山岳回折を利用した遠距離受信の成功者を知りたくて検索していたところ、とんでもないものを発見した。


 鳥取市でテレビ大阪(TVO)受信!

 すごいじゃないか!
 鳥取県は西隣の島根県と民放の放送エリアが一緒であり、青森県と同じ民放3局地区である。
 系列構成は日テレ系・日本海テレビ(NKT)TBS系・山陰放送(BSS)フジ系・山陰中央テレビ(TSK)で、テレ朝系テレ東系が欠落になる。

 鳥取市で遠距離受信で近畿の放送を狙う場合、テレ朝系はABCテレビを日本海側の香住中継局から受信するらしいが、テレ東系・テレビ大阪(TVO)のエリアは大阪府域のみで、兵庫県には中継局が存在しない。

 このため、鳥取市のケーブルテレビで区域外再放送されるテレ東系は岡山のテレビせとうち(TSC)となる。TSCもまた鳥取でどうやって受信するんだという感じだが、今回の本題はあくまでも鳥取市でテレビ大阪(TVO)を遠距離受信するという偉業について。

 生駒山の親局から山岳回折で飛んでくる以外にないだろうと踏んでシミュレーションしてみる。指向性がわからないので、適当に320度方向(阪南・岬方向が約230°なので+90°ズレとした)にコーナーアンテナでERP=21kWでぶっ飛ばす設定で作った図である。
TVO-Sangaku-Tottoris
TVOの親局のシミュレーション図】

 見事に氷ノ山と扇ノ山に電界強度60dBμV/m以上の赤い点が付いた。
 氷ノ山と扇ノ山の山頂なら、混信でもない限りはTVOが映る可能性が高いのだろう。
 そして、氷ノ山と扇ノ山は山岳回折で鳥取市にTVOの遠距離受信の可能性をもたらす、と当ブログは見ている。

扇ノ山−鳥取市方面
【扇ノ山から鳥取市方面へ307.3度方向にシミュレーション】

 扇ノ山は鳥取市東部の標高1310mの山である。
 生駒山のTVO親局からみて約307.3°の方角に位置するので、陣場岳AKTのシミュレーションと同じようにERP=0.3Wで、扇ノ山の山頂から307.3°方向にシミュレーションしてみた。

扇ノ山−福部
【扇ノ山から307.3度方向にシミュレーション 福部付近】

 現在は鳥取市の一部となっている旧福部村に山岳回折波が降りてくるようだが、微妙に福部の中心部をかすめている感じで、望みは薄いかなという感じはある。
 それでも、伝搬状態が良さそうな場所は点在しているので、移動受信でなら可能性はあるかもしれない。

 とりあえず、扇ノ山の山岳回折は鳥取県側の地形と人里の相性があまりよくなく、本命は氷ノ山の方になるだろうか。

氷ノ山−鳥取市方面
【氷ノ山から鳥取市方面へ305.7度方向にシミュレーション】

 日本百名山への選定はされていないが、その名前のインパクトから「氷ノ山を知っている!」という人は少なくないだろう。ちなみに読み方は“こおりのやま”ではなく“ひょうのせん”である。
 中国地方では伯耆大山に次ぐ標高1510mを誇り、見事に約130km離れた生駒山からのTVOの電波を受け止め、鳥取方面に山岳回折させている。
 生駒山のTVO親局からみると約305.7°の方角になる。

氷ノ山−鳥取市街
【氷ノ山から305.7度方向にシミュレーション 鳥取市街】

 三角点のある氷ノ山の山頂を回折点としてシミュレーションすると、鳥取市街地東方の本陣山や久松山が引っかかる関係で、市街地は厳しそうだ。
 それでも千代川右岸河口に近い浜坂地区は可能性があるシミュレーション結果が出ている。
 住宅地なので、建物の陰になったり都市型ノイズの影響も出るので品質的に難しいとは思うが、TVOも30dBμV/m前後の電界強度は得られる可能性がある。

山陰002
【鳥取駅前通り 2011年撮影】

 鳥取駅から久松山までは2km程度しか離れていないので、駅前からも良く見える。当時は何の気にも留めなかったが、2011年の来訪時に自分も久松山は見ていた。
 中心市街地でTVOは、高層ビルの上でも厳しいだろう。

山陰001
【鳥取駅 2011年撮影】

 「鳥取駅付近なら久松山や本陣山はかわせるのでは?」という思いもあるので、念の為に生駒山からの地形断面図を取ってみる。
 鳥取駅の場合は、氷ノ山の南方の尾根で回折することになるが……

TVO-Tottoridanmenzu
【生駒山−氷ノ山南方尾根−鳥取駅の伝搬路断面図】

 鳥取駅の場合、八頭町福地の三角点がある800m高地(35度25分2.11秒 134度21分36.86秒)に引っかかってしまう。
 氷ノ山までは繋がっていても、降りてくるときに引っかかってしまうのだ。山岳回折のもどかしいところである。
 じゃあ鳥取市内では無理なのかと言えば、浜坂地区より望みがある場所もある。

氷ノ山南方1464m高地−鳥取市方面
【氷ノ山南方1464m高地から鳥取市方面へ305.0度方向にシミュレーション】

 氷ノ山は山頂から南南西に1400m級の急峻な尾根筋を擁しており、三の丸の避難小屋がある1464m高地は山岳回折の可能性を秘めた山である。
 生駒山のTVO親局からみると約305.0°。ここから305°方向に鳥取市街に回折するシミュレーションを行ってみる。

氷ノ山南方1464高地−鳥取市街
【氷ノ山から南方1464高地305.7度方向にシミュレーション 鳥取市街】

 千代水地区、湖山町東、賀露地区、鳥取空港東側などはTVO受信可能性がある結果に!
 先述の鳥取駅付近では八頭町の800m高地の陰になるが、こちらは800m高地の北の鞍部を通過して日本海まで到達する電波の伝搬路になる。
 鳥取市街地の都市型ノイズや、空港由来の電波も飛び交うので条件は決して恵まれていないが、電界強度は30dBμV/m以上が見込まれ、受信成功可能性は十分にある。


 冒頭のYouTubeの投稿者のコメントを読むと「常時受信とは行きませんが、伝搬状態が良くなると鳥取市でTVOが受信出来ます。」とあるので、TVOは時々のお楽しみということにはなると思うが、「関西テレビは生駒波が日本海ダクト発生時以外は常時受信」とあるので、やはり鳥取市で生駒山の大阪親局波を山岳回折で受信することは可能なのだ。

TVO-TottoriAPdanmenzu
【生駒山−氷ノ山南方1464m高地−鳥取空港の伝搬路断面図】

 鳥取・生駒間の距離は160km!

 鳥取空港が受信地とすればその伝搬距離は165kmを越えるが、見事に1464m高地至近の回折点1回のみの芸術的な山岳回折が成立する地形になっている。
 地デジで距離160km超のフルセグ遠距離受信成功となると、本邦屈指の記録ではなかろうか。
 津軽平野でAKTを受信する当地の伝搬距離より30km以上も長い。

 やはり山岳回折が秘める可能性は非常に大きいと確信せざるを得ない、鳥取の事例である。
 鳥取の受信成功者に天晴である。

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