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【函館駅前から遠望の函館送信所群】

 青森市で北海道文化放送(UHB)テレビ北海道(TVh)などの北海道のテレビを受信する場合、ターゲットとなるのが函館山にある函館送信所(函館中継局)である。

電波の見通し距離
 以前、こちらの記事でUHF電波の見通し距離について触れた。
 函館送信所の送信アンテナの高さが海抜380mだと仮定し、あとは受信する青森市側のアンテナの海抜高がわかれば、上の計算式にて電波の見通し範囲内にあるかどうか算出可能である。

 こちらのホームズのサイトによれば、一般的な2階建て一軒家の高さは6m前後だという。屋根上の1mにアンテナを付けても地上高7m程度で、これに地面の標高を加えたものが受信高の目安になる。
 自分の家が標高13mに位置する2階建て一軒家なら、アンテナ受信高が20mとなる計算である。

 受信高が20mでも函館送信所からの電波の見通し距離は98.7km程度しかなく、後潟などの北部を除き、青森平野の大部分で函館局の遠距離受信が絶望的になってしまったのは計算からも裏付けられてしまった。

等距図1
テレビ北海道(TVh)函館送信所からの等距図】

 上図は国土地理院の地理院地図を利用し、テレビ北海道(TVh)函館送信所を中心点として半径1kmごとの同心円を、青森市街に描いた地図である。色別標高図機能を利用して、青森市の標高も表現した。

 色が無い地域(=陸地で白い部分)は標高15m未満である。仮にアンテナが地上7mにあるとしても、受信高は最高で22m未満。
 受信高22mだと、函館送信所からの見通し距離は99.64kmとなり、青森市街の大部分は函館送信所から100km以上あるため見通し外──すなわち受信不可能となる。無念。
 
 アナログ放送時代は平野部の一軒家でもLSL30のような超高性能アンテナに40dBブースターを使えばノイズまみれで映っていたという場合はあるが、青森湾で海面反射した微弱波を辛うじて受けることが出来ていたのだろう。地デジでは復調までいかないのである。

 この等距図を拡大して、函館送信所の遠距離受信が盛んであった北部や山沿いを少し詳しくみていくこととする。
等距図NW
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 まず青森市北部方面の沖館や油川、羽白周辺から。
 アナログ放送時代、国道280号バイパスを北上して野木和団地に入ると、LSL30などの高利得アンテナが函館に向けて多数設置されているのが運転席から見えるほどだったものだが、現在は撤去されてしまった一軒家が多い。
 野木和団地の標高は3〜4m程度しかなく、コンクリート柱などで高さを稼いでも受信高15m程度か。
 野木和団地は函館からの距離がほぼ100kmだから、受信高15mでも見通し距離は96.3kmしかなく、見通し距離外=映らない地域となる。旧道側の油川や沖館も同様である。

 ただ、これより北側の後潟まで行くと今でも映る所もあるらしく、祖父母が奥内にいる知人によれば、奥内でも映るチャンネルは何個かあるという。
等距図W
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 次は三内、石江、新城方面。
 新城平岡の標高は高い所で45m程度あり、屋根上のアンテナ受信高が50mとすれば函館からの見通し距離は109.4km。
 新城平岡は函館から105km未満なので見事に見通し内となり、実際、今でも北海道7局の受信が可能な世帯が複数存在している。
 平岡の高台の住宅地の路地ではクルマのストラーダでもアンテナレベルが50前後取れたことがあり、ちょっとラジオダクトによる異常伝搬気味だったので記事化は見送ったが、通常時でもフルセグOKである。
 新城平岡の状況は弘前タワーさんがかつて開設していたサイトで知ったのであるが、青森市内では雲谷や青森空港などを除けば一番有望な住宅地だと考えている。
等距図W2
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 続いて青森競輪場から安田、細越方面。
 一応、山沿いにはなるが青森競輪場周辺を除くと標高は低く、住宅地は概ね30m以下。
 アンテナの受信高を稼いで海抜40mとしても、函館局の見通し距離は106.4kmであり、直線距離で106kmを超えてくることから見通し距離外=映らない地域となる。
 青森県総合運動公園周辺にもかつては高利得アンテナを函館に向けている家が散見されていたが、今は壊れたまま放置が目立つ。
等距図SW
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 細越から入内断層に沿って南下して高田、金浜、野木方面。
 平野部の高田川瀬などの集落は標高的には北側の細越や安田の高台とも大差なく、それでいて函館からの直線距離はさらに長く110km前後となるため、かえって不利である。
 計算するまでもなく見通し距離外=映らない地域であろう。
等距図SSW
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 高田や金浜の南側、青森空港や小館、野沢方面。
 青森空港有料道路など空港周辺の道路を走行していれば容易に北海道の各局がフルセグ復調するくらいなので、空港は余裕だろう。
 問題は人が住んでいる集落部でどうか。
 条件的にもっとも望みがありそうなのは、高田朝日山の太陽台団地で海抜約90m。地面でも受信高90mあれば函館局の見通し距離は119.4kmもあり、函館局から111km強の太陽台団地は見通し距離内である。


 しかし、もしかすると共同アンテナだったのかと思われる、空き地に建つひときわ大きく立派なアンテナは同軸ケーブルが外された状態になっており、映らないようだ。
 見通し距離内にあるのは間違いないが、真北の断層の急斜面に標高100mを超える地点が何か所かあり(熊野宮真西の地点など)、その山影になるのが良くないのだろう。

