前回の続き。
1968(昭和43)年5月16日の十勝沖地震で電電公社の甲地無線中継所が電源喪失し、本州と北海道の間の通信が2〜3時間ほど途絶してしまった(時間の記録については電電公社側と北海道のHBCやSTVの社史では1時間程度のズレがある)。
この経緯については当ブログが2024年5月16日に記事化したので読んでもらえればと思うが、この地震は電電公社や現NTTでも伝送路の多重化が必要だという教訓を学んだ出来事だと評価しているものである。
十勝沖地震発災当時、青森−札幌間のマイクロ回線が同年12月開通を目指して建設中で、これが開通していれば甲地が被害を受けても迂回できたと電電公社も後に振り返っていて、発災から5日後の5月21日に開かれた第58回参議院逓信委員会第18号で、米澤滋電電公社総裁は9月を目標に開通時期の繰り上げも表明している。
地震前から建設中だったという経緯から、十勝沖地震があったから開通したという位置づけではないが、本州・北海道間のマイクロウェーブ伝送経路の多重化のために生まれたのが、今回紹介する青森−札幌間マイクロ回線である。
【北海道・青森周辺電電公社マイクロ回線網1968】
最初の東仙札幹線が下北半島−亀田半島ルートだったのに対し、青森−札幌間マイクロ回線は青函トンネルと同じく津軽半島−松前半島ルートである。
下北−亀田か津軽−松前のどちらに通すかというのは津軽海峡横断の永遠のテーマのような気もするが、電電公社は両方に回線を構えた。もっとも、前年1967(昭和42)年12月に新潟−青森間の日本海沿岸のマイクロ回線が開通しているので、青森−札幌間はその回線の延長と見るべきだろう。東京から札幌に至る北東国土軸の幹線の経由地を仙台にするか新潟にするかという違いである。
青森以北の無線中継所は青森−蓬田−知内−鶉−富野−豊浦−中山峠−手稲−札幌東である。札幌東と札幌(大通)の連絡は同軸ケーブルなど有線だったらしい。
1968年十勝沖地震前後は、電電公社がマイクロ無線の経路多重化を進めいく一方で、電電公社は労使関係が悪化していた時期でもある。
遡ること3年前の1965(昭和40)年4月20、23日の2日、全電通労組が半日ストを決行した。
電電公社副総裁の米澤滋は21日に総裁就任が決まっていたが、20日午後に「ストに対しては厳重に処分する」と声明を出したことが国会で取り上げられてしまう。
23日の第48回国会衆議院社会労働委員会で、国鉄労組出身で日本社会党の吉村吉雄から「電電総裁にお尋ねしたいのですが、(中略)あなたの第一声というのは、いま電電の労使の紛争の中でいろいろ問題が起こっている、したがって、この紛争にあたって、電電の組合あるいは組合員に対して厳重な処分をするという談話を、新任の第一声として発表しておるのです。これは、この種の問題については、たいへん異例のものではないか」と批判されてしまう。
米澤は「副総裁といたしまして談話を出した」と回答し、吉村吉雄からさらに追及されていくのだが、賃金問題と人員の合理化が紛争の原因であったらしい。
【2024年現在の甲地無線中継所跡】
1965(昭和40)年6月5日、電電公社はスト参加者全員に対し処分を発表し、解雇32人、停職677人、減給11,855人、戒告142,950人という規模であった。この後、労組側はパルチザン闘争とかマンモス訴訟で抵抗し、米澤は国鉄や専売といったほかの公社総裁との関係も構築していく様子が「私の履歴書」に記されている。
2009年3月30日付の東奥日報の「連載／ふるさとあの瞬間（とき）／電信電話の記憶 ８／震災を越えて（下）／ケーブル工事３年がかり」は、十勝沖地震後のケーブル復旧について取り上げているが、八戸電信電話局でも「電報部門などの合理化も進められ、労使関係がぎくしゃくしていた」という。
日本電信電話公社二十五年史編集委員会 編(1978)「日本電信電話公社二十五年史 別巻」208頁によれば、昭和43年度における事業経営に関する運営方策として業務の集約・統合、無人化を推進する方針が示されており、青森県においても甲地無線中継所の無人化が決まる。
