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ATV上北25ch 上磯方面
【ERP=80Wとして仮算出したATV上北局受信電界強度シミュレーション図】

 青森市内各地の函館局の受信C/Nをみていく(1)の記事において、ATV上北局の平内方面へのERPを80Wと仮定してRadio mobileで青森市内のシミュレーションを実施した。
 結果、ATV上北局の受信電界強度が0dBμV/mとなる入内北受信点の成績が安定していたことが判明したわけだが、今日は上北局との関係に触れつつ前回とは別地点の状況を見ていく。

 受信機材は前回と同じく、アンテナはマスプロ電工・LS56でブースターはサイトウコムウェア・AMP-UK、ケーブルはマスプロ電工・S5CFB20Mを3m。
 UHB函館局の25chならアンテナで8dB、ブースターで20dBほど利得を稼げる見込みである(AMP-UKは最大利得23dBのようだが、ケーブル他の損失もあるので20dBとする)。
◆後潟漁港
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【後潟漁港から函館局にアンテナを向けてみる】

 青森市最北部の後潟は1956(昭和31)年まで東津軽郡後潟村であった地区であり、北で蓬田村と接する。
 蓬田村の村の木は「黒松」で、後潟地区にも青森市指定文化財(天然記念物)の「黒松」があるわけだが、後潟と蓬田を貫く松前街道を参勤交代で通行していた松前藩と関連があるようだ。

 松前街道にあたる国道280号沿いはアナログ放送時代は多くの家が函館に向けてLSL30を設置していたものだが、今はその撤去が完了して主が居ないコンクリート柱や、立派なコンクリート柱に不釣り合いなスカイウォーリーがちょこんと付いているというパターンもみられる。
 ATV上北局UHB函館局ともに見通しが開ける後潟漁港北側の海岸(受信高4m)で勝負。

函館波受信データ後潟漁港
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 青森の欠落系列を補完するUHBTVhの受信データが壊滅的な状況。
 もっとも、受信高が4mだと函館局の電波の見通し距離は88.5kmしかなく、実距離で91.5kmだから3kmほど見通し限界を超えているわけで、受信できなくて当然である。

 かつて多くの家が屋根より高いコンクリート柱の頂上にLSL30を構えていたというのも、受信難易度が低かったアナログ放送でも見通し距離の問題が課題だったのだという証左だろう。
 後潟は函館からの実距離が91km前後となるので、受信高10mで93.3km、受信高15mで96.3kmとなる見通し距離の余裕を稼ぐほかなかったのだろう。

 こんな条件でもフルセグに持ち込んでくるSTVNHK総合函館Eテレ函館の電波の強さは何なのだろう。海面反射波を上手く捉えているのだろうけれど、いくら何でも強すぎる。

atvkamikita25@ushirogata
【後潟でのATV上北局の受信データ】

 ちなみにこちら、UHB函館局の受信ができないかとアンテナの高さや方向をグリグリいじっている時に一瞬「おっ!」と思ったがATV上北局だった25chの受信データ。
 ATV上北局だって、上磯方面で馬ノ神山の青森親局の受信があまり芳しくない地域で受信されている中継局になるわけだが、それなりにUHB函館局の混信の影響を受けているのだな。

 函館各局のデータを見ても、上北局との混信があるUHBHTBの受信電力が、混信の無いTVhHBCより20デシも大きくなっており、混信のせいで無駄に受信電力が大きくなっているのだろう。

 いずれにせよ、LS306TMHの鋭利な指向性を以っても、UHB函館局ATV上北局に差をつけるのは結構難しそうだ。
 後潟など上磯方面で北海道の遠距離受信をやめてしまった家が多いというのも、こういう背景があるのだろう。
◆飛鳥漁港
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【正式名称は奥内漁港飛鳥地区】

 後潟から南下して飛鳥漁港へ。
 飛鳥漁港の正式名称は奥内漁港飛鳥地区であり、1955(昭和30)年まで東津軽郡奥内村だった奥内の飛鳥地区の漁港である。
 
 飛鳥と言えば、津軽中山山脈を挟んで西側のほぼ同緯度地点がつがる市稲垣(旧西津軽郡稲垣村)にあたるが、稲垣で山岳回折によってUHBTVhの受信に成功したのは既報通り。

