
青森市で函館局の受信が可能な代表的な地点と言えば、モヤヒルズである。
モヤヒルズにはかつて青森ケーブルテレビが設置した函館局受信点も今なお残っているし、麓の雲谷集落にはマスプロ電工・LS306TMHの新設世帯もある。
旧モデルのLSL30も反射器の赤がアナログ放送時代の遠距離受信の象徴という感じで印象的だったが、最近は銀色に輝くLS TMHシリーズも地デジでの成功者という感じで格好よくみえる。
青森市内では往年の戦士LSL30が風雪で老朽化し、あさっての方向を向いていたり、反射器や素子が脱落して無残な姿を晒していたり、遠距離受信の成功者は激減したと見受けられるが、ごく稀にLS306TMHに更新する家もある。
青森市で函館局に勝負するにはLS306TMHの投入が推奨される。
別にマスプロ電工の回し者ではないが、理由は後述する。
前置きは長くなったが、市内で函館局の遠距離受信の可能性がある各地を巡って受信調査を実施したので、まとめていく。
受信機材はこれまで通り、アンテナはマスプロ電工・LS56でブースターはサイトウコムウェア・AMP-UK、ケーブルはマスプロ電工・S5CFB20Mを3m。
UHB函館局の25chならアンテナで8dB、ブースターで20dBほど利得を稼げる見込みである(AMP-UKは最大利得23dBのようだが、ケーブル他の損失もあるので20dBとする)。
◆モヤヒルズ第7駐車場

モヤヒルズといえば、国道103号の山側から一方通行の周回路に入る地点の砂利の広場で遠距離受信に励む同好の者を見かける。
「水曜どうでしょう」の放送中(真夜中!)に“どうでしょうステッカー”を貼った"藩士"と思われる県外ナンバーが停まっているのをみたことがあり、県外でも受信可能スポットとして認知されているのかもしれない。
できるだけ雲谷集落での受信状況に近い条件を選んで、標高にして40mほど低い第7駐車場(受信高240m)で勝負。

一応、全7局受信に成功したが、青森市民にとって肝心のUHBとTVhがあまり良くない。
特にTVhのC/N=18dBは低い。もう少し欲しいところ。
TVhと同一局舎のHBCもC/Nこそ20dBはあるがBERがE-3というのが気になる。この2局とモヤヒルズ第7駐車場はあまり地理的に相性が良くないのかもしれない。
UHBのC/Nも20dBはキープするがBERがE-4しかなく、時々E-3に転落するのが気になった。
津軽平野の当地のAKTの受信実績ではC/N=20dBならBERは最低でもE-5は堅いところ。
C/Nが高い割にBERが悪く受信が安定しないといえば、異常伝搬時の鶴岡局みたいな感じである(YTS鶴岡局の事例)。
UHBと局舎・鉄塔が隣になるHTBもC/Nが25dBもあるのにBERがE-5。AKTならエラーフリーをたたき出すC/N値なのに。
雲谷も場所によっては受信状況が決して芳しいものでもないのだろう。
STVとNHK総合、Eテレは健康優良児って感じの数字だが、雲谷でもUHBとTVhがあまり良くないなら、他の地域で遠距離受信に励む青森市民が激減するのも頷けるというものである。
◆田茂木野バス停

モヤヒルズの第7駐車場からほぼ真北に2.7km、標高は一気に100m以上も低くなり受信高は135mとなる田茂木野バス停、かつての青森観光りんご園の大駐車場の隅っこをお借りして北向きに構えて勝負。
田茂木野はシミュレーションからも実験からも受信可能な集落と確認しているが、集落の人々に興味がないのか、北海道へアンテナを向ける世帯が見つからないのが少々気になる。
2022/7/31追記:詳細は避けますが、LS306TMHを函館局に向けて新設した住宅を発見しました。