【北海道・青森周辺電電公社マイクロ回線網1970】
甲地無線中継所の無人化に先立ち、1970(昭和45)年2月15日に八戸市に八戸無線中継所が設置される。同年11月20日、甲地無線中継所は無人化工事が完了し、12月2日より八戸統制無線中継所の保守管轄となり、12月17日からは東仙札幹線の経路が従来の折爪−甲地直結から、折爪−八戸−倉石−甲地に変更となった。
標高850mの折爪岳から甲地までは電波の見通しも良好だが(VHF無線電話時代は下北半島の釜臥まで通していたくらいである)、標高の低い八戸無線中継所から47km離れた甲地無線中継所までは電波の見通しがギリギリなこともあって、倉石無線中継所(三戸郡倉石村、現五戸町)の新設が必要になったようだ。
また、新たに八戸に誕生した八戸無線中継所は統制無線中継所であり、従来は盛岡管轄だった岩手県二戸郡福岡町(現二戸市)の無人無線中継所である折爪無線中継所も八戸管轄に組み込まれた。
上北郡東北町の甲地無線中継所はもともとは甲地統制無線中継所であり、かつて青森市の青森統制無線中継所(現・NTT青森支店ビル)は甲地統制無線中継所青森分室だった──つまり青森をも傘下に持つ拠点だった歴史も持っていたが、青森管轄への移行と八戸統制無線中継所の開設を経て、とうとう無人化してしまったのである。
【甲地無線中継所の位置図】
甲地無線中継所跡探訪の記事で述べた通り、東北町の旧名である甲地村に位置し「甲地」と名が付くものの、甲地無線中継所は東北町の主邑である乙供や甲地からは離れていて、上北郡野辺地町中心部にむしろ近いくらいである。
首都・東京と五大都市の一角・札幌を結ぶ北東国土軸の通信の幹線である東仙札幹線の拠点の一つであった甲地無線中継所の無人化は、野辺地町にとってもショックだったのだろう。
野辺地町史編纂委員会 編(1977)「野辺地町郷土史年表」の226頁には、野辺地町内に存在したわけでも無いのに「甲地無線中継所の無人化工事が完成した。」と記録されていることは特筆すべきことだろう。
野辺地は町とはいえ2015(平成27)年の国勢調査まで総務省統計局基準で人口集中地区に指定されるような中心市街地を持ち、ある程度の都市機能も有している町だ(同じ2015年の国勢調査で折爪のお膝元・岩手県二戸市は市なのに人口集中地区を喪失しているくらいである)。
甲地無線中継所に勤務する電電公社職員も、乙供より近く発展している野辺地町内に居を構え通勤する人も多かっただろうと推測すると、無人化が野辺地町にとって経済的に損失となるのは想像に難くない。
甲地無線中継所とは、それほどの存在だったということであろう。
東仙札幹線の八戸周辺の経路変更後の経路で、1972(昭和47)年の札幌オリンピックを迎えることになる。
電電公社にとっては競技データの通信サービスや、国際電信電話サービスの提供など日本電信電話公社二十五年史編集委員会 編(1978)「日本電信電話公社二十五年史 中巻」では「公社技術の粋を傾けた」と総括されており、北海道放送映画(現HBC FLEX)制作による電電公社記録映画「雪と氷と情報と 札幌オリンピックと電気通信」も制作されている。
同映画ではマイクロ回線網についてあまり描かれていないが、日本電信電話公社二十五年史編集委員会 編(1978)「日本電信電話公社二十五年史 中巻」の814頁に「札幌オリンピック回線構成図」が掲載されており、これを基に当時の回線図を作成した。
1969(昭和44)年初頭から国際カラーテレビ中継体制の検討を始めたというが、海外の放送機関や国内民放の放送計画など二転三転し、最終的に確定したのが1970(昭和45)年末だったという。
【札幌オリンピックのテレビ中継回線】
国内のテレビ回線は、NHKが一元的に札幌−東京間の回線を使用し、札幌からの映像を東京で受けて、東京から各地方放送局にネットした。
また民放もNHKから東京でキー局各社に分配され、全国各地の系列ネット局へと中継したという。
