僕は2015年3月10日に「室蘭港フェリー復活報道を受けての雑感」という記事をアップした。

詳細は上記のリンク先を参照してもらうとして、当時の室蘭民報の記事を再度引用すると、

長距離輸送では、ドライバーは8時間の休憩が必要になる。現航路では苫小牧―八戸が8時間、苫小牧―仙台は15時間掛かる。フェリーに乗船していても2時間はドライバーの拘束時間とみなされるため、室蘭や苫小牧発着の10時間程度の航路のニーズがトラック業界で高まっている。


という、休憩時間の確保という話が室蘭−宮古のフェリー航路開設の背景にあったて、室蘭−宮古なら距離的に合致するというのであった。

一方で、僕は、岩手県沿岸の人口の少なさと交通アクセスが決して良くはない事を理由に、「利用はあまり見込めないと思う」と書いた上で、「宮古も思い切って、釧路港にフェリー航路を復活させて本州と道東と結ぶ唯一のフェリー航路にするとか、室蘭港も苫小牧東港に不満がある(という噂を聞く)日本海側の港と組むとか、そうすればインパクトがあったと思う。」と書いた。

それから2年3ヶ月ほど経った本日2017年6月1日、デーリー東北(本店所在地・青森県八戸市)になかなか衝撃的な記事が載った。

八苫航路
【画像はデーリー東北新聞社公式サイトのスクリーンショットの転載】


八苫航路、再評価の流れ 運転手の労働環境変化で(2017/06/01 08:30)

トラック運転手の労働環境の変化を受けて、八戸港と苫小牧港(北海道)を結ぶフェリー航路の役割が再評価されつつある。国が運転手の労働時間を厳格化する一方、フェリーの乗船時間を全て休息に算定することを可能としたためだ。東日本大震災前の2009年度と比べると、トラック輸送量は1割以上増えており、16年度は15万7645台(前年比698台増)で、川崎近海汽船(東京)による4隻運航となった06年度以降で最も多かった。

(デーリー東北より引用)


八戸に対する宮古の武器だったはずの「2時間は休憩ではなく拘束時間ルール」が無くなってるじゃないか!

もう、八戸−苫小牧で良いのでは・・・・・・。
◆ 苫小牧港の長距離便集中依存には輸送量逼迫リスクもある

ただ、北海道側の事情を考えると、苫小牧港に依存し過ぎるのもどうかとは考える。

2015(平成27)年の北海道のフェリー航路の車両航送台数の統計結果が下表である。

航路別自動車航送台数航送台数占有率(%)
航路全体道外航路道内航路
総数
1,443,207
100.00
道外航路計
1,371,041
95.00
100.00
道内航路計
72,166
5.00
100.00
小樽−新潟・敦賀・舞鶴
145,520
10.08
10.61
小樽港計
145,520
10.08
10.61
苫小牧−秋田・新潟・敦賀・舞鶴
217,341
15.06
15.85
苫小牧−仙台・名古屋
183,967
12.75
13.42
苫小牧−八戸
218,666
15.15
15.95
苫小牧−大洗
216,197
14.98
15.77
苫小牧港計
836,171
57.94
60.99
函館−大間
27,776
1.92
2.03
函館−青森
361,574
25.05
26.37
函館港計
389,350
26.98
28.40
稚内−利尻・礼文
50,357
3.49
69.78
江差−奥尻
13,137
0.91
18.20
瀬棚−奥尻
4,910
0.34
6.80
羽幌−天売・焼尻
3,762
0.26
5.21
平成27年の北海道運輸局統計より作成(車両航送台数にはトラック以外にも乗用車やバイクなどすべて含む数値)

ご覧の通り、苫小牧発着のフェリーの車両航送台数が北海道外とを結ぶフェリー全体の60%を占めており、同じ道央圏発着でも日本海側の港が主体の小樽港に大差をつけている。

