って食ったが美味いコメだ。
写真は青森で買った5kg袋。
東京でも、2kg袋を1回だけゲットできた。

わしは学生時代は仕送り米で「つがるロマン」を食っていた。
不味い米ではないが、コシヒカリやあきたこまちに比べて特別美味いとも思わなかった。

社会人になって東京に飛ばされてからは、つがるロマンは買わなかった。
親近感でお隣の秋田県産あきたこまちか、北海道産米(ゆめぴりかななつぼし)を買うことが多かったが、佐渡島に旅行してコシヒカリの美味さに感動してからは、高くても佐渡コシヒカリを探して買うようになった。

それが今や、こんなとこにあるはずもないのに向かいのホームや路地裏の窓やどっかに青天の霹靂の姿をいつでも捜しているのである。

青天の霹靂はマジで美味い。



さてさて。

青天の霹靂がまだ開発段階の頃、「青森は特A米が出ない」としばしば言われていた。

「つがるロマン」も特Aに届かず、「岩手のようにあきたこまちを栽培すればよい」とか、「本州最北端という冷涼な気候のせいだから無理」とも言われたりしていた。

ところが、2010(平成22)年に青森より寒い北海道で道産品種「ななつぼし」が特A評価を獲得。


この北海道の快挙が、青森県の開発者や生産者に刺激になったのではないかと思う。



隣県に刺激を受けるというのは各都道府県間で普通にあることだと思うが、青森県が執った青天の霹靂の戦略は、山形県のつや姫の戦略を参考にしたというのが何とも印象深い。



なぜかって、特Aという評価が誕生した1989(平成元)年、山形は特Aが出せなかったのだ。

特A元年でもある平成元年、新潟県産コシヒカリ(福島県産も獲得)と、秋田県産あきたこまちは特Aを獲得した。

南に位置する日本一の米産地・新潟のコシヒカリや福島で生産されたコシヒカリに負けるのはともかく、北隣に位置する秋田の新品種に負けるというのは、庄内平野や山形盆地というわが国有数の穀倉地帯を有する山形にとって心中穏やかでなかっただろう。

yoshiakimogami◀最上義光(「独眼竜政宗」より)

特Aを取れなかった東北各県の中でも、山形県を出し抜いて1992(平成4)年に宮城県がひとめぼれで特Aを獲得。
伊達政宗・最上義光以来のライバルに先を越された山形が「今年こそは」と意気込んだ1993(平成5)年、東北は昭和大恐慌以来かという大冷害に見舞われた。

それでも苦難を乗り越えつつ、山形県は1994(平成6)年に自県登録品種のはえぬきと、どまんなかが特Aダブル受賞
当時の山形の人々の喜びはさぞ大きいものだったろうと思う。

そういう山形の経緯を知っているからこそ、青森が山形を参考にして特Aというのがなんとも感慨深いのだ。

■ 北海道・東北・新潟8道県の特A米取得状況表
道県名地域名品種生産年(平成)


2
7
2
6
2
5
2
4
2
3
2
2
2
1
2
0
1
9
1
8
1
7
1
6
1
5
1
4
1
3
1
2
1
1
1
0
98765432
北海道無指定ななつぼし6
無指定ゆめぴりか5
無指定ふっくりんこ1
青森中弘南黒青天の霹靂1
津軽青天の霹靂1
青森中央青天の霹靂1
岩手県中あきたこまち2
県南ひとめぼれ21
宮城県北ササニシキ1
ひとめぼれ19
県中ひとめぼれ16
県南ひとめぼれ1
無指定ひとめぼれ2
つや姫3
秋田県南あきたこまち12
県北あきたこまち10
地廻あきたこまち1
仙北あきたこまち4
山形無指定コシヒカリ6
はえぬき7
ひとめぼれ6
つや姫6
庄内はえぬき14
ひとめぼれ5
内陸はえぬき15
どまんなか1
コシヒカリ5
福島会津ササニシキ1
コシヒカリ20
ひとめぼれ7
中通コシヒカリ14
ひとめぼれ8
浜通コシヒカリ3
新潟上越コシヒカリ10
中越コシヒカリ19
下越コシヒカリ5
魚沼コシヒカリ27
岩船コシヒカリ12
佐渡コシヒカリ23