 もう一か所、小牧野遺跡の上り口の小館集落は海抜75mで、地面でも見通し距離116kmを稼ぎ、函館局からの距離約111kmをクリア可能であるが、こちらで函館局にアンテナを向けている家は知らない。クルマでも復調しないし、可能性は低いのだろう。
等距図S
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 地デジ移行した今でも受信可能性が最も高いのはこちらの雲谷、田茂木野方面。
 雲谷の集落はだいたい海抜170m前後あり、函館局からの見通し距離は134kmも稼げる。田茂木野もほぼ海抜130m以上はあり、函館局からの見通し距離は127.3km。
 雲谷も田茂木野も函館局からの距離は111〜113kmの範囲なので、見通し距離内に位置することもあり、今でも北海道7局の受信が可能な地域と言ってよいだろう。
等距図SE
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 そして幸畑周辺。
 県道44号を挟んで北側の松元台の低い所は海抜15m前後だが、南側の幸畑団地の幸畑4丁目や5丁目では最高で70m近くに達する。
 幸畑4丁目や5丁目の南端の標高70mエリアなら函館局から見通し距離114.8kmを稼ぐことができ、直線距離の109kmを上回るので見通し距離内に入ることが出来る。
 一方で幸畑1丁目の幸畑郵便局周辺は海抜45m程度で、函館局からの見通し距離は108km。直線距離で108.5kmになるので地表付近では見通し外だ。アンテナ受信高を稼いで55mとしても見通し距離は110.9kmとなり、ぎりぎり水平線をかわして直接波が届く条件となる。
 実際のところ、幸畑1丁目や2丁目、3丁目は見通し距離外=映らない地域となる範囲が広く、アンテナ受信高を稼いで見通し距離を確保できても復調まで至らないケースがほとんどのようだ。
 幸畑4丁目でも中腹の海抜60m地点付近では映らないらしく、ひときわ高く立派なアンテナを挙げていた家もこの冬でアンテナを撤去した。
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【幸畑団地最南端の幸畑5丁目みどりヶ丘町会】

 唯一、車載テレビで常時ワンセグ復調を確認できている場所は幸畑5丁目のみどりヶ丘町会南部の県営住宅周辺。
 家々や電柱が建ち並んでいるので決して北海道方面の見晴らしがよい訳ではないが、標高は60mを越えて見通し距離の余裕は出てくる。

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UHBワンセグ
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TVhワンセグ

 ワンセグながらUHBTVhをはじめとする北海道各局が復調するが、いつもアンテナレベルは20台だった(今のクルマには計測機能がない)。
 実際に屋根やコンクリート柱に高利得アンテナを上げてブースターで利得を稼げば映るかもしれないが、厳しい。最高標高地点付近でギリギリ行けるかどうかなのだろう。
等距図E
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 最後は戸山団地方面。
 月見野1丁目や赤坂1丁目の最高地点で海抜50m前後まで行くが、戸山郵便局付近は20m程度しかない。
 赤坂1丁目の高い方も、受信高を稼いで見通し距離内に入れても、電波到来方向に砺取山が聳えており山影となってしまう。
 戸山団地はまさに戸山郵便局付近で函館局から直線で107kmとなるが、海抜20mでは見通し距離は98.7kmなので全然足りない。アンテナ受信高を稼いで海抜35mまで伸ばしても見通し距離は104.7kmしか取れず、見通し距離外=映らない地域になってしまうと思いきや、脇野沢の山岳回折の恩恵が発生するのでアナログ時代はこの辺りでも北海道を受信する家があった(青森市で山岳回折で函館局を狙う 参照)。
 月見野1丁目の標高の高い方なら、見通し距離内に入れるか、あるいは脇野沢の山岳回折で望みはあるかもしれないが、今でも戸山団地で映っているとは聞かない。UHBTVhの区域外再放送をウリにしている青森ケーブルテレビが比較的早くから戸山にエリア拡大していったのも、戸山は勝算があるとみていたのかもしれない。あずましく北海道が映る新城平岡は、2021年3月現在でまだケーブルテレビのエリア外である。
見通し内でも、成功するには距離に余裕が欲しい

 こんな感じで青森市内で自宅にアンテナを建てて函館のテレビの電波を受信しようと思ってもほぼ不可能なのである。
 ワンセグでも良いなら遠距離受信を行うのも手段としてはアリだと思うが、おススメできない。

 もちろん、都心部の高層ビルであれば屋上にアンテナを建てれば可能性があるのだろうが、分譲マンションなどでも青森ケーブルテレビ加入が一般的なようである。


【青森ケーブルテレビが公表しているケーブルテレビ対応アパート・マンション情報マップ】

 何となくだが、見通し距離内にあっても、距離的にギリギリでクリアしているような地域は不可能なのかなと考えている。
 上手くいく新城平岡の高台とか雲谷とか、上手くいかない幸畑の例を比べると、見通し距離が直線距離より最低でも5km以上の余裕があれば何とかなるのではと考えている。

 函館局から見通し距離がギリギリだと青森湾や青森市街地の低い所──すなわち海面や地面のすれすれを電波が飛んでくるわけだが、それだと海上の船舶や高波、青森市街地の建築物や都市型ノイズなどの影響をもろに受けてくることになる。
 海面や地面すれすれを飛んできた函館の電波は、青森の受信アンテナにたどり着いた時点でかなり劣化しているので、いくらブースターで利得を挙げてもノイズ(N)も大きくなってしまい、C/Nが破綻してしまえば地デジは復調しない。

 何と言っても函館送信所の送信アンテナ面が青森を向いておらず、ただでさえ電波が弱いのだから、地理的に電波の見通し内にあっても距離的に余裕がなければ良好な電波をキャッチするのは難しいのだ。
 見通し外ならほぼ受信不可能というのは、言うまでもないことである。

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