 稲垣の記事でも書いたことだが、飛鳥の標高は1m程度しかなく、函館山からの距離は約98kmとなり、一般家庭で屋根の上やコンクリート柱を用いて受信高10mを稼いでも見通し外になってしまうので、後潟に比べるとアナログ放送時代でも函館にアンテナを向ける家は多くなかった気がする。

 飛鳥漁港北側の防波堤内側(受信高3m)で勝負。

函館波受信データ飛鳥漁港
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 一応、判定としてはUHBが復調したがC/N=17dBと下限に近く、BERはE-2のほぼ破綻状態。
 TVhワンセグでもBERがE-4という悪い成績だった。

 ATV上北局ではなく間違いなくUHBの受像と確認できたが、ブロックノイズに画面全体が覆われた状態であり、視聴には不適であった。
 UHBと局舎が隣接し、上北局との重複を受ける共通点を持つHTBは視聴には問題なかったが、C/Nが21dBもあるのにBERがE-3という、品質的には悪い状態だった。

 UHBHTBは受信電力がSTVよりも強く、ここもやはり上北局との混信で受信電力の値が大きくなっているのだろう。
 重複の無い5波の受信電力は後潟とほぼ同値であり、見通し外で海面反射波を何とか受ける場合の受信電力はこんなものなのだろう。

 後潟より少しだけUHBHTBの成績が良かったのは、やはり上北局の受信電界強度がいくらか飛鳥の方が低いのが要因だろう。
 Radio mobileのシミュレーションではあるが、推計で後潟より飛鳥の方が10デシ前後、上北の電波は弱そうである。
◆青森港堤埠頭
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【青森港堤埠頭】

 見通し外受信3連続となるのは青森港の堤埠頭。
 飛鳥から移動して来る際に青森ベイブリッジ上でSTVワンセグを受信できたが、ベイブリッジの高さがあればこそ。

 堤埠頭は函館山まで海しかないので障害物はないように見えるが、実際は地球の丸みの影響で水平線に遮られて電波の見通し外。
 受信高3mでは函館局の見通し距離は87kmしかなく、実距離で103kmの青森港では16kmも見通し限界を超過している。
 およそ16km先の青森湾から来る海面反射波でどれだけのデータが得られるか。

函館波受信データ青森港
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 7波全滅。

 STVNHK総合Eテレワンセグに何とか届く感じで、やはり見通し外受信で海面反射波に頼ることの厳しさが如実に表れた。

 アナログ放送時代なら市街地や標高の低い地域の一軒家などでも函館局の遠距離受信がされていたが、これが答えである。
 青森平野および周縁の丘などでの函館局受信は、高層ビルなどを除いてほぼ不可能だろう。
◆八重田1丁目海岸(オカムラ食品裏)
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【青森市八重田1丁目 オカムラ食品裏の海岸】

 飛鳥にいた頃は真夏のような青い晴天が眩しかったが、堤を経て八重田まで来るとだいぶ西に太陽が傾いており、ASKAの「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」の一節の“科学は正しいという迷信の風で育った”を自然と口ずさんでしまう。
 「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」がリリースされたのは1995年1月1日だが、それに先立つ1994年10-12月クールのフジ系の月9といえば和久井映見と岸谷五郎の兄妹と唐沢寿明による「妹よ」で、主題歌がCHAGE & ASKA「めぐり逢い」だった。

 CHAGE & ASKAが月9の主題歌を担当していた1990年代が、青森県民(特に津軽地方民)が最もフジ系を熱望した時代だったかもしれない。

 そんなことを思いつつ、ここは筋子で有名な螢カムラ食品工業の工場の裏手の海岸である。
 釣り人でもあまり来なそうなポイントだが、地形データをみて「可能性が有望」と踏んでやってきたのである。

TVh脇野沢111m高地山岳回折伝搬シミュレーション
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 青森市東部では脇野沢の山岳回折による函館局受信の可能性があると踏んできたが、地形データを精密に分析した結果、九艘泊の北海岬に至近の111m高地なら青森市に山岳回折での函館局の地デジ受信成功可能性があると見たのである。

 私の地形データの分析が正しければ、111m高地山岳回折の伝搬路が青森市に上陸する地点が、八重田1丁目の螢カムラ食品工業の工場裏手の海岸なのである。

 必ずここに上陸すると信じて、下北半島の突端・北海岬を目印にLS56を振っていざ勝負!

