令和2年4月。新型コロナウィルスの大流行で全国に非常事態宣言が発令され、県境を越えての移動は基本的に自粛、という風潮になっている。
 
 県境を越えた移動―すなわち県際移動自粛が要請される中で、首都圏では、特定都道府県に指定された東京都や千葉県などから、利根川を渡って茨城県のパチンコ屋に行く客がいるなどと騒がれている。東京からのパチンコ客に新型コロナを持ち込まれる可能性もあって、茨城にとっては非常に迷惑な話だろうとは想像がつく。
 マスコミはそういった話を聞きつけて、こぞって東京都内のナンバーのクルマに狙いをつけて撮影だのインタビューをしていたりもする。

 一方でだ。
 東京・千葉と茨城の関係のように、もともと県際移動が盛んな地域というのは全国各地に存在する。
 大都市圏に限らず地方部にだって、先日記事にした八戸都市圏を構成する岩手県の洋野町や軽米町などから県境を越え青森県八戸市に通勤・通学するという例は、他の各地にもある。

 県際移動が普遍的にある中で、やれ県外ナンバーだ。よそ者が来てますぞ」とマスコミに言われても、藩境に関所があった頃からまだ生きてる人たちなのかなという感じもする。もちろんパチンコだの下らない娯楽でコロナ疎開に来るのが迷惑だという地元の住民の気持ちはわからんでもないが、他地域のナンバー=よそ者とは限らないのである。


無題
 閑話休題。

 当ブログは青森県から発信しているので、青森の話で。
 青森県には青森、八戸の2つのナンバープレートの地名があり、5月には弘前ナンバーも誕生する予定である。

 お隣北海道とはフェリー4航路(青森―函館、大間―函館、八戸ー苫小牧、八戸ー室蘭)で結ばれ、岩手県と秋田県との間には市町村道や農道・林道・私道・徒歩道の類も含めれば少なくとも陸路で30路線以上は繋がっており、それらを介して当然、3道県やその他の都府県のナンバーを付けた車両も流入してくる。

 普段、青森の県境付近で、どのくらいの車両が通行しているのか見てみよう。

 資料から青森と北海道、岩手、秋田の間でどのくらいクルマが行きかっているのかみていく。
 青森は青森、八戸2ナンバー体制なので、両ナンバー境界部も見ていく。

 利用した資料は、国土交通省の「平成27年度全国道路・街路交通情勢調査」、いわゆる2015年版道路交通センサス。これの青森県の、24時間交通量を基本的に使用した。
 北海道と繋がるフェリーについては、平成27年の北海道運輸局統計のフェリー航路別車両航送台数(年間)の台数を365で割った数値とした。
 高速道路の交通量については国交省の道路統計年報2019の数値を使用。
 下北道については2015年版道路交通センサスに載っていない区間もあったため、青森県の資料とセンサスの数値から、後述する計算式で独自算出。
 結果は下表のとおりとなった。

