2018年8月28日付の朝日新聞に「高速バス、迂回路間違え山道へ 崖っぷち1キロ恐怖の夜」と題する酷道・険道好きにはたまらない乗客にはなんとも気の毒な記事が出た。

記事によれば26日18時ごろに白浜を出発し22時ごろに大阪駅バスターミナル着予定の西日本JRバスだというので、「白浜エクスプレス大阪20号」で間違いないだろう。
19時50分ごろに当該便の運転士から「渋滞しているので、迂回指示を」と営業所に連絡があり、指示を受けて阪和自動車道 御坊南ICで降りて一般道に迂回中、狭路誤進入を起こしたことになる。

同便のダイヤを見れば19時29分に和歌山県内最後の印南バス停を通過することになっているので、まさに御坊南ICの手前までは順調だったのだろう。
ここの阪和道は民主党政権時代の工事凍結を経て、現在ようやく4車線化が進められている暫定2車線区間である。
交通集中による渋滞頻発地帯なのだろう。

いったいどこに突っ込んだのよと思って朝日新聞の地図を引用させていただくが、どうやら和歌山県道193号船津和佐線に突っ込んだらしい。
御坊のバス誤進入%28C%29朝日新聞社
(c朝日新聞社 著作権は同社にあります)

和歌山県道193号とはどんな路線なのだろうかと地理院地図を開いてみると、一部が「軽車道」を示す一本線になっていて、これは大型バスどころか普通自動車でも突っ込みたくない道路である(笑)

和歌山県道193号が実際どんな道なのかはGoogleストリートビューでみてみよう。

これに突っ込んだのか「白浜エクスプレス大阪20号」。

動けなくなるわけである……。

もう一つ。
こうならないよう、和歌山県だって対策はしてある。

直進の狭路の和歌山県道193号に入り込まないよう、日高川町道の川辺大橋方面へセンターラインが引かれ、青看も直進の矢印の先には行先を書いてないし、それでも直進してしまった場合に備えて幅員狭の看板まで立てている。

ここまでされているのに、なぜ迷い込んだのか、考えてみる。

◆ 運転士が受けた迂回指示に「狭い」という単語があった可能性

なんでこんな可能性を考えたかというと、冒頭の朝日新聞のルート図を根拠にしたのだが、迂回経路を示す水色の矢印線は川辺大橋で日高川を渡った後で左折していくのだが、これは和歌山県道26号和歌山県道190号阪和道 川辺ICを目指すルートになる。

文章ではわかりにくいだろうから、この一帯を地図にまとめてみたのが下図。
和歌山バス狭路進入事件
【地図はクリックで拡大します】

上の図で、薄い紫の線でトレースしたのが、指示通り走行すべきだった御坊南IC→川辺ICの一般道迂回ルートである。
このうち、御坊南ICを降りてすぐの和歌山県道25号や続く和歌山県道192号は大型車の通行も問題ない2車線が確保されている。
次の和歌山県道193号も、指示通り町道の川辺大橋を渡れれば2車線幅を確保したまま和歌山県道26号まで行ける。

問題は最後の和歌山県道190号で、こいつはちょっと大型車にはつらい。

普通車ならともかく、大型車なら「険道190号」と呼んでもいいくらいの道幅だ。

この狭い難所があったがゆえに、迂回路を指示する側から運転士に「道が狭いから気をつけてください」という注意喚起があって、迂回路は狭いという情報を受けた運転士が狭い和歌山県道193号に誤って進入していることを疑問に思わなかった=狭い道に入るのが正しいと思い込んだ可能性があるのでは、と私は考える。

運転士は「狭いけど……道狭い言うとったしな…」と思いながら突っ込んでいったのではないかと思うのである。

もっとも、これはあくまで私の推測にすぎない。

◆ 推測の域を出ないのは、朝日新聞の迂回ルート図にも誤りがあるのではと考えるからだ

先ほど、町道の川辺大橋から和歌山県道26号を経て和歌山県道190号に、という迂回ルートを説明したわけだが、ここに疑問があるのだ。

御坊南ICの方から来て川辺大橋を渡り切った先の交差点をGoogleストリートビューでみてみよう。

湯浅御坊道路 [29] 川辺 和歌山 大阪方面↑の標識と共に、直進する2車線の道路があるのだ。

この直進路は2車線を確保したまま中津川集落まで繋がり、そこから川辺ICまでの和歌山県道190号も2車線幅を確保してあるのだ。
和歌山バス狭路進入事件
【地図はクリックで拡大します】

もう一回同じ地図を出すが、川辺大橋の北詰から川辺IC近くまで延びる灰色の線がこの道路だ。
普通なら、狭く曲がりくねった和歌山県道190号をあえて選ばず、標識に従ってこの道を直進して行くだろう。

この道の存在から、私は朝日新聞の作成した迂回路を示す地図にも間違いがある可能性があるのではないかと疑っているのだ。

もし、迂回ルートも本当はこの狭くない直進路だとすれば、私が先ほど述べた「道が狭いから気をつけてください」という注意喚起自体が存在しないこととなり、運転士が狭い道に入るのが正しいと誤って思い込んだという推測は否定されることになる。

ただし、「白浜エクスプレス大阪20号」を運行する西日本JRバスが迂回路として直進する道路ではなく和歌山県道190号を国に届け出ている可能性はある。
その場合は直進する道は勝手に走行できないし、朝日新聞のルート図は取材に基づいた正しいものとなる。

ここは近畿運輸局なり西日本JRバスでなければわからない。

◆ 事件の原因はよくわからないが、迂回路を正しく走れれば約14分で高速道路に戻れた

いずれにせよ、不可解な事件となったわけだが、当ブログおなじみの国交省の道路交通センサスのデータを基にすると、一部町道が入る関係で推計値になるが、迂回ルートを正しく走破できた場合の御坊南IC⇔川辺IC所要時間は13分53秒というところだろう。

阪和道(湯浅御坊道路) 御坊南IC⇔川辺ICの距離は約5.6kmだが、そこを約14分かかる一般道へ迂回したということは、通過に結構な時間がかかる渋滞だったのだろう。

渋滞とはいえ阪和道(湯浅御坊道路)24km/hで流れれば迂回路と同じ14分で通過可能なのを考えれば、一般道へ迂回という選択をしたからにはもっと遅い速度だったと考えるべきだろう。

高速1000円乗り放題をやっていた2010年のデータになるが、東名高速 大和トンネルを先頭にした渋滞の予測は30km進むのに1時間15分かかるという予想(2010年5月9日午後)だった。
奇しくもこの東名高速 大和トンネルの渋滞も24km/hという速度になる。


東名 大和トンネルより酷い渋滞が御坊近郊で頻発し、西日本JRバスも迂回路設定をしていて、このバスの誤進入の遠因となったのだと考えれば、阪和道の暫定2車線区間もさっさと4車線化してほしいではないか。

和歌山沿岸も南海トラフの津波発生時には甚大な被害を受けるのは間違いなく、阪和道紀勢道は絶対必要なインフラである。

今回のバス事件が、紀伊半島の高速道路整備の追い風になればよいと思うのである。

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