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【尻屋崎灯台から眺める室蘭方面の海】

 実をいうと先日の東通受信調査の際に訪れた尻屋崎では室蘭局の遠距離受信もしてみたのだが、坊主に終わってしまった。
 尻屋崎灯台から室蘭市の測量山(199m)までの距離は107.4kmで、その間には海しかない。
 測量山・尻屋崎間に障壁が無いのに受信が成立しないとなれば、UHFの電波の見通し距離の限界を超えているということだろう。

電波の見通し距離
 尻屋崎の駐車場周辺の標高は地理院地図によれば約15mである。三脚でマストを掲げて2mを稼いで受信高は17mとして、107.4kmの見通しを稼ぐには測量山側の送信高が485mなければならない。
 測量山の標高は199mなので300m近い高さの送信鉄塔が山頂にあれば尻屋崎まで室蘭局の地デジも届くのだろうが、さっぽろテレビ塔の高さでも147mだというのに、東京タワーに匹敵するテレビ塔が室蘭にあるとも思えない。

MURORAN TVHsuitei
【Radio mobileで民放室蘭局の無指向性アンテナを自作した】

 とはいうものの、色々ネットで検索しても測量山の地デジ鉄塔の高さがわからない。
 とりあえずRadio mobileで作ってみたのは、噴火湾沿岸の長万部や八雲、森、南茅部なども一括してカバーするため室蘭局の民放が使っていると言われている無指向性のアンテナのモデルである。
 Radio mobileに最初から付いている普通の無指向性アンテナ(omni.antのこと。円形になる)でも良いのだが、それっぽくしたかったのでエイチ・シー・ワークス株式会社のサイトに載っている4面合成の水平指向性特性図を見て室蘭局のアンテナの推定モデルを偽造自作した。

MURORAN NHKsuitei
【Radio mobileでNHK総合・室蘭の指向性アンテナも自作した】

 なぜRadio mobileに最初から入っている無指向性のomni.antを使わないで面倒くさそうな4面合成のアンテナモデルを自作したかというと、NHK総合・室蘭のアンテナモデルも作りたかったからである。
 測量山のNHK総合の鉄塔アンテナは、陸側が室蘭放送局(JOIQ)の室蘭親局で、海側が函館放送局(JOVK)の渡島中継局になっているとされており、NHK総合・室蘭の室蘭局は八雲、亀田半島や尻屋崎方面への指向性が無い。ということで、想像で偽造したのである。

MURORAN TVH
【Radio mobileで作成したTVh室蘭局の受信電界強度シミュレーション図】

 測量山の室蘭局の送信高は不明だが、函館山の函館局の鉄塔を参考に推測した。函館山の標高が334mで送信高が377mだということなので、鉄塔高は40m前後と仮定した。
 NHK総合・室蘭の室蘭親局がある地点の標高が地理院地図によれば180mなので、室蘭局の送信高は180+40=220mだろうと推測したのである。
 送信高220mと仮定した場合であるが、上図のような受信電界強度の分布になるようだ。
 電界強度が60dBμV/m以上を示す赤いエリアは、噴火湾沿岸の亀田半島北岸にも広く分布しているが、やはり尻屋崎には届かない結果である(桑畑山や片崎山など標高が300m前後以上の所は赤いが)。

MURORAN NHKG
【Radio mobileで作成したNHK総合・室蘭 室蘭親局の受信電界強度シミュレーション図】

 そしてもっと厳しい結果が出るのがNHK総合・室蘭(IQ)室蘭親局
 指向性が亀田半島方面に無いのに加え、送信出力が500WでERPも7.7kWと民放よりもパワーが足りないのである。
 電界強度が60dBμV/m以上を示す赤いエリアは、民放に比べ亀田半島でも薄くなっており、青森県側には存在が認められない結果であった。

 亀田半島の旧椴法華村から森町、八雲町、長万部町までの噴火湾沿岸は渡島総合振興局─つまりNHK函館放送局の放送区域であるので、NHK室蘭放送局ではなく、同じ測量山に設置するNHK総合・函館(JOVK)の渡島中継局が代わりにカバーするという建前によるものである。

 民放の室蘭局はともかく、NHK総合・室蘭(IQ)の受信は青森県では幻に近い存在なのである。
◆ 現地受信実験もしてみた
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【20日ぶりの尻屋崎】

 浜奥内漁港で函館局遠距離受信をした後、尻屋崎に向かい、続いてblack watch氏の情報提供のあった石持漁港、そして自身でも室蘭局ワンセグ受信の経験がある大畑港と3か所で受信実験を実施した。

 対象とした局は測量山にある8波である。
 無指向性(というより全方位に指向性がある)の民放のHBCSTVHTBUHBTVhEテレ室蘭(IZ)
 指向性が亀田半島や尻屋崎方面にはないNHK総合・室蘭(IQ)室蘭親局
 亀田半島方面にも指向性があるNHK総合・函館(VK)渡島中継局
 以上の通りである。

