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【上北郡横浜町大豆田 国道279号ゆとりの駐車帯

 下北道 横浜吹越ICを降りて陸奥湾沿いの国道279号を北上していくと、横浜町でもむつ市でも、北側に向けられた大きな高利得アンテナを設置している家が点在している。

 単にむつ中継局の電波が弱くて設置しているのか、それともアナログ放送時代にMIT二戸局を受信していたアンテナが強風で方向が狂って北を向いているのか、あるいは北海道の局を受信しているのか不明だったが、8月の北通受信調査の際にLS306TMHらしきアンテナを発見して、一つの仮説が思い浮かんだ。

 地デジでも函館局が受かってるんじゃなかろうか。

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【上北郡横浜町大豆田は陸奥湾越しに下北最高峰・釜臥山が好眺望】

 プライバシーの問題もあるのでLS306TMHを新設した家がどこかは書かないが、函館送信所からの地形断面図を取ってみると釜臥山系による山岳回折がガンギマリの地点であった。

 その家の敷地で受信実験するわけにもいかないので、大豆田のゆとりの駐車帯でマスプロ電工・LS56(利得8dB)にサイトウコムウェア・AMP-UK(利得21dB)、ケーブル(損失0.6dB)の組み合わせでいつものように受信実験をしてみたのである。

上北郡横浜町大豆田 函館7波受信データ(2023/9/23)
FEM表示画面表示値
HBC横浜町大豆田北海道放送(HBC)
AntLV=38
POWER=-61dBm
C/N=14dB
BER 3.94E-2
STV横浜町大豆田札幌テレビ放送(STV)
AntLV=56
POWER=-54dBm
C/N=21dB
BER 2.10E-5
HTB横浜町大豆田北海道テレビ放送(HTB)
AntLV=44
POWER=-53dBm
C/N=16dB
BER 7.95E-4
UHB横浜町大豆田北海道文化放送(UHB)
AntLV=20
POWER=-61dBm
C/N=7dB
BER 3.94E-2
TVh横浜町大豆田テレビ北海道(TVh)
AntLV=41
POWER=-62dBm
C/N=15dB
BER 4.89E-3
VK横浜町大豆田NHK総合・函館(JOVK)
AntLV=27
POWER=-52dBm
C/N=10dB
BER 3.94E-2
VB横浜町大豆田NHK Eテレ函館(JOVB)
AntLV=27
POWER=-53dBm
C/N=10dB
BER 3.94E-2

 上北郡横浜町でSTVHTBTVhが復調するとは!

 HBCUHBNHK函館Eテレ函館ワンセグには届いた。

函館ー大豆田断面図
TVh函館局−大豆田ゆとりの駐車帯 伝搬路断面図】

 函館山のTVh函館局からの方位角は146.70°、距離は84.56km。
 津軽海峡を越えて大間町中心部付近で上陸し、むつ市の釜臥山頂近傍の尾根で山岳回折して上北郡横浜町大豆田まで到達するのである。

 おそらく、LS306TMHを新設した家ではUHBも復調しているだろう。詳しく書けないが、受信実験をしたゆとりの駐車帯よりも地形的条件は良く、アンテナ受信高も高くアンテナ性能もグンと良いのである。

 下北半島に位置する横浜町であるとはいえ、南部に分類される上北郡にもテレビ東京系が受信可能な集落もあったとは……

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【第四田名部街道踏切】

 標識にはパンタグラフが付いた電車が描かれているが、大湊線のディーゼル気動車が高速で通過していく国道279号の第四田名部街道踏切を渡り、境川を越えると上北郡横浜町からむつ市に入る。横浜町も下北半島に位置しているが、行政区分ではむつ市から下北ということになるのである。
 むつ市の陸奥湾側の国道279号沿いもなかなかカオスである。

むつ市近川・浜奥内付近のアンテナの例
【むつ市近川・浜奥内付近の国道279号沿いのアンテナの例】

 むつ市近川・奥内・金谷沢周辺の国道279号を走行していると何軒も見かけるのが、上の写真のようなアンテナの設置例である。
 上から往年のマスプロのUHF30素子パラスタックアンテナ(LSL30)、普及型UHF14素子アンテナ、そして垂直偏波用に縦置きにしたVHFアンテナである。
 
 垂直偏波VHFアンテナというのは、アナログ放送時代の釜臥山のむつ中継局のRAB(10ch)NHK青森総合(4ch)教育テレビ(12ch)垂直偏波での送信だったからである。
 同じ釜臥山にあったアナログのUHFの中継局(ATV(58ch)ABA(56ch))を受信するための普及型14素子アンテナも当然、垂直偏波のVHFアンテナと同じ向きにあるが、問題は微妙に角度差がついたUHFパラスタック30素子アンテナ

