秋田越え岩手越え
 当ブログでたびたび記事化している通り、陣場岳の山岳回折によって、津軽平野でも山形県の地上デジタル放送の受信が可能なケースが存在する。
 当地においては鶴岡中継局(ただし混信が無いNHK山形YTSTUYSAY)どれか1局はワンセグならほぼ常時受信可能で、ラジオダクト等の異常伝搬発生時にはフルセグでハイビジョン放送も受信可能となる。

 津軽において、秋田県を飛び越えて山形県の地デジを受信することは有りうる訳だが、南部(三八上北)において、岩手県を飛び越えて宮城県の地デジを受信することは可能だろうか?

 もっとも、南部方面では岩手のMIT二戸局を受信することで民放4系列受信が容易に実現するので、岩手と同じくテレビ東京系列局が無い宮城の放送を受信しても得られるものは無いに等しいようなものだが、津軽で山形受信が可能なら南部で宮城受信も可能だろうかという興味本位のシミュレーションである。
● 受信対象局は仙台送信所(親局)とし、見通し距離を推定する


 山形県の鶴岡局は出力が500Wで中継局としては高出力で、実効輻射電力(ERP)は局によって異なるが5.1kW〜7.2kWにも達する。
 青森県の民放の親局のERPは7.1kWなので、鶴岡局は親局並の強力な中継局なのである。
 宮城県も県北に出力100Wの涌谷中継局があるが、ERPは280Wしかなく、日本一広い県・岩手を飛び越えるには心もとない。
 ということで、今回は親局たる仙台の送信所を受信ターゲットとする。

 仙台の親局で鉄塔高が最高なのがNHKTBCKHB150mである。
 ERPが最強なのはOX30kW
 諸元としてはありえないのだが、甘めに検討することとして、送信高150mからERP30kWで無指向性で青森県方面にもぶっ放すシミュレーションを行う。
電波の見通し距離
 見通し距離は鉄塔150mに大年寺山の標高と合わせて253mからだと、受信側が海抜0mなら約65.5km。

 せいぜい60〜65kmというのが仙台親局の電波の見通し距離。

 意外と遠くまで見通せない印象だが、福島県浜通りの南相馬(旧原町)市役所でも67km程度なので、相馬市街や原町市街で屋根の上にアンテナを上げて宮城の放送を受信することは可能であり、APABのエリアの目安でも相馬(中村)は堂々とエリアであるとされている。

 では北方面はどうか?
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【KHB大年寺山鉄塔150mから盛岡駅の伝搬路地形断面図】

 上図は仙台親局とJR盛岡駅間での伝搬シミュレーションの断面図である。
 盛岡駅付近の標高と同じ受信高120mでも大年寺山からの見通し距離は111kmしかなく、直線距離で160kmを超える仙台局→盛岡での見通し内受信は不可能である。
 地形断面図をみれば一目瞭然で、途中に山岳回折が成立しそうな良い山もない。

 ただし、県南の花泉の南端は標高約10mだが仙台局から65km程度しかないので見通し内に入れるし、仙台から80kmほど離れるJR一ノ関駅周辺でも標高が約25mあるので、建物の上などで受信高を稼げれば容易に見通し内に入れる。岩手も県南なら仙台局の遠距離受信は成立する。 

● 見通し内受信が可能な岩手県の山による山岳回折の可能性を探る

 ただ、盛岡近郊では絶対に仙台局受信が無理かというと、盛岡から北側に仙台局の見通し内受信が可能な山が2か所ある。
 下図はRadio mobileでのシミュレーション結果である。
盛岡北部 仙台局受信電界
【KHB大年寺山鉄塔150mからの甘めシミュレーション(盛岡北部)】

 岩手県最高峰の岩手山(2038m)と、石川啄木が愛したとされる姫神山(1124m)である。ほかにも北上山地北部に無いこともないが、仮に綺麗に山岳回折しても受信点が青森県に入らず太平洋上になってしまう角度なので検討外とする。
 