下北郡東通村尻屋崎 測量山8波受信データ(2023/9/23)
FEM表示画面表示値
HBC室蘭尻屋北海道放送(HBC)
AntLV=34
POWER=-67dBm
C/N=13dB
BER 3.94E-2
STV室蘭尻屋札幌テレビ放送(STV)
AntLV=18
POWER=-65dBm
C/N=8dB
BER 3.94E-2
HTB室蘭尻屋北海道テレビ放送(HTB)
AntLV=20
POWER=-67dBm
C/N=6dB
BER 3.94E-2
UHB室蘭尻屋北海道文化放送(UHB)
AntLV=21
POWER=-69dBm
C/N=7dB
BER 3.94E-2
TVh室蘭尻屋テレビ北海道(TVh)
AntLV=37
POWER=-63dBm
C/N=12dB
BER 3.93E-2
室蘭総合尻屋NHK総合・室蘭(JOIQ)
AntLV=17
POWER=-70dBm
C/N=7dB
BER 3.94E-2
Eテレ室蘭尻屋NHK Eテレ室蘭(JOIZ)
AntLV=8
POWER=-59dBm
C/N=3dB
BER 3.94E-2
渡島局尻屋NHK総合・函館(JOVK)渡島局
AntLV=38
POWER=-64dBm
C/N=11dB
BER 3.94E-2

 室蘭局、尻屋崎では1波も復調せず。

 Eテレ室蘭(IZ)以外は一応、ワンセグにはギリギリ届くようだが、やはり電波の見通し距離の限界を超えているのだろう。
 
 いやしかし尻屋方面にも指向性があるはずのEテレ室蘭(IZ)がダメで、指向性の無い総合室蘭(IQ)ワンセグという逆転現象はなぜだろう。
 総合青森(TG)の白糠中継局が16chで、Eテレ室蘭(IZ)と同chではあるが、桑畑山で遮られるので白糠局の影響は少ないようにも思う。なぜ結果が逆転したのか謎である。

DSC_0947
【尻屋崎から測量山方向にアンテナを仮設した】

 正確に言うと、UHBTVh12セグ復調する瞬間もあった。
 ただ、「映った!」と思うも数秒で映像断となり、「ダメか」と思ってしばらく待っていると映ったりするという感じで、かなりのフェージング気味であった。
 海面反射波が上手くアップフェージングのタイミングと重なった時だけ復調できたのではないか。
 青森港の岸壁で函館局地デジが全く受からないのと同じで、尻屋崎も見通し外だから室蘭局は受信できないものと判定した。

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【下北郡東通村 石持漁港】

 続いてやってきたのが石持漁港である。black watch氏の情報提供の後で地形分析をして、石持漁港は期待度の高い実験地として訪れることにしたのである。
 尻屋から石持までの県道6号県道266号も快走路であり、あっという間に着いてしまったが22kmも離れている(何分で着いたかなんて言えない)。
 下北半島に来ると距離と時間の感覚まで北海道じみて来るものがある。
 
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【下北郡東通村 石持漁港で受信実験】

 石持漁港では尻屋崎と異なり、亀田半島があるため測量山までの見通しが無い。
 しかし、恵山の西北西約3kmにある海向山(かいこうざん)が山岳回折の恵みをもたらしてくれる地形条件となる。
 恵山・下北間の電波伝搬は相当に良いようで、函館市の恵山についてのHPを見ると携帯電話のエリアについて「火口原駐車場で一部通話や通信ができる箇所がありますが、青森県下北半島側からの電波ですので、警察や消防への発信の際はご注意ください。」というように書いてあるくらいである。

下北郡東通村石持漁港 測量山8波受信データ(2023/9/23)
FEM表示画面表示値
HBC室蘭石持北海道放送(HBC)
AntLV=60
POWER=-58dBm
C/N=22dB
BER 0.00E-0
STV室蘭石持札幌テレビ放送(STV)
AntLV=73
POWER=-54dBm
C/N=27dB
BER 0.00E-0
HTB室蘭石持北海道テレビ放送(HTB)
AntLV=36
POWER=-66dBm
C/N=15dB
BER 3.92E-3
UHB室蘭石持北海道文化放送(UHB)
AntLV=63
POWER=-59dBm
C/N=23dB
BER 0.00E-0
TVh室蘭石持テレビ北海道(TVh)
AntLV=93
POWER=-50dBm
C/N=35dB
BER 0.00E-0
室蘭総合石持NHK総合・室蘭(JOIQ)
AntLV=11
POWER=-73dBm
C/N=5dB
BER 3.94E-2
Eテレ室蘭石持NHK Eテレ室蘭(JOIZ)
AntLV=67
POWER=-53dBm
C/N=26dB
BER 0.00E-0
渡島局石持NHK総合・函館(JOVK)渡島局
AntLV=88
POWER=-50dBm
C/N=33dB
BER 0.00E-0

 確かに石持漁港の成績は良い!
 海上伝搬+山岳回折という条件が付いてHBCSTVUHBTVhIZVK渡島局がBERエラーフリーで受かるのだから、受信状況は非常に良い地点である。