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【むつ市の浜奥内漁港で燧岳山系を狙って受信実験】

 UHFパラスタック30素子アンテナが向いている局はどこなのか。
 釜臥山から少し方向を変えたところで函館局には見通しが無いので、室蘭局を疑った時期もあるが、室蘭には角度差が足りないのでどこを狙っているのかが謎だった。

 やっぱり山岳回折で函館局が受かってたのではないかと。

 地形分析をすると、最適地はむつ市金谷沢の国道279号4車線区間周辺なのだが、低速車を追い越すべく各車両が殺気立っている区間で駐停車してアンテナを振る蛮勇さは持ち合わせていないので、あまり条件的に良くないが浜奥内漁港の岸壁で受信実験を行った。

むつ市浜奥内漁港 函館7波受信データ(2023/9/23)
FEM表示画面表示値
HBC浜奥内北海道放送(HBC)
AntLV=71
POWER=-53dBm
C/N=27dB
BER 0.00E-0
STV浜奥内札幌テレビ放送(STV)
AntLV=26
POWER=-64dBm
C/N=10dB
BER 3.94E-2
HTB浜奥内北海道テレビ放送(HTB)
AntLV=36
POWER=-50dBm
C/N=13dB
BER 3.94E-2
UHB浜奥内北海道文化放送(UHB)
AntLV=26
POWER=-55dBm
C/N=9dB
BER 3.94E-2
TVh横浜町大豆田テレビ北海道(TVh)
AntLV=41
POWER=-62dBm
C/N=15dB
BER 4.89E-3
VK浜奥内NHK総合・函館(JOVK)
AntLV=50
POWER=-49dBm
C/N=10dB
BER 4.70E-5
VB浜奥内NHK Eテレ函館(JOVB)
AntLV=32
POWER=-56dBm
C/N=11dB
BER 3.94E-2

 むつ市浜奥内でもTVhが復調し、HBCVKも復調した。

 STVHTBUHBEテレ函館ワンセグ止まり。


 証拠動画も掲載。
 BERもC/Nもギリギリの値ながら、映像は数分連続して視聴した限り安定して乱れることは無かった。
 
 津軽海峡側だけかと思っていたが、むつ市の陸奥湾側でもテレビ東京系・テレビ北海道(TVh)受信可能な地点があったとは。

函館ー浜奥内断面図
TVh函館局−浜奥内漁港 伝搬路断面図】

 旧大畑町で風間浦村との境界付近にある燧岳(781m)と、それに連なる佐藤ヶ平の稜線が山岳回折を成立させるのである。
 函館山のTVh函館局からの方位角は143.02°、距離は77.66km。
 
 むつ市の近川や奥内、金谷沢の人々は、アナログ時代からこうして山岳回折遠距離受信の恩恵にあずかってきたわけか。

 一つ気になるのは、LSL30らしきアンテナが朽ち果てて放置されている例が多くみられることだが、地デジでフジテレビ系・北海道文化放送(UHB)があまり良く受からないからかもしれない。

 結構粘って微調整もしてみたのだが浜奥内漁港ではUHBが上手く復調まで届かなかった。
 横浜町の大豆田の例をみると上手く受かる地域もあるのだろうが、むつの場合は人が住まう住宅地や集落地でUHBが上手く届くような条件が厳しいのだろう。
 
NHKMURORANLOGO
【次回予告】

 さて、下北半島には遠距離受信のネタがどれだけあるのだろうという風に思う訳だが、次回は津軽海峡側である。

 これほど下北半島で遠距離受信文化が多彩なのは、やはり下北では津軽海峡側の人たちが50年以上前の1972(昭和47)年から民放4系列受信を達成していた実績が大きいのではないかと思う。
 1972(昭和47)年時点で民放4系列が揃っていたのは、関東広域圏、中京広域圏、近畿広域圏、福岡といった太平洋ベルト地帯と北海道、そしてそれらの電波が届く近隣地域くらいしかなかったのである。
 そのような恵まれた受信環境が津軽海峡側にある事実を間近で見ていたむつ市の人たちも「田名部でも大間や関根のように受信できないのか」と行動に移そうとしたであろうし、何よりアンテナ工事を請け負う下北の電器店でも函館局の受信ノウハウが醸成されたのではなかろうか。

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【大豆田で釜臥山を狙ってアンテナを立てる】

 まさか50年前に地形分析をして「山岳回折が成立するからアンテナを立てるぜ」なんてところまで辿りついた人はそうそういないと思うが、色々と試行錯誤している中でむつ市内でも受信可能な地点が発見され、実際に受信する行動に結びついてきたのだろうと推測する。

 AKT受信のためのアンテナ工事を頼むと電器店に「やったことがない」と断られてしまう津軽平野とは、遠距離受信技術のレベルが違うのである。下北半島は。

 →室蘭局の遠距離受信へ
  
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