凡例
●:特A取得
無印:特A取得失敗
緑文字品種:自県開発品種


さて、日本穀物検定協会の資料から北海道・東北・新潟の8道県の特A取得状況をまとめてみた(上表)。


やはり北に位置する北海道、青森の取得状況は寂しいことになっている。

だが、よくみると、新潟のコシヒカリだって特Aを取れなかった年が一度や二度ではないことがわかる。
冒頭で触れた佐渡コシヒカリだって、4回ほど特Aを逃している。
(それでも27年間で23回獲得というのは凄まじい事である)

ブランド米のイメージが強いササニシキも、1992(平成4)年に福島県会津産が特Aを取ったのと、宮城県で1995(平成7)年に取ったというくらいしかない。
宮城県ではその後、主力品種がひとめぼれに交代したので、ササニシキはもうなかなか特Aの舞台に出て来ることもないのだろう。
そのひとめぼれもまた、特Aを逃している年は複数ある。

コシヒカリと共に1989(平成元)年に史上初の特Aを取った秋田県産あきたこまちだって、27年で4回ほど特Aを逃している。


特Aの座は防衛し続けるのも大変なのだ。


平成の米騒動とよばれた1993(平成5)年の大冷害の年でも、唯一陥落せず27年連続の特Aになっている魚沼コシヒカリというのはやはり偉大だ。
他に特Aから陥落していないのはつや姫もあるが、初獲得が2010(平成22)年なので(ただし参考品種として2008年から連続獲得)、平成5年を勝ち抜いた27年連続獲得の魚沼コシヒカリと比較するのは難しい。

もし2016年に大冷害が発生して青天の霹靂が特A陥落なんてことになったとき、掌を返すように袋叩きにしそうな輩が出てくる気がするが、特A取るために開発者や農家がどれだけ苦労してるか、新潟のコシヒカリでも特Aから落ちる時は落ちてるというのを頭の片隅に置いておいてほしいと思う。



それから。
特Aの評価を維持するのもたいへんだけれど、特A品種を開発するのはもっと大変だろう。


青森は最後まで特Aを取れていなかった県であるが、福島県と岩手県は自県で開発した特A品種が未だ無い。
(正確には岩手県は今回、「銀河のしずく」が参考品種で特Aを取った)

あきたこまちも実は福井県の交配種子だ(とはいえブランド米になるよう育成したのは秋田県の努力であるから秋田県のブランドでいいと思う)。

独自品種があるかどうかだが、県によっては「自県で米の独自ブランドを開発する必要がない」という考え方もあるだろう。
JA全農福島のホームページを見ればコシヒカリひとめぼれの2品種が前面に出されているように、福島からは今のところ自県独自ブランドにこだわらないというスタンスが伝わってくる。

逆に、参考新種ながら「銀河のしずく」を出してきた岩手は、独自開発に積極的だと受け取れる。

三日月の丸くなるまで南部領

ちなみに今まで岩手県に特Aをもたらしてきたのは、あきたこまちと宮城県生まれのひとめぼれだ。

ひとめぼれは21回の特Aを誇っているが、これはすべて「県南」(概ね金ヶ崎町以南の奥州市、一関市など内陸南部)である。
これは実も蓋もない言い方だが、宮城県(旧伊達藩領)生まれのひとめぼれが、岩手側の旧伊達藩領で特Aを出し続けてきたということだ。

さすがに寒冷地に強いあきたこまちなら、岩手の「県中」(盛岡市周辺)でも特Aを2回出せているが、盛岡より北に位置する秋田の県北が10回も特Aを出しているのに比べると寂しい結果になっている。


なんぼ温暖化だといっても、南部の殿様の領土(旧盛岡藩領・八戸藩領)は今も米作りにとって非常に厳しい条件にあるのだろうというのが、特A米の分布から見えてくる。
青森県も、南部の方(三八・上北・下北)には青天の霹靂の栽培を認めなかった。

今の青森県東部から岩手県中北部に至る南部の領土は、太平洋からヤマセが直撃する冷害常襲地帯で、江戸時代には飢饉や一揆が連発した地域だ。

津軽為信公が治めた津軽で先に特A「 青天の霹靂 」が出たというのは、世が世なら「悔辱の怨を報じ申すべく候」と騒ぎ立てる相馬大作みたいなテロリストが出てきてもおかしくない。

来年、盛岡城下(岩手・県中)の米が特A評価に続けるかどうか、津軽が油断して青天の霹靂が陥落したりやしないか、というのが実に興味深い。


blog_rankingクリックでブログランキングに投票!