 ただ、HTBが伸び悩んでいるのと、IQが復調できないレベルに留まってしまった。
 HTBは受信電力も低いので、混信は考えにくいか。HTBも場所を変えたり高さを変えれば良いのかもしれない。

 それにしてもIQの悪さは指向性の無さが如実に効いている気がする。出力が500WでERPも室蘭局で最弱とはいえ7.7kWもあるのだ。

室蘭−石持断面図
TVh室蘭局−石持漁港 伝搬路断面図】

 測量山のTVh室蘭局からの方位角は165.51°、距離は111.30km。
 測量山から噴火湾を一跨ぎにし、亀田半島の旧恵山町と旧椴法華村の境界の海向山で山岳回折し、津軽海峡も越えて石持漁港まで到達する。

 一見、間に亀田半島を挟むので地形的障壁になりそうに思えるが、海向山での山岳回折が無ければ石持漁港までは良好な電波伝搬が出来ないことは尻屋崎の結果からも明らかである。

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【むつ市大畑 大畑港】

 最後は自身でも室蘭局のワンセグ受信経験のある大畑港へ。
 旧国道279号から大畑港の海峡サーモン販売の北彩屋に曲がると、割と簡単に室蘭局のワンセグが受かるので、漁港方面や旧フェリー埠頭方面には移動せずピンポイントで狙った。

むつ市大畑 大畑港 測量山8波受信データ(2023/9/23)
FEM表示画面表示値
HBC室蘭大畑北海道放送(HBC)
AntLV=75
POWER=-54dBm
C/N=28dB
BER 0.00E-0
STV室蘭大畑札幌テレビ放送(STV)
AntLV=66
POWER=-55dBm
C/N=24dB
BER 0.00E-0
HTB室蘭大畑北海道テレビ放送(HTB)
AntLV=85
POWER=-52dBm
C/N=29dB
BER 0.00E-0
UHB室蘭大畑北海道文化放送(UHB)
AntLV=75
POWER=-52dBm
C/N=28dB
BER 0.00E-0
TVh室蘭大畑テレビ北海道(TVh)
AntLV=61
POWER=-59dBm
C/N=23dB
BER 0.00E-0
NHK総合室蘭大畑NHK総合・室蘭(JOIQ)
AntLV=44
POWER=-62dBm
C/N=17dB
BER 3.68E-4
Eテレ室蘭大畑NHK Eテレ室蘭(JOIZ)
AntLV=38
POWER=-63dBm
C/N=12dB
BER 3.81E-2
渡島局大畑NHK総合・函館(JOVK)渡島局
AntLV=70
POWER=-56dBm
C/N=27dB
BER 0.00E-0

 Eテレ室蘭(IZ)以外の7波が復調

 亀田半島方面への指向性が無いNHK総合・室蘭(IQ)がどうしてもEPGに登録したくて、かなり微調整を粘って何とかなった。コツは、海峡サーモン販売店の横の斜めの道のラインに沿って岸壁に出て、製氷施設の建物の際を狙うコースになる。
 亀田半島方面にも指向性がある民放とVK渡島局がBERエラーフリーなのを思えば、やはり相当厳しいのだ。

室蘭−大畑港断面図
TVh室蘭局−大畑港 伝搬路断面図】

 測量山のTVh室蘭局からの方位角は169.98°、距離は103.37km。
 旧恵山町と旧南茅部町の境界の無名の尾根が回折点になるようだ。丸山(691m)から西に約1.7kmの地点となる。

 亀田半島の脊梁は津軽海峡側と噴火湾側に水系を分けるが、対東通村でみても対大畑町でみても割と素直な地形になっているように思う。

DSC_0929
かつてフェリーのあった大畑港

 大畑−室蘭間のフェリー航路が消滅して25年が経過するが(正式な廃止からは16年)、室蘭の地デジの電波は間違いなく大畑に今日も届いているのである。
 無論、大畑も通常は函館局を遠距離受信するのが定石ではあると思うが、どうしても地形的に苦しい場合など助けになるのは室蘭局である。
 そして亀田半島の脊梁は素直で、下北半島にとても優しい。

NHKMURORANLOGO
NHK総合・室蘭の局ロゴも無事取得】

 NHK総合・室蘭の局ロゴも無事取得できた。
 031-2と枝番がまた1つ進んだ。青森、函館、室蘭と進んだためである。

 さて、せっかく確保したNHK総合・室蘭だが、2022年3月末で室蘭放送局のローカルニュースなどの放送は終わっているのだという。
 2021年度までは室蘭放送局が胆振総合振興局と日高振興局向けに夕方ニュースの「ほっとニュース北海道いぶりDAYひだか」などを放送していたというが、現在は札幌放送局(JOIK)と同一番組だという。

 室蘭放送局の流れを見ていると、函館放送局もそのうち札幌放送局(JOIK)に統合されてしまうのではないかという気もする。
 そうなると、建前として測量山でIQ室蘭親局VK渡島中継局を分ける必要もなくなるわけで、NHKの本音としては民放と同じように測量山で放送をしたいのではないかという気もする。
   
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