2019年8月24日、ついに津軽平野(北津軽郡鶴田町野木)でも車載テレビ用フィルムアンテナでAKT秋田テレビフルセグ受信ができることを確認した。
 弘前市相馬地区と西目屋村の境界にある標高1,050mの陣場岳の山岳回折によって、奇跡的に秋田市の大森山送信所から鶴田町野木まで伝搬ルートが確立されていることが受信成功の要因だが、陣場岳ってのがどの山なのか実は私もよくわかっていなかった。

 ネットでGoogle先生に聞いて検索しても陣場岳に登山した記録自体が乏しく、公開から20年以上経っても色あせぬ東奥日報社の名企画「あおもり110山」にも出てこないのだ。
陣場岳付近の稜線
 そんな中で、私自身が2007年に青森・秋田県道317号西目屋二ツ井線で秋田側から青森側に抜けた際に撮影した画像データを発見。
 西目屋村の立俣沢を渡る橋の上から北東側の山を撮影したもので、なんとなく陣場岳の西の陣岳の南方にある835m高地ではないかとは思う。
 あくまでも、陣場岳に近い辺りの山の雰囲気だと思っていただければ、と。

 いつかは陣場岳登山もせねばと思いながら、とりあえず、鶴田町野木から見える稜線の中から陣場岳を同定する作業をした。
 作業に使ったのはカシミール3Dだ。

 野木から大森山の方角は北から約193度の方向になるが、岩木山を目印にできるよう、202.5度付近を中心にシミュレーションすると、下の図のようになった。
野木ー陣場岳
 これがカシミール3Dを用いて作成した野木の岩木川土手から見た稜線の図。

 陣場岳は岩木山のような独立峰でもないし、稜線の峰々の中でもとりたてて高い山でもないため、パッと見て即座に陣場岳を同定するのは熟練の目がなければ難しいだろう。

 続いて、先日受信した際に撮影した写真での陣場岳同定を行うとこうなる。
鶴田町野木から見た陣場岳
【他の画像も同様ですが、クリックすると拡大します】

 やはり、電波到来方向は旧青森県道37号弘前柏線が走る土手の方向から少し右(南南西)方向にずれるようだ。

 野木の土手のほぼ正面付近には秋田県大館市の田代岳や弘前市の久渡寺山も。
 田代岳もまた、山岳回折によって弘前市や藤崎町方面での一部地域にてAKT秋田テレビの受信をもたらす貴重な山だ。
 
 山岳回折は基本的には送信点から受信点まで一直線上で考えるものだが、山岳回折とは別に、山頂に無給電中継装置(いわゆる反射板)を設置して電波の伝搬方向を変える運用方法があるように(青森市の東岳の北海道電力の例など)、田代岳山頂付近の地形条件次第では直線的に弘前方面に向かわず屈折して鶴田方面に飛んでくる微弱波もあるかもしれない。
 もしかすると、田代岳の山岳回折時に水平方向に屈折した微弱な電波も、多少は野木に到来してフルセグ受信に寄与しているのかもしれない。
 
陣場岳ー津軽平野方面
 せっかくなので、陣場岳からの眺望もシミュレーションしてみたい。
 こちらは陣場岳から約12度の方向を望んだ場合のシミュレーション結果だが、普通に鶴田周辺の津軽平野が望めるようだ(鶴田から陣場岳が見えているんだから当たり前だが)。

 次は電波到来方向、送信点のある秋田市の大森山の方向に向けてみる。
陣場岳−大森山
 大森山−陣場岳間は約93kmという長距離のため、かなり広域で空気の澄んだ見晴らしが良い時でないと肉眼での目視は難しそうだが、陣場岳から大森山を見通すことは可能なのだ。

 よくもまあ、五城目や上小阿仁付近の出羽山地にも引っかからず、白神山地越えでも他の峰々の稜線に触ることなく、岩木山の肩ッコもかわして、秋田市から鶴田町まで「回折回数1回」という芸術的な山岳回折伝搬ルートが通ったもんだ。


 白神山地自体は、特に秋田県側で急斜面になっている場合が多く、先述のあおもり110山の「雁森岳」のページには『山頂部の幅は1メートルも無い。高さ400メートルの平均台の上にいるような錯覚に陥る。』という一節もあるなど、急峻な稜線を擁する山がいくつも存在するのだ。
青森県境
 上の写真は青森・秋田県道317号西目屋二ツ井線の釣瓶落峠のトンネルの秋田県側から望める県境の稜線だが、ご覧の通りの断崖絶壁となっている。
 秋田側ほどではないが青森側も急斜面にはなっていて、もしここにAKT秋田テレビの電波が飛んで来れば強烈なナイフエッジ効果によって強い山岳回折利得がうまれ青森側に伝搬するはずなのだが、ここに来るまでの秋田県内や、峰を越えた先の青森でも他の山々にぶつかり、伝搬が上手くいかないのだ。

 AKT秋田テレビ大森山送信所の電波を、山岳回折1回のみで県境の稜線を越えて津軽の人里まで伝搬できるルートは、陣場岳や田代岳などわずかに何通りかのルートしかないだろう。

 もしもあなたが、ワンセグでもよいから津軽地方でAKTの受信ができる地点を見つけたのなら、それは間違いなく奇跡的な場所にいるのだ。

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