まあしかし、苫小牧港特有の長距離便というのは安易な増発は難しいわけである。

苫小牧 函館
【画像はクリックで拡大します】

詳細は上の図を参照して頂くとして、長距離航路というのは短距離航路に比べて時間的制約が大きいために増発が難しいのである。
1週間でせいぜい1隻あたり1往復増というのが限界だろう(1.5往復増までは行けるかもしれない)。
現に、苫小牧大洗便は繁忙期には予約があっという間に埋まってしまうことは北海道のみならず関東でも知られた話である。

短距離航路である青函航路は所要時間も短いので、需要に応じて増発を行うことが可能である。
こちらは計算上は1週間で1隻あたり14往復の増発が可能である。
このように短距離航路には需要に応じて増発を行う柔軟さがあることが、苫小牧港の重要度が増しても、青函航路を軽視できない理由の一つである。

逆説的にいうと、苫小牧航路のフェリーが青函航路のそれと比較して大型であるのは、ダイヤ面で物理的に増発が難しいので1便あたりの収容台数を大きく取って対応している、ということでもある。
◆ 苫小牧港に余裕を持たせる為に釧路便を復活させよう

苫小牧港であるが、苫小牧市街地や道央道にアクセスしやすい苫小牧西港に入れず、苫小牧東港を利用しているフェリーがあるのは良く知られている。
ダイヤ面で増発が難しいだけではなく、受け入れる側の苫小牧港もまた活況を呈している=余裕が少ないのである。

道央圏の場合は繁忙期等で苫小牧港や小樽港の便の予約が取れない場合も函館港にエスケープしやすいが、道東の場合は釧路から最寄りのフェリー港である苫小牧港でも約280kmあり、釧路で苫小牧便が取れず函館港にエスケープとなると540kmもあるのだ。
青森港フェリーターミナルに行くと、「函館」や「札幌」に交じって「釧路」や「帯広」ナンバーの車両も見かける訳で、道東から函館港までエスケープするのも別に珍しい事ではないのである。

1999年までは釧路港⇔東京港で近海郵船のフェリーが就航していたのが知られているが、釧路市では今また、フェリー復活に向けて誘致運動が始まっているのである。

そして就航先の筆頭候補が「八戸」である…!

だが青森県ではほとんど知られていないではないか。

八戸釧路航路
【画像はクリックで拡大します】

実は2016年3月10日の朝日新聞で「釧路に再びフェリーを」と題した記事が掲載され、2016年2月に釧路市で行われたフェリー航路再開に向けたシンポジウムで、

大阪商業大学の松尾俊彦教授は「フェリー乗船が運転手の休憩時間に入り、10時間くらいかかる八戸(青森県)がいいのではないか。フェリーと高速道をうまく使えば、1人の運転手で東京まで運ぶことが可能だ」と講演。
釧路市の蝦名大也市長は「運転手の人手不足の問題や規制もある中で、業界が望ましいというのであれば、連携してどう進めていくか。八戸航路が一つ提案されたのは、興味のあるところだ」と関心を寄せた。

旨が報じられているのである!

同記事では、「貨物の推計値を調べると、釧路発が週3便程度、釧路着は週1便」程度の貨物需要しか見込まれず、「繁忙期の秋は農産・水産物が集中するが、閑散期の冬との格差が大きい」等の問題点も指摘されているので、決して実現に向けて明るい条件があるとはいえない。

ただ、釧路・根室・十勝・網走の旧4支庁の合計で90万を超える人口があり、世界遺産の知床の他にも釧路湿原と阿寒の国立公園を擁する道東には、2015年の北海道庁の統計で2826万人の観光客が来訪しており、うち本州以南から道東には観光客が917万人も訪れているのである(出典:北海道 平成27年度 道東4振興局観光入込客数の概要)。
これは、青森ねぶた祭りや弘前さくら祭り等で非常に多くの県外客を集める青森県の県外客の634万人と比較しても300万人近く多いのである(出典:青森県 平成27年青森県観光入込客統計)。

道東の持つ観光地としての魅力は間違いなく、釧路行きの競合航路を持つ港も他に無いのだから八戸から一般観光客が利用できるカーフェリーの就航というのは非常に面白そうである。

