青森と秋田の県境地帯の山々によって津軽にもたらされる、山岳回折による電界強度推定図シリーズの第8回(第1回は陣場岳第2回は小岳第3回は岩木山第4回は陣岳第5回は尻高森第6回は無名尾根と長慶森第7回は烏帽子岳と雷岳)。

 今回取り上げる田代岳で10峰目で、最後の予定である。
 田代岳は秋田県大館市にある標高1178mの山であり、秋田市の大森山送信所からの角度は18.5°となる。
 これまで取り上げてきた10峰の中では岩木山に次ぐ標高を誇るのだが、青森・秋田県境地帯の他の峰々と同様、パッと見では特定が難しい山である。

 次の写真は「津軽でAKTフルセグ受信可能点を探っていたら……」の記事で取り上げた、弘前市津賀野の平川左岸土手から眺めた県境の峰々の写真を加工したものである。

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 田代岳は標高がいちばん高いのだが、弘前周辺から眺めた場合、一番高く見える山でなはいのだ。
 弘前市津賀野から見て田代岳の左側(東側)に見える西股山(954m)や、西股山から約1.3kmほど西南西に位置する956m高地(無名峰)の方が高く見えてしまい、実は写真撮影時には私も956m高地を田代岳かと誤認してしまった。
 津賀野から956m高地(弘前市・大鰐町境)までの距離は18km足らずだが、田代岳だと24kmほど離れており、遠近法で奥にある田代岳の方が低く見えてしまうのである。

 岩木山の左側(東側)に陣岳と仲良く双子のように聳える特徴がある陣場岳でも慣れなければ同定が難しいが、田代岳を目視で同定しながらアンテナの方向調整をする難易度はさらに高いかもしれない。

 ともあれ田代岳を仮想・田代岳中継局と見立て、周波数521MHz(最小周波数518MHz、最大周波数524MHz)、送信高1178m、送信方向18.5°(角度1°ズレで-10dB、2°ズレで-20dB)、実効輻射電力0.3Wにて津軽方面へAKTの電波を出すシミュレーションを実施した。