国内テレビの回線経路は札幌−札幌東−中山峠−知内−蓬田−青森−秋田−酒田−新潟−薬師−東京の日本海側経由の東新札ルートだった。
欧州放送連合(EBU)向けは札幌−青森−酒田と日本海ルートを通り、山形を経由して仙台から東仙札幹線で東京に至り、KDDの国際回線統括局を通って山口のKDD山口送信所から欧州へ衛星中継された。
カナダ放送協会(CBC)向けは札幌−青森と日本海ルートを通り、平内を経由して甲地から東仙札幹線で仙台へ。さらに仙台から2系統に分岐し、東仙札幹線で東京からKDDの国際回線統括局を通って茨城・十王のKDD茨城送信所に向かうルートと、仙台から常磐ルートで十王、さらに十王から東京のKDD国際回線統制局に向かうルートとなった。
CBC向け回線はOIRT(東欧圏放送機構)向け回線にも分岐され、CBCは十王からカナダへ、OIRTは山口からソビエトへ衛星中継された。
アメリカのNBC向けは札幌−登別−汐首−近川−甲地−八戸−仙台−那須−東京の東仙札幹線ルートで、東京から常磐ルートで十王に至り、CBCと同じくKDD茨城送信所からアメリカに衛星中継された。
かくして甲地無線中継所は無人化されたが、札幌オリンピック1972においてはアメリカNBC向けの回線を中継するばかりか、カナダ放送協会(CBC)やOIRT(東欧圏放送機構)に向けた回線を繋ぐ分岐点として重要な位置にあり、欧米に札幌オリンピックの生中継を届ける重大な役目を果たしたのである。
NTTのマイクロ中継回線が廃止された今、近川や折爪など前後の無線中継所は徐々に忘れ去られていくだろうが、甲地と言う無線中継所の名前は札幌オリンピック1972の歴史資料の図面に残っており、誰かが資料を紐解くたびに後世にも継がれていくに違いない。
←クリックでブログランキングに投票！
【青森−札幌間のマイクロウェーブ伝送回線開通は1968(昭和43)年9月】
1968(昭和43)年5月16日の十勝沖地震で電電公社の甲地無線中継所が電源喪失し、本州と北海道の間の通信が2〜3時間ほど途絶してしまった(時間の記録については電電公社側と北海道のHBCやSTVの社史では1時間程度のズレがある)。
この経緯については当ブログが2024年5月16日に記事化したので読んでもらえればと思うが、この地震は電電公社や現NTTでも伝送路の多重化が必要だという教訓を学んだ出来事だと評価しているものである。
十勝沖地震発災当時、青森−札幌間のマイクロ回線が同年12月開通を目指して建設中で、これが開通していれば甲地が被害を受けても迂回できたと電電公社も後に振り返っていて、発災から5日後の5月21日に開かれた第58回参議院逓信委員会第18号で、米澤滋電電公社総裁は9月を目標に開通時期の繰り上げも表明している。
地震前から建設中だったという経緯から、十勝沖地震があったから開通したという位置づけではないが、本州・北海道間のマイクロウェーブ伝送経路の多重化のために生まれたのが、今回紹介する青森−札幌間マイクロ回線である。
最初の東仙札幹線が下北半島−亀田半島ルートだったのに対し、青森−札幌間マイクロ回線は青函トンネルと同じく津軽半島−松前半島ルートである。
下北−亀田か津軽−松前のどちらに通すかというのは津軽海峡横断の永遠のテーマのような気もするが、電電公社は両方に回線を構えた。もっとも、前年1967(昭和42)年12月に新潟−青森間の日本海沿岸のマイクロ回線が開通しているので、青森−札幌間はその回線の延長と見るべきだろう。東京から札幌に至る北東国土軸の幹線の経由地を仙台にするか新潟にするかという違いである。
青森以北の無線中継所は青森−蓬田−知内−鶉−富野−豊浦−中山峠−手稲−札幌東である。札幌東と札幌(大通)の連絡は同軸ケーブルなど有線だったらしい。
【1970(昭和45)年、甲地無線中継所の無人化と、八戸経由へのルート変更】
1968年十勝沖地震前後は、電電公社がマイクロ無線の経路多重化を進めいく一方で、電電公社は労使関係が悪化していた時期でもある。