 岩手山KHBの親局から3.5°方向姫神山10.13°方向なので、それぞれの山頂を中継局に見立て、陣場岳の山岳回折のシミュレーションで採用したERP=0.3Wをベースに、方角3.5°、10.13°の山岳回折のシミュレーションを行ってみよう。

 まずは岩手山。
岩手山山岳回折広域
【岩手山頂から3.5°方向シミュレーション広域図(クリック/タップで拡大します)】

 さすがに2000m級の高山なのでかなりの距離を飛ぶのは飛ぶが、ほとんど無人の山岳地帯ばかりを通過する。
 E4Aみちのく有料道路の天間林側の登坂車線の辺りから南に見える曽我森(421.5m)が岩手山から電波の見通し内にあるらしく、さらに北の野辺地の烏帽子岳の南東山麓付近で力尽きるらしい。
 ちょっと詳しく見てみる。

岩手山山岳回折田子
【岩手山頂から3.5°方向シミュレーション田子周辺(クリック/タップで拡大します)】

 まず本県最南端の田子町周辺を拡大してみる。
 田子の有人地帯では望めないが、小森高原牧場東方にある猿ヶ平(679m)周辺に電界強度30〜36dBμV/mの黄緑色があるが、ワンセグ程度だろうか。
 旧浄法寺町と旧安代町との3町境に至近の961.7m高地なら可能性はある。
 田子の人たちはケーブルテレビに加入してMITの区域外再放送を視聴可能なので、別に岩手と同局数の宮城の電波は必要なく困らないだろう。

岩手山山岳回折本県
【岩手山頂から3.5°方向シミュレーション十和田周辺(クリック/タップで拡大します)】

 一応、田子から北側を見てみるが、三戸、新郷、旧十和田湖町、七戸とほぼ無人の山岳地帯。ところどころの山に黄緑色があるが・・・・・・無理そう。

 岩手山の山岳回折に期待はできなさそうである。


 次は姫神山。
姫神山山岳回折広域
【姫神山頂から10.13°方向シミュレーション広域図(クリック/タップで拡大します)】

 姫神を出発して、岩手県内は国道4号の東側を10.13°方向に飛んでいく。
 本県には南部町の最南端付近で入って、三沢漁港の辺りから太平洋上に出ていくらしい。
 八戸市北西部からおいらせ町、三沢市など人が住まう地域の上空も飛ぶが、いかんせん電界強度の見込みが非常に低い。
 姫神の標高が岩手山よりだいぶ低いこともあってか、県内に黄緑色が付く場所は無さそうである。

姫神山山岳回折二戸
【姫神山頂から10.13°方向シミュレーション二戸周辺図(クリック/タップで拡大します)】

 岩手県だが、二戸の辺りをみてみる。
 折爪岳の西麓に電界強度30〜36dBμV/mの黄緑色があるが、ここもかなり険しい山中であって無人地帯。青森に入る前の岩手の段階で既に厳しい結果が出てしまう。

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【折爪岳の二戸中継局(クリック/タップで拡大します)】

 実は今年の夏、約13年ぶりに二戸中継局の見物に出かけて折爪岳で仙台局チャレンジをした。
 姫神は割と東西に回折点が伸びるので、もしかすると折爪ならと思ったのである。
 二戸局と被るNHK仙台(重複波はTVI)、TBC(重複波はIAT)、OX(重複波はEテレ盛岡)と、Eテレ盛岡親局と被るEテレ仙台ABA八戸局と被るMMTは当然不可能として、唯一大出力局と派手に被らない28chのKHBも受信不可能であった。
 (KHBの28chもIBCの谷地山とか岩手沼宮内とか西根松尾とと重複するので厳しい)

姫神山山岳回折本県
【姫神山頂から10.13°方向シミュレーション八戸周辺図(クリック/タップで拡大します)】

 一応、本県の伝搬路も眺めてみるが、電界強度が極めて低いことを示す青の線が伸びるのみ。
 まあ無理なんでしょうな。青森で2県越えの宮城波受信は。

 こうしてみると、岩手には及ばないが全国第5位の面積11,636㎢を誇る秋田県を越えて山岳回折津軽まで到達する山形波(鶴岡局)ってのは、本当に奇跡みたいな飛び方である。

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