いよいよ1月14日、15日は大学入試センター試験である。

テレビをみていたら池上彰が、暗記になりがちなセンター試験を見直し、記述式の新しい試験を国が検討しているという風のことを言っていた。

暗記でセンター試験の数学が突破できるとは思えないが、それは置いといて、明治大学に行った友人が「センター試験だっきゃ暗記大会だ」と言っていたのは印象に強く残っている。
地歴公民科目には暗記大会の側面があるのも、否定はできないだろう。

ところで、僕は暗記が悪いことだとはとても思わないのだ。


イオンのレジ横に、『イオンチャンネル』なるモニターがあるのをご存知だろうか。

会計待ちの間に、イオンの広告の他に雑学の紹介などをしているものだ。



5年くらい前だと思うが、イオンチャンネルが鮭と鱒の違いについてやっていたことがあった。

イオンチャンネルは、「春に河川に遡上するのが鱒で、秋に遡上するのが鮭だ」というのである。

いや、ちょっと待ってほしい。
krftms(画像はwikipediaより転載)

カラフトマス(樺太鱒)は夏から秋に遡上するではないか。
カラフトマスは我が国のサケ・マス類の中では漁獲量がシロザケに次いで第2位という、代表的なサケ・マス類の魚種である。
そういう、ポピュラーな魚種であるカラフトマスが出てくる時点で、イオンチャンネルの説明はいきなり破綻してしまう。

たしかに春に遡上するマスとしてサツキマスやサクラマスもいるのは間違いない。
前者はアマゴ、後者はヤマメの降海型である。

山形県に初夏に旅行すれば、サクラマスが『ホンマス(本鱒)』という地域名(方言)で流通している。
そういう地域であれば、鱒は春だ、と言うのはあるかもしれない。

hmms(画像はwikipediaより転載)
しかし、ヒメマス(姫鱒)なんてのもいる。
ヒメマスはベニザケの陸封型であり、十和田湖など内水面で生涯を送るから、そもそも海から河川に遡上という行動をしない。

ではヒメマスの降海型であるベニザケはどうかというと、秋に遡上する。
真っ赤なベニザケを襲う冬眠前のヒグマの映像をテレビでみたことがある方もいるはずだ。

ざっと国内の主要なサケ・マス類をまとめてみよう。

主要なサケ・マスの魚種遡上時期備考
陸封型降海型
シロザケ夏〜秋陸封型は殆ど存在しない
カラフトマス夏〜秋陸封型は殆ど存在しない
イワナアメマス夏〜秋
ヤマメサクラマス春〜夏
アマゴサツキマス春〜夏
ヒメマスベニザケ夏〜秋
ギンザケ夏〜秋陸封型は殆ど存在しない
     マスノスケ産地による陸封型は殆ど存在しない


ベニザケとヒメマスを引き合いに、海にいるのが鮭だとか、淡水にいれば鱒だともいえない。
前述のカラフトマスは海にいる。

英語のsalmon(サーモン、鮭)とtrout(トラウト、鱒)に分けるのはどうか―

King-salmon(キングサーモン)の和名はマスノスケ(鱒ノ介)だ。
鮭と鱒の齟齬が生じる。



このように鮭と鱒とを呼び分ける理由について、考えることに意味はある。

しかし、それを究明しようとすれば生物学のみならず言語学や民俗学まで、幅広い学問にあたる膨大な作業が必要になるかもしれない。
その究明を行うより、種類によって鮭と呼んだり鱒と呼んだり変わる、という事実を暗記する方が簡単だ。

サケマスに限らず、暗記する方が合理的な場合は人生の様々な場面で数多く出てくる。

暗記力が高い、というのはその人の長所である。
暗記によって情報を蓄積できる容量が多いという能力を、評価することも大事な事のはずである。

そういう意味では、私は世の中に『暗記大会』があっても悪いことではないと考えるのである。

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