函館波受信データ八重田
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 UHBTVhワンセグ止まりだが、STVNHK総合Eテレフルセグ復調だ!
 ワンセグ止まりに甘んじてしまったが、UHBTVhのC/Nは後潟、飛鳥、堤の各地点と比較して最高である。

 八重田1丁目海岸も受信高が4mだと函館局の電波の見通し距離は88.5kmしかなく、実距離の103kmには15kmも足りない見通し外受信になる。
 これが3波フルセグ、4波ワンセグという結果になったのは、ひとえに山岳回折の結果だとしか言いようがない。

 科学は正しいのだ。
 科学の勝利を確信し、勢いそのままに111m高地山岳回折の伝搬路の延長線上にある地点へ急行した。


◆戸山団地(月見野)
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【戸山団地 日本ビルコン向かいの空き地】

 戸山団地南西の月見野霊園に登る桜並木沿い、日本ビルコン青森センターの向かいの空き地が受信点。
 伝搬路自体は戸山団地の蛍沢1〜4丁目の一部や月見野1丁目の一部も通過しているが、戸山団地の住宅の屋根上やコンクリート柱にアンテナを設置した場合を想定し、霊園の桜並木まで来たのである。

 ここの標高は32mしかなく、アンテナマストで稼いでも受信高は34m。
 受信高34mでは函館局の見通し距離は104.3kmだから、実距離で107.7kmに達する戸山団地は見通し外になるが、山岳回折の力を示す時だ!

函館波受信データ戸山団地
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 UHBはじめ全7局受信に成功し、TVhはC/N=23dBかつBERはE-0のエラーフリー達成!
 UHBのみC/Nが18dBだが、BERは3.32E-3だからそれなりだろう。ここも上北局の影響がある地域になるので、LS306TMHなどで指向性を鋭く取れば劇的に改善するだろう。

 受信電界強度は直接受信が決まる田茂木野などに比べると低い感はあるが、山岳回折ゆえこんなものだろう。
 山にブースター機能は無いが、損失と引き換えに見通し外の遠方まで電波をリレーさせるのが最大の強みである。

 ちなみに私の知る範囲において、この戸山団地の標高32mというのは青森市内で函館全7波のフルセグが受信できる地点として最低標高になる。
 この標高、幸畑でいえば青森大学の下側とほぼ同程度であり、いかに低い土地での成功例と言えるか。

 青森市内で山岳回折で函館局受信は、実用可能だったのだ。


◆月見野霊園
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桜並木を登って霊園まで来た】

 ただ、ほんの0.1°でも角度がずれれば全く受信できない状況に陥るのも山岳回折の怖さ。
 桜並木を登り切って月見野霊園まで来ると受信高は107mまで上がるが、方角的には0.5°ずれて175.1°方向になり、下北半島で多重回折となる。

函館波受信データ月見野霊園
【画像はクリック/タップで拡大します】

 STVEテレが辛うじてワンセグという程度。
 UHBTVhもかすりもしない。


 こんな感じで、見通し距離の限界を超えた各地点──後潟漁港、飛鳥漁港、青森港堤埠頭、八重田1丁目海岸、戸山団地で受信実験をしたが、手ごたえがあったのは山岳回折の八重田と戸山のみであった。

 戸山団地で伝搬路上に家がある人なら、LS306TMH、いやLS206TMHでも設置すれば函館局の地デジが安定受信できる可能性があるだろう。
 繰り返しになるが、当ブログは青森市内で山岳回折で函館局受信は実用可能とみている。

(3・総括編)へ続く

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