こちらも全7局受信に成功したが、UHBがC/N=19dBと伸び悩む。
ただTVhはモヤヒルズ第7駐車場より良く、C/N=22dBあり、BERもE-5ならまずまずの結果。
それにしてもだ、受信実験を行った時刻に多少の時間差はあるにせよ、モヤヒルズと同じ日に観測していても田茂木野はずいぶん良い。
NHK総合のアンテナレベルは99もあり、C/N=37dBというのは地元局並の数字である。20dBブースター込みとはいえ受信電力が-36dBmとは強すぎる。最も受信電力の小さいUHBとの差はなんと16デシである。
ともあれ、雲谷と田茂木野でUHBとTVh、HBCの3局は受信難易度が高いグループに分けられそうな感じが見えてきた。
◆幸畑香取神社南方

続いて田茂木野より市街地方面へ下って、幸畑団地に。
幸畑香取神社の一角のみ大字大矢沢字里見の町名となっており、南隣の幸畑5丁目の住宅街との境界付近で受信実験。
受信高は65mまで下がってきた上、函館局方向に樹木があるのが気になるが、とりあえずやってみる。

いよいよUHBはC/N=14dBしかなくワンセグという厳しい結果となり、TVhが辛うじて受信成功という感じ。
7波全体でもNHK総合が不死身なのかという感じのほか、前回の記事で紹介したフルセグは受かるのにワンセグが受からないHTBの計3波のみ受信成功。
STVとEテレの受信電力はブースター込みでも-70dBm以下に抑え込まれており、この2局は香取神社まで電波自体が届いていないのだろう。STV単独でダメならともかく、Eテレと送信条件が同じはずのNHK総合が良いだけに謎である。
幸畑団地はLSL30が朽ち果てて無残な姿を晒しているケースや、アンテナが撤去されて“もぬけの殻”状態の高いコンクリート柱が「昔は遠距離受信していました」というランドマークのようになっている場合が多く、やはりかなり受信難易度が高いのだろう。
「TVhがギリギリ受かるかどうか、UHBは無理」となれば、かつて盛んにおこなわれていた函館局の遠距離受信が廃れるのも無理はない。成功者が皆無になったわけではないようだが、幸畑団地での函館局受信の難易度は非常に高いだろう。
◆八甲田憩いの牧場駐車場

青森市南部工業団地から八甲田山に向かって市道を南下すると、八甲田憩いの牧場に到達する。
市道を境に東側が合子沢、西側が野木となり、近隣の青森県産業技術センター工業総合研究所は野木になる。一方、当牧場の南隣の旧くさぶえ温泉は小畑沢になる。
受信高は127mで田茂木野と大差ない標高地点で勝負。

全7局受信に成功し、UHBとTVhもまずます。
UHBがC/N=22dBもあってBERがE-4というのは気になる点ではあるのだが、受信電力が割と高いので良しとする。
TVhはC/N=21dBでBERがE-5なら及第点だろう。
函館山の送信所の地理条件と相関がわかりやすく出ており、同一局舎のTVhとHBCの受信電力が-58dBm、隣接局舎のUHBとHTBの受信電力が-50dBmと、それぞれ同じ受信電力となっている。
STVとNHK総合、Eテレはここでもかなり強く安定度が高いようだ。
ただ如何せん、ここは集落地ではない、つまり固定受信する人が居ないのが弱点というか。
憩いの牧場の南隣のくさぶえ温泉ではかつてLSL30だけではなく12素子のVHFアンテナまで併設して全局受信をしていたこともあるが、廃業して久しい。
杉沢村の騒動の頃はまだ賑わっていて、ここの灯りが暖かかったものである。
◆入内北