青森隣接3道県 県際部推定1日自動車交通量(台数)
路線境界点隣接区域台数備考
国道279号大間フェリー埠頭函館・青森76年間輸送台数/365の値
八戸市道八戸フェリー埠頭室蘭・八戸599年間輸送台数/365の値
国道45号県境八戸・岩手10,081階上町大字道仏字中大古里
県道11号県境八戸・岩手2,988H27調査無
八戸自動車道県境八戸・岩手6,623道路統計年報2019
国道340号県境八戸・岩手4,729H27調査無
県道33号県境八戸・岩手1,391H27調査無
国道4号県境八戸・岩手9,232三戸町大字目時
県道182号県境八戸・岩手382三戸町大字斗内字高間舘
県道32号県境八戸・岩手1,088田子町大字田子字衣更
県道181号県境八戸・岩手563田子町大字山口字道前
国道104号県境八戸・秋田1,072田子町山口字八幡平
国道454号県境(新郷側)八戸・秋田484新郷村大字戸来字羽井内家ノ上
国道454号県境(宇樽部側)八戸・秋田142十和田市奥瀬字十和田
国道103号県境八戸・秋田3,659十和田市大字奥瀬字十和田
国道454号県境(滝ノ沢側)青森・秋田776H27調査無
国道282号県境青森・秋田725平川市碇ヶ関西碇ヶ関山国有林
東北自動車道県境青森・秋田7,874道路統計年報2019
国道7号県境青森・秋田6,289平川市碇ヶ関大落前山
県道317号県境青森・秋田280H27調査無
国道101号県境青森・秋田1,424深浦町大字大間越字宮崎浜9-17
青森市道青森フェリー埠頭函館・青森991年間輸送台数/365の値
青森/八戸 交付地域界推定1日自動車交通量(台数)
国道338号東通/六ヶ所 村境青森・八戸6,242東通村大字白糠字下馬坂(新旧道計)
県道179号横浜/六ヶ所 町村境青森・八戸400H27調査無
県道24号横浜/六ヶ所 町村境青森・八戸2,804六ヶ所村大字尾駮字二又23-2
下北道横浜吹越-六ヶ所青森・八戸4,848当ブログ推計値
下北道六ヶ所-野辺地北青森・八戸6,899当ブログ推計値
県道180号野辺地/東北 町境青森・八戸539H27調査無
県道5号野辺地/東北 町境青森・八戸1,920六ヶ所村大字芋ヶ崎字切揚場
県道246号野辺地/東北 町境青森・八戸1,092H27調査無
国道4号野辺地/東北 町境青森・八戸12,859東北町字石坂
みちのく有料青森/七戸 市町境青森・八戸4,721青森市滝沢字東滝沢山国有林
県道242号青森/七戸 市町境青森・八戸833H27調査無
国道394号青森/十和田 市境青森・八戸1,420七戸町字前川原
県道40号青森/十和田 市境青森・八戸1,312H27調査無
国道394号青森/十和田 市境青森・八戸538十和田市大字法量字谷地
国道103号青森/十和田 市境青森・八戸2,744十和田市大字法量字谷地
国道102号平川/十和田 市境青森・八戸323十和田市大字奥瀬尻辺山国有林

 道路交通センサスの24時間交通量はあくまでも県境に近い調査地点の数値ということで、この数字のすべてが県境を越えているとは限らないが、青森と岩手の間にも、青森と秋田の間にも普通に県境を越える移動は万単位であるのである。

 青森ナンバーの地域と八戸ナンバーの地域を越える移動もまた然り。

 コロナだからって、あんまり他地域のナンバーを気にしてもしょうがないのだ。
 青森で北海道(函館、室蘭、札幌など数銘柄)と岩手(盛岡、平泉含む)、秋田くらいの他県ナンバーは別に珍しくないのだ。

 職場や家族の会話で「他県ナンバー増えた」などと聞くが、普段から他のクルマのナンバーを観察している自分の感覚では増えている感じはあまりしない。
 (俺はこういう記事を書いたり、こういう地図を描いたやつである。日ごろからナンバーには敏感な方だと自負している)
 他県ナンバーが増えていると感じるあなたは、マスコミの「他県ナンバー」のニュースに踊らされている可能性がある。


 序盤では八戸都市圏の話をしたが、秋田の大館の三次救急医療は弘前大学病院。弘前まで通院や通学で来る大館の人の秋田ナンバーを見て「よそ者め」と言ったら冷酷非情である。
 この逆で、旧西津軽郡岩崎村なんかだと買い物に行くとなればつがる市のイオンとか五所川原市のエルムより近い秋田県能代市だったりするわけで、お互いさまなのだ。

 不要不急の用やコロナ疎開での県境移動は自粛すべきだが、生活していくうえで必要で境界を跨いでしまうのは仕方のないこと。
 近県はある程度はお互いさまで行きましょうや。



(※) 下北道の交通量だが、横浜吹越IC開通後に青森県が公表した調査結果の数字を基礎にしている。
 この数字は12時間交通量だったので、2015年版道路交通センサスをもとに、下北道の12時間と24時間交通量の比を見ると1.22倍となったので、青森県の値に1.22をかけた数値とした。


◆ 4月28日追記

 弘前市の某飲食店が駐車場に「他県ナンバー 八戸ナンバー 入店拒否」との看板を掲げたとのことで。


 手前側・上北郡六ヶ所村大字泊の家に住んでいる六ヶ所村民は八戸ナンバーなので入店拒否奥側の下北郡東通村大字白糠の家に住んでいる東通村民は青森ナンバーなので入店できることに、どう合理的な説明がつくのか私は知らない。情けない。
 
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