田代岳 山岳回折推定電界強度
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 弘前市南部から電界強度の色が付き始め、城東から五所川原市前田野目方面まで電界が伸びていく。
 実際、過去の移動受信での経験から田代岳は陣場岳の伝搬ルートと同等かそれ以上の期待がかかる山とわたしは考えていて、もしRadio mobileのシミュレーション通りの結果になるならAKT受信可能世帯は陣場岳のそれを大幅に上回るとみている。
田代岳 山岳回折推定電界強度(弘前城東)
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 まずは弘前市街から。
 清原とか取上の辺りから微弱な電界強度は出てくるようだが、望みは薄いだろう。
 30〜36dBμV/mの黄緑色の電界強度がシミュレーション上で出てくるのはJR弘前駅に近い城東中央1丁目や松ヶ枝あたりからだが、ここも微妙だろうとみている。
 たしかに、陣場岳の山岳回折でAKTの受信に成功している当地のシミュレーション上の電界強度値も30〜36dBμV/mの黄緑色の分類で、アンテナ設置工事を担当した電気工事士の測定値では電界強度29dBμV/mだが、弘前の城東とはいささか条件が異なる。
 当地は周辺が水田やリンゴ果樹園だが、弘前城東エリアはかなり市街地化が進行しているためノイズの発生も多く、秋田から飛来する微弱な電波の受信には不利と考えている。
 田代岳方向にビルなど高層建築物がある場合は、ほぼ不可能だろう。
田代岳 山岳回折推定電界強度(弘前撫牛子)
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 弘前市内で36〜42dBμV/mの萌黄色の色が付くのは撫牛子1丁目・3丁目付近から。ただ、ここを貫く県道260号は何度も通行しているが、ワンセグが反応した経験が一度もない。
 撫牛子より北側の津賀野の平川左岸土手ではワンセグ受信可能と確認できているが、土手より標高が低い住宅地は弘前市街のノイズの影響もあるのか、あまり条件が良くなさそうな気がする。
 平川対岸の田舎館村豊蒔も、浅瀬石川右岸の藤崎町西浅田も移動受信ではワンセグ止まり。可能性はあるかもしれないが、微妙な地域である。
田代岳 山岳回折推定電界強度(藤崎常盤)
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 北上して藤崎町中心部は伝搬路から外れるが、東側の矢沢中島36〜42dBμV/mの萌黄色のラインが伸びており、実際、中島の水田では移動受信でフルセグ一歩手前のアンテナレベルまで出ている。きちんと田代岳へ方向調整さえできれば復調したものとみている(地図上で便宜上、「常盤受信点」としているが旧藤崎町の領域である)。
田代岳 山岳回折推定電界強度(富木舘・吉野田)
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 さらに北上し、1889(明治22)年から1954(昭和29)年まで約65年間ほど存在した旧富木舘村エリア。
 富木舘の舘を構成した久井名舘(ぐいなだて)の西側や、福舘の一部36〜42dBμV/mの萌黄色になっており、移動受信ではワンセグ止まりだが、当地での陣場岳山岳回折波の受信例から推測すると成功可能性があると考えている。特に福舘は当地とよく似た水田集落(路村)であり、都市特有のノイズの影響もなさそうである。
 なお、久井名舘の東側については知人によれば「グイナのオヤグマギの家でやったばてマイネがった」とのことであり、シミュレーション通り厳しいのだろう。
田代岳 山岳回折推定電界強度(前田野目)
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 最後は五所川原市前田野目方面。
 移動受信で前田野目もワンセグが受信可能であるのは確認していて、青森市街地から最も近いAKT復調点とみている。シミュレーションでは36〜42dBμV/mの萌黄色の色が付いている場所もあるが、集落の住宅地ではなく水田の方である。
 ひょっとして秋田にアンテナに向けていたのではないかと思われる家屋も一軒あったのだが、地デジ化でもAKTを受信していたのかは不明である。
 前田野目周辺はアナログ放送時代はクルマで移動中は青森局(馬ノ神山)の受信が芳しくなかった地域で、地デジ化した今も辛うじてフルセグが受かるかどうかというアンテナレベルである。
 青森局のある馬ノ神山から南側に梵珠山や鐘撞堂山の稜線が伸びている地形が、前田野目への伝搬条件に良くないのだと推定されるが、アナログ時代に38chのATVの電波が弱かったなら、隣接障害を受けず37chのAKTが奇跡的に受かっていた可能性もある。


 まったくの余談だが、AKT大森山親局送信所と梵珠山を一直線で結ぶと田代岳の山頂に極めて近い所を通過するので、地図で作図してみたい方はお試しを。
 梵珠のお山のてっぺんでもAKTは映るのだろうと推測している。
要注意!! 受信の可否を保証するものではない

今回も重要なことなので書いておくが、Radio mobileでのシミュレーション結果と実際の伝搬状況が一致しているとは限らない。

 シミュレーション結果からは有望と考えられても、実際には空振りに終わる可能性もじゅうぶん有る。

 こんなわけで、西は小岳から東は田代岳まで、山岳回折によって津軽にフジ系・AKT秋田テレビの電波をもたらす10の峰のシミュレーションを実施した。
 未発見の山岳回折ルートもあるかもしれないが、可能性があるのは10峰──特に期待値が高いのは陣場岳烏帽子岳田代岳である。
 峰々をみていくと、固定受信の可能性は低いと思われるがワンセグの飛距離ならピカイチの小岳や、津軽から背は低く見えるが回折のロケーションは抜群に良い田代岳、当地に恵みをもたらす双子のような陣場岳など、峰々の個性がそれぞれ光っており、県境を隔てる山が厳しくも愛らしく見えてくる。

 受信の保証は全くできないが、「絶対に無理だと絶望する地理条件でもない」ことはお伝えできたなら幸いだ。
 
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