本当は回った順としては最後になるので夕方になっているが、次は入内を。
入内黄金山神社の南側、入内峠を経て浪岡ダムに至る道と、入内集落に至る道が分岐する追分にほど近い高台である。
青森市安田から入内断層に沿うように縦断してきた農道は一貫して水田の中を伸びてくるのだが、青森平野の最奥部の風情がある入内集落を前に、黄金山神社と追分付近だけ斜面にへばり付いて標高を稼いでおり、ここは適地である。
受信高は意外と高く120mだが、幸畑香取神社南方と同じく函館局方向に樹木が茂っているのが気になる。

全7局受信に成功し、TVhも悪くなく、UHBはこの日最高のC/N=23dB。
全局とも総じて安定していて、C/N値では田茂木野に負けたがいつ来てもBERがE-0のエラーフリーをたたき出すという青森市内でも屈指のHBC安定受信可能地点と言える。
ここではHBCのほかにもSTV、HTB、NHK総合、Eテレと5局がBERエラーフリーで、非常に品質の高い電波が届いているのであろう。

先ほど『青森平野の最奥部』という表現をしたが、入内川沿いの水田に東西とも山が迫っており、谷筋なのである。
東西からLS56に飛び込む雑音(Noise)を、東西の山が天然のカットフィルターのような役割を果たしているのだろうか。
LS56の半値幅はマスプロ電工のカタログによれば49°あり、半値幅を最低で18°まで絞り込めるLS306TMHの鋭利な指向性に比べればガバガバな感じは否めない。
東西の山のお陰で、疑似的に上位超高性能モデルのアンテナのような指向性が担保されていることが、入内北の好結果に繋がっているのかもしれない。
しかし残念なことに、南側の入内集落の住宅地になると山影になってしまって受信不能なのだ。

モヤヒルズや八甲田憩いの牧場のように青森市街の見通しが広がる訳ではないが、入内北は意外と見通しが良いのである。
カシミール3Dのシミュレーションによれば、函館山の山頂付近は肉眼でも見通せる条件となっており、天候次第では望遠鏡を使えば函館送信所の鉄塔も見えるのだ。
◆青森空港駐車場

青森空港も函館局の受信が可能な場所として知られている。
青森空港有料道路や旧道の方の県道27号でも良好に受信できるが、路上駐車するには躊躇われる道路環境でもあるので空港の平面駐車場で実施。
立体駐車場の屋上を使えればもっと良いのだろうが、開放されているのをみたことがない。
受信高は入内より高く200m、陸奥湾も目視できる環境だがいかに。

TVhがブロックノイズ多発で辛うじて受信、UHBもBER悪め。
TVhは同一局舎のHBCと共に受信電力も弱く、HBCは残念なことにワンセグ。
UHBは受信電力が-49dBmと結構強めでC/Nこそ20dBに達するがBERはE-4。局舎が隣接するHTBも受信電力は-48dBmと強くC/Nが26dBもありながらBERはE-6。
UHBとHTB、電波自体は強いみたいだが、品質がよろしくないようで。
青森空港、あまりにも開けすぎていて函館以外にも色々と雑音(Noise)も飛来しやすいのだろう。
まあ、人が住んでいる集落地ではないので、移動受信向けの場所か。
◆新城平岡(緑ヶ丘団地)

新城平岡──その中でも緑ヶ丘団地の高台は青森市内の住宅地では今なお受信可能性の高い地域だとみている。
数年前にたまたま異常伝搬の日に訪れたらストラーダでUHBのアンテナレベルが50以上という凄い記録を出した場所だ。
が、この日は東を向くとATV上北局が「こーんにーちはー!」と飛び込んで来るものだから「元気だな」と冷静に返すほかない。
家々が建ち並び樹林もあり、道端で2m程度の高さで受信実験するには厳しいため、疑似的に屋根上のアンテナ環境を再現したく、写真のポイントから南側の舗装道路が砂利道(競輪場方面へ抜ける林道)に変わる地点まで下がって受信高を稼ぎ、実験を行った。
それでも受信高は50m。幸畑香取神社南方よりもさらに受信高が低い条件であるが、函館局の電波の見通し距離内には入る。直接波の受信が可能だ。

