前回の記事では「競争入札手続きに則り、営業者を募集したが、応募者・落札者がなく道路公団が直営したエリア」について考察してみた。

今回はそれらより悲壮感が漂ってくる、「交通量等を考慮すると、営業者を募っても、不採算となることが明らかである場合のエリア」についてみていくことになる。
民営化直前の末期の時期において、47か所あったという。
前回同様、平成17年の道路交通センサス(国交省)のデータを基に、当該エリアの位置する区間の24時間交通量(上下別の施設については総交通量÷2となるので、実際の交通量は×2)とともにまとめたのが下表になる。

交通量等を考慮すると、営業者を募っても、
不採算となることが明らかである場合のエリア
路線名上下別エリア名施設種類交通量
(台数)
備考
東北津軽SAレストラン
2,810
東北津軽SAレストラン
2,810
秋田西仙北SAレストラン
4,465
秋田西仙北SAレストラン
4,331
磐越阿武隈高原SAレストラン
4,745
磐越阿武隈高原SAレストラン
4,745
磐越阿賀野川SAレストラン
3,551
磐越阿賀野川SAレストラン
3,551
徳島上板SAレストラン
3,951
徳島上板SAレストラン
3,951
長崎川登SAレストラン
8,687
大分山田SAレストラン
8,176
大分山田SAレストラン
8,176
大分別府湾SAレストラン
4,932
大分別府湾SAレストラン
4,932
沖縄伊芸SAレストラン
9,171
沖縄伊芸SAレストラン
9,171
道央砂川SAハイウェイショップ
5,487
道央砂川SAハイウェイショップ
5,488
道央岩見沢SAハイウェイショップ
6,707
道央岩見沢SAハイウェイショップ
6,707
道央樽前SAハイウェイショップ
4,317
道央樽前SAハイウェイショップ
4,317
道央有珠山SAハイウェイショップ
2,183
道央有珠山SAハイウェイショップ
2,183
東北花輪SAハイウェイショップ
3,902
東北花輪SAハイウェイショップ
3,902
八戸折爪SAハイウェイショップ
2,593
八戸折爪SAハイウェイショップ
2,593
常磐中郷SAハイウェイショップ
7,471
常磐中郷SAハイウェイショップ
7,471
関越塩沢石打SAハイウェイショップ
5,712
関越塩沢石打SAハイウェイショップ
5,712
北陸名立谷浜SAハイウェイショップ
6,193
北陸名立谷浜SAハイウェイショップ
6,085
岡山高梁SAハイウェイショップ
3,835
岡山高梁SAハイウェイショップ
3,835
中国吉和SAハイウェイショップ
5,627
台風14号で山陽道通行止
中国吉和SAハイウェイショップ
5,627
台風14号で山陽道通行止
山陽佐波川SAハイウェイショップ
7,673
台風14号で山陽道通行止
山陽佐波川SAハイウェイショップ
7,673
台風14号で山陽道通行止
大分玖珠SAハイウェイショップ
5,910
大分玖珠SAハイウェイショップ
5,910
九州山江SAハイウェイショップ
9,638
九州山江SAハイウェイショップ
9,638
宮崎山之口SAハイウェイショップ
6,591
宮崎山之口SAハイウェイショップ
6,591


八戸道 折爪SAもしっかりこの中に入っているわけだが、これらのエリアの営業は日本道路公団が直営していたわけである。
もっとも、直営とは言っても日本道路公団レストラン営業部とかハイウェイショップ営業部みたいな部署があって公団職員がやっていたわけではなく随意契約した業者への業務委託ではある。

当ブログでは仮名とさせて頂こうと思うが、公団直営エリアで業務委託されていた業者としてA社とE社がある。
このA社もE社も、公団が内閣府に報告した資料によれば「不採算箇所など直接営業を行う必要がある場合に、円滑に直営事業を行うことができるよう現場部門のアウトソーシング会社として、財団が育成した企業であり、各地で安定した営業を行うことができるため、随意契約により委託しています。」と全く同じ文章で説明されている。

上の表の47か所のうち20か所で業務委託されていたのがA社で、23か所がE社だ。

このA社とE社の2社を育成した財団なるものが、国交省の役人の天下り先になっていたりしたわけで、猪瀬が舌鋒鋭く批判していた姿を覚えている方もいらっしゃるかと思う。

shiozawaishiuchi
▲ 日本道路公団から「儲からない」と目されていた関越道 塩沢石打SAは民営化後、ガソリンスタンドが廃止された。
  運営していたのはA社だった。



●交通量とSAへの休憩需要は必ずしも相関しない


さて、運営についてはこの辺で切り上げて、各エリアをみていこうかと思う。

びっくりしたのは、北は砂川SAから南は有珠山SAまで、道央自動車道のSAが軒並み「交通量等を考慮すると不採算となることが明らか」と分類されていたことだ。
道路公団から北海道で採算が取れると見られていたのは、道都・札幌にほど近い札樽道・金山PAと、道央道・輪厚PA野幌PAだけだったということか。