まずは、観光シーズンの夏から、貨物需要の増える秋までの季節運航でもよいから、八戸−釧路航路の就航を目指しても良いのではないだろうか。

季節運航の航路は今でも瀬棚−奥尻などがあるし、かつては青森県にも三厩−福島(北海道)があった。
季節運航で潜在需要を上手く掘り起こし、安定した需要があると示すことに成功できれば、通年運航実現の道も開ける。

それこそ、八戸−釧路の通年運航が実現すれば、苫小牧航路が担っている道東の輸送需要も軽減されるわけで、これは道央圏や道北圏の苫小牧港利用者にもメリットのある話である。
◆ 苫小牧への集中回避に八戸−室蘭も有効かも

こういうことを書くと、また盛岡市民と称する人物から「このブログの主は よほど岩手県がお嫌いなのですね! 読んでとても不愉快になりました。」という誹謗中傷コメントが来そうであるが(笑 もし私が岩手が嫌いならこのリンク先のような記事は書かない。)、室蘭も宮古じゃなくもう一度、八戸と組んだらどうなのかと思う。

廃止直前のダイヤで、八戸・室蘭の所要時間は7時間45分から8時間であった。
まさに、法令の休憩時間確保で言えば、ちょうど良い時間である。

で、平成22年度の国交省の道路交通センサスでの平均旅行速度から所要時間を算出した上でかつて指摘したことだが、札幌南IC仙台南I.Cの移動で苫小牧港を利用する場合(宮古の場合は室蘭港利用)、

八戸港利用の場合の運転時間は約6時間40分、
仙台港利用の場合の運転時間は約3時間、
宮古港利用の場合の運転時間が約7時間30分と、
宮古の場合の労働時間が最長となる。


繰り返すが札幌・仙台間のトラック輸送で苫小牧港(宮古は室蘭港)を利用する場合、宮古便の労働時間が最長になるのである。

当初は所要10時間の宮古便なら休憩時間8時間確保可能という話だったが、乗船時間を全て休息に算定することを可能となった今、八戸や仙台に対して宮古が持つ優位性はかなり揺らいだように感じられる。
室蘭が宮古と同じ10時間程度の便を目指すのなら、宮古と違って高速道路が仙台や首都圏に繋がり、庄内・新潟方面へもアクセスできる秋田港への就航を狙う方が良いようにも思う。


もし、室蘭−宮古航路が成功する見通しなのであれば、室蘭−八戸航路も成功するであろう。
かつてと違い、休憩時間確保のためにフェリーに乗る時代なので、廃止直前の頃より室蘭−八戸の需要もあるだろう。

上の表の数値をもう一度見て頂ければと思うが、苫小牧港にとって車両航送台数が最大の港は八戸港だ。
航路全体でみると、青函航路の年間36万台には及ばないが、苫小牧発着便では最多の218,666台も航送しているのである。

この苫小牧港⇔八戸港の需要を、室蘭にも分散させることができれば、苫小牧港への需要集中が軽減されるわけである。
苫小牧港の拡張に費用をかけるよりも、既存の室蘭港や釧路港を再活用する方が費用も格段に安いのは間違いないだろうし、室蘭や釧路にも利用者が分散すれば、苫小牧港の混雑緩和にも繋がるのだ。


もし八戸−釧路便が実現すれば、青森県にとっては道東唯一のフェリー航路という強みを持つことになるし、道東にとっても本州直行便というメリットが生まれ、ひいては苫小牧港への需要集中も緩和され道央圏の苫小牧港利用者にもメリットが生まれるのである。


仮に、釧路港を夜に出発して八戸に早朝に着く便が就航すれば、八戸駅から東北新幹線で3時間かからず東京駅に到着できるのだ。

今年の冬に新千歳空港が猛吹雪で連日欠航となった際に、シルバーフェリーが苫小牧23:59発のフェリーに乗れば翌朝八戸駅の新幹線1便で9時過ぎには東京へ、というCMを放送していたのを覚えている人も居るだろうとおもう。

釧路と八戸の間にフェリーがあれば、20:00釧路港発、翌6:00八戸港着、八戸駅6:40発、東京駅着9:23というのも実現可能なのである。

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