遡ること3年前の1965(昭和40)年4月20、23日の2日、全電通労組が半日ストを決行した。
電電公社副総裁の米澤滋は21日に総裁就任が決まっていたが、20日午後に「ストに対しては厳重に処分する」と声明を出したことが国会で取り上げられてしまう。
23日の第48回国会衆議院社会労働委員会で、国鉄労組出身で日本社会党の吉村吉雄から「電電総裁にお尋ねしたいのですが、(中略)あなたの第一声というのは、いま電電の労使の紛争の中でいろいろ問題が起こっている、したがって、この紛争にあたって、電電の組合あるいは組合員に対して厳重な処分をするという談話を、新任の第一声として発表しておるのです。これは、この種の問題については、たいへん異例のものではないか」と批判されてしまう。
米澤は「副総裁といたしまして談話を出した」と回答し、吉村吉雄からさらに追及されていくのだが、賃金問題と人員の合理化が紛争の原因であったらしい。
1965(昭和40)年6月5日、電電公社はスト参加者全員に対し処分を発表し、解雇32人、停職677人、減給11,855人、戒告142,950人という規模であった。この後、労組側はパルチザン闘争とかマンモス訴訟で抵抗し、米澤は国鉄や専売といったほかの公社総裁との関係も構築していく様子が「私の履歴書」に記されている。
2009年3月30日付の東奥日報の「連載／ふるさとあの瞬間（とき）／電信電話の記憶 ８／震災を越えて（下）／ケーブル工事３年がかり」は、十勝沖地震後のケーブル復旧について取り上げているが、八戸電信電話局でも「電報部門などの合理化も進められ、労使関係がぎくしゃくしていた」という。
日本電信電話公社二十五年史編集委員会 編(1978)「日本電信電話公社二十五年史 別巻」208頁によれば、昭和43年度における事業経営に関する運営方策として業務の集約・統合、無人化を推進する方針が示されており、青森県においても甲地無線中継所の無人化が決まる。
甲地無線中継所の無人化に先立ち、1970(昭和45)年2月15日に八戸市に八戸無線中継所が設置される。同年11月20日、甲地無線中継所は無人化工事が完了し、12月2日より八戸統制無線中継所の保守管轄となり、12月17日からは東仙札幹線の経路が従来の折爪−甲地直結から、折爪−八戸−倉石−甲地に変更となった。
標高850mの折爪岳から甲地までは電波の見通しも良好だが(VHF無線電話時代は下北半島の釜臥まで通していたくらいである)、標高の低い八戸無線中継所から47km離れた甲地無線中継所までは電波の見通しがギリギリなこともあって、倉石無線中継所(三戸郡倉石村、現五戸町)の新設が必要になったようだ。
また、新たに八戸に誕生した八戸無線中継所は統制無線中継所であり、従来は盛岡管轄だった岩手県二戸郡福岡町(現二戸市)の無人無線中継所である折爪無線中継所も八戸管轄に組み込まれた。
上北郡東北町の甲地無線中継所はもともとは甲地統制無線中継所であり、かつて青森市の青森統制無線中継所(現・NTT青森支店ビル)は甲地統制無線中継所青森分室だった──つまり青森をも傘下に持つ拠点だった歴史も持っていたが、青森管轄への移行と八戸統制無線中継所の開設を経て、とうとう無人化してしまったのである。
甲地無線中継所跡探訪の記事で述べた通り、東北町の旧名である甲地村に位置し「甲地」と名が付くものの、甲地無線中継所は東北町の主邑である乙供や甲地からは離れていて、上北郡野辺地町中心部にむしろ近いくらいである。
首都・東京と五大都市の一角・札幌を結ぶ北東国土軸の通信の幹線である東仙札幹線の拠点の一つであった甲地無線中継所の無人化は、野辺地町にとってもショックだったのだろう。
野辺地町史編纂委員会 編(1977)「野辺地町郷土史年表」の226頁には、野辺地町内に存在したわけでも無いのに「甲地無線中継所の無人化工事が完成した。」と記録されていることは特筆すべきことだろう。
野辺地は町とはいえ2015(平成27)年の国勢調査まで総務省統計局基準で人口集中地区に指定されるような中心市街地を持ち、ある程度の都市機能も有している町だ(同じ2015年の国勢調査で折爪のお膝元・岩手県二戸市は市なのに人口集中地区を喪失しているくらいである)。
