建物回折なんてあるのかよ?

 山岳回折のやりすぎで頭がおかしくなったと思うかもしれないが、建物回折での函館地デジのフルセグ受信が確認できたので報告したい。
 しかし回折点となる建物に到達する以前にそもそも函館局の電波が弱いし品質も悪いという。
 玄人にもお薦め出来ない。
 まあUHBTVhが見たい青森市民は、青森ケーブルテレビに加入しなさいってこった。

青森市内建物回折(都心)
【青森都心部の高層ビル3棟の回折の電界強度シミュレーション図】

 Radio mobileで、こんなものを作ってみたわけである。

 青森都心部で高さトップ3になる建築物は高い順にアスパム(76m)ミッドライフタワー青森駅前(65.56m)ホテル青森(64m)となるが、こいつら山の代わりになんねえかと。

 旧・岩崎村沢辺なんかだと、秋田県の三種町八竜から能代市南西部の標高30〜50m前後の丘陵地帯が山岳回折点となってAKT秋田親局(大森山送信所)の遠距離受信が可能になるわけだが、高さだけならアスパムも問題ないだろと。

青森市建物回折電界強度シミュレーション
【青森都心部の高層ビル3棟の回折の電界強度シミュレーション図(青森市郊外)】

 シミュレーションマップの郊外の方も掲載してみる。
 青森平野は函館局の電波の見通し限界を超えているので、標高が低い所では函館局のテレビは受信できないのである。
 が、脇野沢の山岳回折で、戸山団地の標高32mしかない地点でも全局フルセグ受信ができるのは確認済み。

 そんなわけで建物回折も可能性はあるかもしれないということで選んだのが、若草、上野、荒川の3受信点。いずれも青森平野の水田地帯で、標高は12〜18mしかない。

函館局 建物回折候補の青森都心のビル
山名建物名標高(m)函館山からの方位角(°)
ホテル青森65177.61
アスパム77178.26
ミッドライフタワー青森駅前68178.53

 書き忘れていた。回折点候補の諸元は上表のとおり。
 この3地点から、函館山の函館送信所からの方位角度に合わせて青森市に回折するシミュレーションをしてみる。
 例によって、津軽平野でAKTのシミュレーションを実施したら何となく上手くいったような感じがするERP=0.3Wという数値を用いるが、青森市の場合は当てはまらない(後述)。まあ目安になればよい。
■アスパムによる回折 青森市上野での実験
DSC_6849
【青森市上野 百万遍付近の受信点】

 まずは青森市で最も高いビル・アスパムの回折波の伝搬路上で、受信に適した場所として青森市上野(うわの)でマスプロ電工・LS56サイトウコムウェア・AMP-UKを組み合わせて実験だ。
 上野の集落はH字状の路地になっており、牛館方面へ向かう路地が東に向けて折れるカーブに百万遍があり、まさにここをアスパムによる回折波が通過していくのである。
 上野の標高は15m。マストで高さ2mを稼いで受信高17mで勝負してみる。

青森市上野 函館7波受信データ(2023/3/19)
FEM表示画面表示値
uwanohbc北海道放送(HBC)
AntLV=0
POWER=-76dBm
C/N=0dB
BER 3.94E-2
uwanostv札幌テレビ放送(STV)
AntLV=29
POWER=-68dBm
C/N=11dB
BER 3.94E-2
uwanohtb北海道テレビ放送(HTB)
AntLV=27
POWER=-70dBm
C/N=10dB
BER 3.94E-2
uwanouhb北海道文化放送(UHB)
AntLV=0
POWER=-76dBm
C/N=0dB
BER 3.94E-2
uwanotvhテレビ北海道(TVh)
AntLV=0
POWER=-78dBm
C/N=0dB
BER 3.94E-2
uwanogNHK総合・函館(JOVK)
AntLV=42
POWER=-64dBm
C/N=16dB
BER 2.97E-3
uwanoeNHK Eテレ函館(JOVB)
AntLV=37
POWER=-64dBm
C/N=14dB
BER 3.94E-2

