Yahoo!ニュースのトップに「集落の墓地を丸ごと墓じまい 「子や孫が面倒見られるか」住民ら決断」という京都新聞の興味深い記事(京都新聞リンク)が出ていた。

 詳細は京都新聞の記事を読んでいただくとして、要約すると下記の点がポイント。

墓じまいが成立したのは南丹市園部町下口司の集落共同墓地
13世帯で住民の多くは70歳代以上、子供は数人。
転出した6世帯の了解も得て、近くの佛名寺(森屋徹全住職)に合祀塔墓し、墓地は更地にした。
住職「20年前ならば反対された。逆に10年後であれば、転出者と連絡が付かなくなる。今が行動する時期として良かった」


 これ、もの凄い高難度ですよ。
 住職さんが「今が行動する時期として良かった」と言ってるとのことだが、10年経たずとも現時点でほとんどの共同墓地はきわめて困難な状況に陥っていると私は思う。
 私の勝手なイメージだが、集落共同墓地といえば共有地の代表格のようなものであり、共有地所有者不明土地問題と切っても切り離せないものだと思っている。
◆ 悩ましく難しい所有者不明土地問題

 所有者不明土地問題とは何ぞやという話だが、高速道路新幹線バイパス、その他の新しい道路や河川改修、治山といった社会インフラや、民間資本による大規模な施設を新設しようとしても、予定地にある土地の所有者がわからないため用地買収が遅々として進まない問題である。

 所有者不明土地問題の「所有者不明土地」については国土交通省が「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」と定義している。

 いくつかの事例が国土交通省の資料で紹介されているが、一般国道バイパスの予定地に明治37年に登記された土地があり、登記名義人が明治生まれの故人というケースでは、法定相続人が148人にものぼり、相続人との協議に3年の時間を要したケースがある。

 で、まさに共同墓地関連でいうと、約40名の共有地の相続人が約242名(うち3名が所在不明)にも上って難航中、という河川改修工事の事例も載っている。
 
 墓として利用している土地を道路や河川の工事に譲るというのと、寺に合祀して墓地は更地にするというのは性質が違うかもしれないが、共有地の権利を持つ複数名の意思を統一するという点では同じである。

 ──登記簿をみて所有者を割り出したら故人だった
 ──相続人もどこにいるのかわからない
 ──相続人を探しているが見つからない
 ──相続人を見つけたが首を縦に振らない
 ──相続人がいっぱいいた

 というのは割とよくある話であり、園部のこの共同墓地は転出した6世帯を含めてよく意思がまとまったものである。
 まとまったこと自体が奇跡であると思うし、よくこんなの見つけたな京都新聞という感じもする。
◆ 我が青森でも普通にある所有者不明土地問題

 当ブログが過去に何度か関連記事(未成道信号問題)を書いている青森市の市道3・4・24号大矢沢筒井線も路盤がほぼ完成しているのに県道44号青森環状野内線との接続点にある旧大矢沢墓地が開通直前まで残っており、いつまでも道路が繋がらないという状況が過去にある。

 2011(平成23)年の青森市議会第4回定例会(第2号)において、里村誠悦市議がこの問題について「墓地用地を取得する。すぐできない。何でそうなのか。平成11年にちゃんとできていなければならないものを、10年も延びて、さらにまだ時間がかかる。手続に期間がかかるというので、墓地用地を取得するための手続の内容、そして手続にかかる期間をちゃんとわかるようにしてください。」と質問している。

DSC_2174
【旧大矢沢墓地跡を貫く青森市道大矢沢筒井線】

 これに青森市都市整備部の工藤雅史理事が「登記簿上19名の方の共有地になってございます。この19名の方について、まず登記簿に住所の記載がされていないとか、あるいはその記載されているのが相当古いもので所有者の特定が困難ということ、そんな状況に今なってございます。ですから、土地収用制度ということで取得手続を進めていきたいと今考えてございまして、来年度、そのために必要なまず事業認定申請を行って、事業認定を行った後に、裁決、申請の手続、そういった流れで進んでまいります。それらにかかる期間でございますけれども、事業の認定、申請から、最終的に今のような手続を行って土地の権利取得までということになれば、一般的には1年半ぐらいはかかるんじゃないかなということで今想定されてございますので、来年度早々、この申請手続を行ったとしても平成25年度まではかかるのではないかなと今考えてございます。」と答弁している。

 一例として大矢沢墓地をめぐる青森市議会の議事録の一部を紹介したが、共有地の用地取得はなかなか骨が折れる作業であることがわかる。

 大矢沢墓地の場合、青森市に住民の利便性向上のため新しい道路を造るという大義名分があり、10年以上に及ぶ所有者特定作業を尽くしてきたからこそ土地収用制度を利用することが出来たわけだが、「集落でまとまって墓じまいしましょう!」という呼びかけから強制力を以て実行まで移せる法的手段は無いだろう
 集落共同墓地の権利を持つ所有者全員を特定して交渉できなかったり、交渉しても誰かひとりに拒否されたら墓じまいは実現しなかっただろう(共有地の契約書に多数決で決定可能という条項でもあれば別だが)。

 それこそ住職の「20年前なら反対された」という言葉にも表れていると思うが、墓地は宗教的な場所でもあって、先祖代々の墓の形状を変更することが反対されやすいのもあるだろう。
 私の家系の墓も集落共同墓地にあって大多数は曹洞宗だが、浄土宗や浄土真宗といった他の宗派に帰依する家の墓もあるし、同じ曹洞宗でも寺が違うなんて場合もあって、少なくとも一か所に合祀という形ではまとまらないだろう。

 京都の園部で実現した集落が一つにまとまっての墓じまい、これは奇跡的な事例である。

blog_rankingクリックでブログランキングに投票!