一応は全7局受信に成功したが、UHBのC/Nは19dBしかなくBERはE-3、TVhもC/Nは18dBしかなくBERはE-3。
UHBと隣接局舎のHTBもC/Nが23dBだがBERがE-5。
TVhと同一局舎のHBCもC/Nが22dBだがBERがE-4であまりよくない。
UHBは受信電力が7地点中で最高の-45dBmもあるのにC/Nが伸び悩み、BERもE-3というのは、やはり同じ25chのATV上北局が影響しているのだろう。
HTBも同じ23chのNHK総合青森の上北局の影響があるのだろう。
まあ、それでも受かればよいのである。
C/Nが16dBでも持ちこたえることがあるのが地デジのよいところ。時々ブロックノイズはあるかもしれないが、新城平岡で受信に成功している人はとにかく羨ましい。
青森市で函館局受信をするためにLS306TMHを推奨する理由
今回巡った7地点はいずれも函館局から飛んでくる電波の見通し内にある地点である。
青森市街地の高層建築物や都市型ノイズを避けるため、理論上の見通し距離より余裕があった方がよいとは以前にも書いていることだが、やはり上北局の混信の影響も考慮する必要があるのだろう。
上北局が青森市内でどの程度の電界強度を持っているのか、シミュレーションしてみる。
総務省の無線局情報によればATV上北局のERPは450Wということだが、A PABのエリアの目安のマップの形状や、平内方面と八戸方面でアンテナが違うという写真をみると平内方向にも450Wで送信しているとは思えない。
どのくらいのERPで平内方面に送信しているか不明ではあるが、同所にあるNHKの上北外ヶ浜局のERPが81Wということなので、ATV上北局のERPは80Wと推定して320°方向に送信してみる。

今回受信実験をした7地点中6地点で、ATV上北局の受信電界強度が0dBμV/m以上あるようだ。
ATV上北局はモヤヒルズ、田茂木野、幸畑のいずれの地点も0〜10dBμV/mの電界強度があり、憩いの牧場では10〜20dBμV/m、空港で20〜30dBμV/m、新城平岡では30dBμV/mを越える受信電界強度があるというシミュレーション結果が得られた。
ATV上北局の受信電界強度が0dBμV/m未満という地点は「入内北」のみ。
入内川の谷筋で、東西の山が上北局からの電波を遮断しているのがシミュレーションマップにも出ている。
こういう結果を見てしまうと、風雪害で壊れやすいとはわかっていても、青森市で函館局の受信に挑戦するならLS306TMHを投入する他ないのだろうと思う。
LS306TMHに期待するのは利得値より半値幅の狭さ──すなわち指向性の鋭さである。
入内北の受信点が横から入射してくる上北局の電波を山で遮断するように、LS306TMHの鋭利な指向性を以って横からの入射を遮断するのである。
chごとの半値幅のデータがマスプロから公表されていないようなので、LS306TMHの半値幅18°がどの帯域で出てくる数値かは明らかでないが、動作利得と相関があると考えればUHBの使う25ch付近は良い値になりそうである。
受信電力は45dBブースターで増幅すれば伸びるだろうが、信号(Career)だけでなく雑音(Noise)も一緒に増幅されるので、C/N値の改善は無いだろう。
やはりLS306TMHで横や斜めから入射する電波を遮断し、いかに函館局の電波だけを取り込むかが鍵になるのだろう。
(2)へ続く
コメント
コメント一覧
約50年も昔の実家の話ですが、横内ではアンテナを高くして北海道テレビを見ていました。
幸畑団地の方にある家内の実家も北海道テレビが見れましたが、今は映りません。番組表には北海道のチャンネルも入っていますが、電波が弱くて映りません。
コメントありがとうございます。
幸畑だとEPGには入っても映らないパターンもあるのですね。
当地でいう山形の放送のような感じですね。