 STVHTBUHBNHK総合Eテレワンセグ復調した。
 一応は建物回折、あるのか。。。
 同一鉄塔HBCTVhは揃ってワンセグすら復調できず

 NHK総合のアンテナレベルが45くらいまで伸びて復調しかける瞬間も見られたので、微調整をしてみようとしたのだが、少し横に動いただけでアンテナレベルが0に落ちたりして、アスパムの回折点ってシビアなんだろうなと思わされた。
 まあ、アスパムって三角柱で、てっぺんが尖がってんもんな。

 伊奈かっぺいの小話で、アスパムは肩がこらないというのがあるが、てっぺんからストンと斜面で落ちるので、回折点の幅は狭いのだろう。
■ミッドライフタワー青森駅前による回折 青森市荒川での実験
DSC_6853
【青森市荒川 みちのくクボタ青森店西側の受信点】

 続いて市内第2位の高さのビル・ミッドライフタワー青森駅前の回折波の伝搬路上で、受信に適した場所として青森市荒川でマスプロ電工・LS56サイトウコムウェア・AMP-UKを組み合わせて実験だ。
 県道120号のみちのくクボタ青森店から西に折れる農道に入り、家が途切れて水田地帯に入ってすぐの所がポイントになる。

 ここ荒川をミッドライフタワー青森駅前による回折波が通過していくが、標高は12m。マストで高さ2mを稼いで受信高14mで勝負してみる。

青森市荒川 函館7波受信データ(2023/3/19)
FEM表示画面表示値
arakawahbc北海道放送(HBC)
AntLV=0
POWER=-77dBm
C/N=0dB
BER 3.94E-2
arakawastv札幌テレビ放送(STV)
AntLV=4
POWER=-74dBm
C/N=1dB
BER 3.94E-2
arakawahtb北海道テレビ放送(HTB)
AntLV=11
POWER=-71dBm
C/N=4dB
BER 3.94E-2
arakawauhb北海道文化放送(UHB)
AntLV=0
POWER=-73dBm
C/N=0dB
BER 3.94E-2
arakawatvhテレビ北海道(TVh)
AntLV=0
POWER=-80dBm
C/N=0dB
BER 1.00E-0
arakawagNHK総合・函館(JOVK)
AntLV=14
POWER=-67dBm
C/N=14dB
BER 3.94E-2
arakawaeNHK Eテレ函館(JOVB)
AntLV=18
POWER=-72dBm
C/N=7dB
BER 3.94E-2

 HTBNHK総合Eテレワンセグ復調した。
 ここもあまり良くはないが建物回折があった。
 しかしTVhBER=1.00E-0という全くの無反応というのが辛い。

DSC_6861
【荒川から北方を望むが……】

 同一鉄塔群でみても、HBCTVhならHBCの方が幾分マシで、HTBUHBならHTBNHK総合EテレならNHK総合の方が幾分マシという傾向があるようだ。
 山岳回折だと周波数によって回折の具合が違うというので、ビルの建物回折の場合もHBCHTBNHK総合の方がマシになるの何かがあるのだろう。

 それにしても、アスパムミッドライフタワー青森駅前も、郊外からだと意外と見えないな。
 見えれば少し違うのだろうが、あまり受信実験の適地が無さそうなんだよな。
■ホテル青森による回折 青森市横内若草(ほぼ新町野)での実験
DSC_6888
【青森市横内若草 新町野集落東側水田の受信点】

 最後に市内第3位の高さのビル・ホテル青森の回折波の伝搬路上で、受信に適した場所として青森市若草でマスプロ電工・LS56サイトウコムウェア・AMP-UKを組み合わせて実験だ。
 若草とはいうものの、実際のところは新町野の集落から東に入った水田地帯の一角であり、若草の南端に近い位置だ。県道44号沿いの盛運輸のトラック駐車場の北側にあたる。

 ホテル青森の建物も遠くに良く見えている。
 ここ若草、実は建物回折が存在するのではないかと考えるきっかけの地である。ホテル青森による回折波が通過していくが、標高は18m。マストで高さ2mを稼いで受信高20mで勝負してみる。