それにしても、片方向で6,700台を超える交通量がある岩見沢SAが不採算とみられていたというのは衝撃的だ。
なぜなら、レストランもガソリンスタンドも全部あっても採算OKだということになっている東北道 岩手山SAの片方向の交通量は約7,400台。
たった700台の差で「フルオプション完備」から「売店すらいらない」という評価に下がるものだろうか。

やはり、北海道の人やモノの流れの中心である札幌を通過する交通需要が決して大きくないのが理由だろうかと思う。

北海道第二都市は旭川だが、札幌ICから旭川鷹栖ICまでは125kmしかない。
旭川まで80km/hペースでゆっくり行っても、道央道を走っている時間はせいぜい1時間半しかなく、100km/h以上でぶっ飛ばすドライバーなら約1時間というところだろう。

比較的短時間で行けてしまう札幌⇔旭川間で、わざわざSAで休憩しようとする需要は大きくなかろう。

道南に位置する北海道第三都市の函館方面へ向かう場合も、道央道で苫小牧や室蘭方面へ迂遠するのを嫌って、ショートカット可能な一般道の国道230号に奪われる需要が小さくない。
胆振総合振興局所在都市・室蘭の玄関口となる登別室蘭ICまで走っても110kmしかない。
これもまた、わざわざSAで休憩しようとする需要は大きくない
と考えさせられる。

前回の記事で沖縄道 伊芸SAについても触れたがが、やはり移動距離が短いと休憩の必要性が低くなる。


●やっぱり苦しい末端区間のSA

折爪SAだけでなく、大分道 別府湾SA・玖珠SA宮崎道 山之口SAといった、終点にほど近いエリアがやはりリストに載っている。


面白い所では、開設当初は磐越道が開通しておらず、終点のいわき中央ICまで39kmしか離れていなかった常磐道 中郷SAなんてのもリストに入っている。
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▲ 夜間でも食事コーナーに多くの人が着席しており、不採算とは思えない活況を呈する現在の中郷SA


ただ、いわきから先の磐越道のみならず常磐道が全通した今となっては、中郷SAは末端区間のSAとは言えない状況に好転しているのは間違いない。
実は2015年8月16日に中郷SAを利用したのだが、ちょうど仙台で左翼団体・全日本教職員組合の大会があったので、それに行った帰りの右翼団体の街宣車が給油所に大集結しており、とても利用できないほどの混みっぷりになっていた。

福島第一原発が嫌われて、まだ東北道の需要を奪うまでには至っていないものの常磐道の延伸で中郷SA需要は間違いなく増加しているのである。


●よくわからないのが佐波川SA山江SA

さて、ここまでもっともらしく偉そうに書いてきたところで、なぜ採算が取れないと見られたのかよくわからないのが、片方向で1万台に迫るほど交通量のあった九州道 山江SAと、山陽道 佐波川SAの2つだ。

佐波川SAは上の表の数値が取られた2005年の台風14号によって岩国−玖珂が長期通行止となり、中国道に交通量を大きく奪われたという事情があり、2010年のデータでは片方向で約13,500台という大きな値を出しているのだ。

広島⇔北九州・福岡という大都市間にあり、なぜなのか。

特に広島から福岡までは約276kmで、佐波川SAは広島から約122km、福岡からで約154kmというやや広島寄りながら中間地点に近い位置にあり、休憩するポイントとしても需要はありそうなのである。

福岡寄りにわずか23.9kmの地点に中国道 美東SAがあるし、広島寄りの下松SAも約43kmの距離と間隔が狭く、各エリア間の需要の奪い合いが激しそうなエリアではあるが、それが理由かどうかはわからない。


九州道 山江SAも、1989年の八代IC―人吉IC延伸から1995年の全線開通までの6年間、九州道末端区間であった(しかもメインルートの国道3号から相当に離れる)という事情はあった。
ただ、6年我慢すれば鹿児島や宮崎の交通が流れ込むとわかっていて、なぜ採算が取れないと見られたのかは不明だ。

福岡方に位置する九州道 宮原SAは39kmしか離れていないという事情はあるが、逆に鹿児島方面だと次のSAは約76kmも先の九州道 桜島SAである。

こういったところを、猪瀬や他の委員に突っ込んでほしかったところだが、読む限り、出てこないんである。



ともかく、天下り先という批判を受け、その意見はごもっともなのだけれど、天下り先が面倒見てくれていた地方末端部のエリアが大幅な縮小という憂き目に遭ってしまったのも事実。

公共性を帯びた施設の存廃を、採算性だけで決めてしまって良いのだろうかとは、考えさせられるところだ。

鉄道であれば利用者側の「乗って残そう」運動もありえるが、急ぐための高速道路で、エリアに着く度に毎回休憩するというのも本末転倒な話である。

休憩のために渋滞するほどの海老名とか談合坂とかで挙げた利益で、地方のエリアを助けるっていうのはそんなに難しい事なのだろうか・・・

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