TBS系列の無い秋田県に青森テレビ(ATV)山岳回折波がどのくらい到来するか、Radio mobileで電波伝搬シミュレーションをしてみた。

 対象としたのは馬ノ神山のATV青森親局(30ch)
 ERP=7.1kWで送信高は600m(推測)として無指向性で送信する条件とし、まずは受信電界強度60dBμV/m以上のみ赤く塗りつぶすシミュレーションマップを作成した。

青森秋田県境ATV受信電界強度60dBμV/m以上
【大館市の青森県境付近の60dBμV/m以上電界強度図】

 上の図で受信電界強度60dBμV/m以上の赤い色が付いた嶺が、山岳回折点の候補となる。
 この赤いエリアまではATV青森親局の電波が非常に良好に届いているのは間違いないのだ。

 ATVの区域外再放送を実施する大館ケーブルテレビの受信点(大館神明社)に向かう回折点も大日影山からわずかに西の地点で赤くなっているが、大日影山周辺の稜線は東西に延びていて、大館市との相性は良い。

 ともあれ、下の表のとおり回折点の候補を選定し、馬ノ神山からの方位角度にあわせて秋田県側に回折するシミュレーションを行う。

ATV青森親局 山岳回折候補の山
山名標高(m)馬ノ神山からの方位角(°)
大日影山820181.66
大館ケーブルテレビ回折点811181.82
孫左衛門山東方832高地832189.74
孫左衛門山891190.86
田代岳東方1006高地1006196.10
田代岳1178197.81
雷岳1128198.77
烏帽子岳1133199.82
烏帽子岳西方1045高地1045200.95

 大日影山系孫左衛門山系田代岳山系から9地点を山岳回折点の候補とする。
 陣場岳は選ばないの?」と思った方もいるかもしれないが、過去に男鹿市払戸で受信実験をしてATV青森親局は厳しいという結果がある。

 9点それぞれの方向に、津軽平野でAKTのシミュレーションを実施したら何となく上手くいったような感じがするERP=0.3Wで、9地点から秋田県方面にシミュレーションを行ってみよう。

ATV山岳回折受信電界強度シミュレーション秋北
【二ツ井−鷹巣−田代ー大館のシミュレーション図】

 県境付近から米代川流域まではそれほど高い山がないので、各回折点とも比較的順調に山岳回折波のエリアを伸ばせるようだ。
 それが、米代川流域の人が住まう市街地や住宅地、集落などに実際に届きそうかどうかは引き続き見ていこう。

ATV山岳回折受信電界強度シミュレーション秋北ー大館大日影系
【大館市街 大日影山系の回折による推定受信電界強度】

 まずは大館市街。
 大日影山系山岳回折は相当に良いようで、Radio mobileのシミュレーションではATV青森親局の受信電界強度は40dBμV/mを超えるらしい(=黄色のエリア)。すごい。
 繰り返しになるが、大日影山周辺の稜線は東西に延びているので、実際にはこのシミュレーションのエリアの東西にも受信可能地点は広がっていると思われ、現に東側の大館税務署や大館鳳鳴高校の周辺にも青森方面にUHFアンテナを上げている家が複数見られるのである。

大日影山
【青森親局−大館ケーブルテレビ受信点の地形断面図】

 大館神明社境内にある大館ケーブルテレビの受信点も2020年夏に訪問済みだが、実際に地形断面図をとってみると惚れ惚れするような山岳回折地形のキマりっぷり。
 TBS系のない秋田県では大館のほかに秋田市の秋田ケーブルテレビIBC、由利本荘市のゆりほんテレビTUYの区域外再放送を実施していて、TBS系が見られることが大きな売りだろうと推測できる。
 秋田ケーブルテレビTUYの受信映像が時々乱れていたということで受信対象を岩手のIBCに変えた経緯があるし、ゆりほんテレビもHPで受信障害(フェージング現象)についてというページを設けているが、大館ケーブルテレビにはそういう類のアナウンスが無い。
 おそらく、大館でのATVの受信コンディションは、秋田や由利本荘のそれより相当に良いのだ。これは大館の特筆すべき地理条件か。

ATV山岳回折受信電界強度シミュレーション秋北ー田代早口孫左衛門系
【旧田代町(早口) 孫左衛門山系の回折による推定受信電界強度】

 大館市街地に続いて西に移動して旧田代町(早口)を見てみる。
 孫左衛門山系も40dBμV/mのラインが出てきて「本当かよ」と、自分でシミュレーションしてもにわかに信じがたく思う結果が出た。
 東側の岩瀬谷地の平地区に伝搬するのが孫左衛門山東方832高地の伝搬線だが、谷地の平地区は特に良さそうであり、実際にストリートビューで見てみると青森に向けて30素子のアンテナを上げている家がみつかる。
 西側に降りてくる孫左衛門山の伝搬線は長坂下岱地区などで良好なようで、下岱にも青森に向けてアンテナを上げる家が散見される。
 旧田代町全域で受信できるということは無さそうだが、谷地の平や下岱の人はATVを見ているのだ。
 孫左衛門山系もやっぱり良いのだろう。

ATV山岳回折受信電界強度シミュレーション秋北ー鷹巣田代岳系
【旧鷹巣町 田代岳山系の回折による推定受信電界強度】

 大館、田代と好結果が見られた勢いそのままに旧鷹巣町をみてみる。
 残念ながら田代岳山系の角度では鷹巣(北秋田)市街地にATV山岳回折波は降りてこない。
 鷹巣に向かうラインは、県境の尾根のほかにも西股山など大鰐山地の地形が複雑なため、不利な地形条件なのだ。
 強いて言うなら坊沢横道街道下地区や、内陸線大野台駅付近は田代岳東方東方1006高地の伝搬線が通過しているが、こちらで青森に向けてアンテナを上げる家は見つけられなかった。

 鷹巣より西の能代方面や南の阿仁方面についても言及しておくと、能代方面ではABS二ツ井中継局、阿仁方面ではAAB阿仁中継局が、ATV青森親局と同じ30chで重複になる。
 旧二ツ井町や旧合川町、旧森吉町、旧阿仁町方面では、仮にATV青森親局山岳回折がキマる地点があっても、ch重複があるので受信は困難だろう。
 能代市は白神山地の地形が険しすぎる。鰄渕方面なら藤里駒ケ岳の回折が来る可能性も否定できないが、実際に青森にアンテナを向けている家は鰄渕でも見当たらないので、不可能なのだろう。
 (追記→実際にシミュレーションしてみた記事

 最後に。本記事は秋田県でのATVの受信を保証するものではない
 しかし、ふだん津軽平野で秋田テレビ(AKT)にお世話になっている遠距離受信者として、秋田の県北でTBS系ATVを見たいと思っている人の一助になれば幸いである。

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