青森市若草 函館7波受信データ(2023/3/19)
FEM表示画面表示値
wakakusahbc北海道放送(HBC)
AntLV=7
POWER=-74dBm
C/N=2dB
BER 3.94E-2
wakakusastv札幌テレビ放送(STV)
AntLV=28
POWER=-65dBm
C/N=12dB
BER 3.94E-2
wakakusahtb北海道テレビ放送(HTB)
AntLV=18
POWER=-67dBm
C/N=6dB
BER 3.94E-2
wakakusauhb北海道文化放送(UHB)
AntLV=11
POWER=-69dBm
C/N=4dB
BER 3.94E-2
wakakusatvhテレビ北海道(TVh)
AntLV=12
POWER=-75dBm
C/N=4dB
BER 3.94E-2
wakakusagNHK総合・函館(JOVK)
AntLV=50
POWER=-59dBm
C/N=19dB
BER 6.00E-6
wakakusaeNHK Eテレ函館(JOVB)
AntLV=33
POWER=-63dBm
C/N=13dB
BER 3.94E-2

 NHK総合フルセグ復調した!
 他の6波(HBCSTVHTBUHBTVhEテレ)もワンセグ復調した。
 建物回折フルセグ復調も可能だったとは……。

【青森市若草で建物回折NHK総合・函館受信】

 建物回折が存在するのではないかと考えるきっかけというのは、雲谷でUHBを受信して下山したときのこと。
 通常、青森公立大学の辺りからはワンセグすら受信できなくなるのだが、そのまま横内で左折して県道44号を走行している際に新町野地区でアンテナレベルが反応した経験が何度もあったからである。
 新町野では函館方面を向いたLSL30を見かけたこともあり、15年くらい前から理由は不明だが電波のホットスポットなのだろうと思っていたのである。

DSC_6891
【青森市若草で函館というかホテル青森に向けたLS56

 しかし青森公立大学より新町野は標高差で100mも低いのに何故だ、と。
 新町野と函館山の間には脇野沢の陸地もかかってこないので山岳回折もありえない。
 もしやと思って地理院地図に直線を引いて出てきたのが、ホテル青森だったのだ。

 建物回折なんてあるのかよ?
 冒頭の一文を再掲する。地図を見て本当に半信半疑だったが、新町野が電波のホットスポットたる理由はホテル青森による建物回折なのだろう。

函館局−ホテル青森−新町野断面図
【函館局−ホテル青森−青森市横内若草の地形断面図】

 若草(新町野)の地上標高の18mで計算すると、函館局からの電波の見通し距離は97.8km、マストで2m稼いで20mとしても見通し距離は98.7kmとなり、函館山から109kmも離れた受信実験地は電波の見通し範囲外。
 
 NHK総合・函館フルセグ復調、他の6波もワンセグ復調となった理由はホテル青森の建物回折が理由だろう。

DSC_5931
【青森ケーブルテレビの旧雲谷受信点アンテナ】

 ただ、青森市の遠距離受信として実用的かと言うと否である。

 というのも、函館局の送信指向性の問題だったり、約100kmにも及ぶ海上伝搬のフェージングの影響で、そもそもホテル青森屋上でもUHBTVhの受信は高難易度なのである。
 もともとホテル青森屋上に受信点を設けていた青森ケーブルテレビも、雲谷、そして大間へと受信点を移転させてきた経緯がある。

 ホテル青森屋上の時点で、UHBTVhの電波状態は決して良くないのだ。
 それがホテル青森の建物ぶつかる回折時点で電波の強さも品質もさらに劣化するのは間違いなく、遠距離受信には不適となるのは言うまでもない。
 
 ただし、ホテル青森がなければ、若草受信点で函館局は無反応だろう。青森平野の筒井や大野など大部分の水田でやみくもにアンテナを振っても函館局が無反応なのと同じである。

 ホテル青森があるから、NHK総合・函館フルセグ復調し、他の6波(HBCSTVHTBUHBTVhEテレ)もワンセグ復調するという意味では、建物回折利得と言ってよいのだろう。
 アスパムミッドライフタワー青森駅前のケースも同様である。

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