甲地無線中継所に勤務する電電公社職員も、乙供より近く発展している野辺地町内に居を構え通勤する人も多かっただろうと推測すると、無人化が野辺地町にとって経済的に損失となるのは想像に難くない。
甲地無線中継所とは、それほどの存在だったということであろう。
【1972(昭和47)年の札幌オリンピックの中継回線】
東仙札幹線の八戸周辺の経路変更後の経路で、1972(昭和47)年の札幌オリンピックを迎えることになる。
電電公社にとっては競技データの通信サービスや、国際電信電話サービスの提供など日本電信電話公社二十五年史編集委員会 編(1978)「日本電信電話公社二十五年史 中巻」では「公社技術の粋を傾けた」と総括されており、北海道放送映画(現HBC FLEX)制作による電電公社記録映画「雪と氷と情報と 札幌オリンピックと電気通信」も制作されている。
同映画ではマイクロ回線網についてあまり描かれていないが、日本電信電話公社二十五年史編集委員会 編(1978)「日本電信電話公社二十五年史 中巻」の814頁に「札幌オリンピック回線構成図」が掲載されており、これを基に当時の回線図を作成した。
1969(昭和44)年初頭から国際カラーテレビ中継体制の検討を始めたというが、海外の放送機関や国内民放の放送計画など二転三転し、最終的に確定したのが1970(昭和45)年末だったという。
国内のテレビ回線は、NHKが一元的に札幌−東京間の回線を使用し、札幌からの映像を東京で受けて、東京から各地方放送局にネットした。
また民放もNHKから東京でキー局各社に分配され、全国各地の系列ネット局へと中継したという。
国内テレビの回線経路は札幌−札幌東−中山峠−知内−蓬田−青森−秋田−酒田−新潟−薬師−東京の日本海側経由の東新札ルートだった。
欧州放送連合(EBU)向けは札幌−青森−酒田と日本海ルートを通り、山形を経由して仙台から東仙札幹線で東京に至り、KDDの国際回線統括局を通って山口のKDD山口送信所から欧州へ衛星中継された。
カナダ放送協会(CBC)向けは札幌−青森と日本海ルートを通り、平内を経由して甲地から東仙札幹線で仙台へ。さらに仙台から2系統に分岐し、東仙札幹線で東京からKDDの国際回線統括局を通って茨城・十王のKDD茨城送信所に向かうルートと、仙台から常磐ルートで十王、さらに十王から東京のKDD国際回線統制局に向かうルートとなった。
CBC向け回線はOIRT(東欧圏放送機構)向け回線にも分岐され、CBCは十王からカナダへ、OIRTは山口からソビエトへ衛星中継された。
アメリカのNBC向けは札幌−登別−汐首−近川−甲地−八戸−仙台−那須−東京の東仙札幹線ルートで、東京から常磐ルートで十王に至り、CBCと同じくKDD茨城送信所からアメリカに衛星中継された。
かくして甲地無線中継所は無人化されたが、札幌オリンピック1972においてはアメリカNBC向けの回線を中継するばかりか、カナダ放送協会(CBC)やOIRT(東欧圏放送機構)に向けた回線を繋ぐ分岐点として重要な位置にあり、欧米に札幌オリンピックの生中継を届ける重大な役目を果たしたのである。
NTTのマイクロ中継回線が廃止された今、近川や折爪など前後の無線中継所は徐々に忘れ去られていくだろうが、甲地と言う無線中継所の名前は札幌オリンピック1972の歴史資料の図面に残っており、誰かが資料を紐解くたびに後世にも継がれていくに違いない。
◆引用文献・参考文献・ウェブサイト
・青森放送社史編纂委員会(1980)「青森放送二十五年史」
・札幌テレビ放送社史編纂委員会編(1978)「札幌テレビ放送二十年史」
・四国電気通信局(1973)「四国電信電話事業史 : 公社発足20年」
・仙台無線通信部(1978)「東北無線史」
・電波監理委員会 編(1950)「日本無線史 第1巻」
・東奥日報社(2009)「2009年3月30日付夕刊 連載／ふるさとあの瞬間（とき）／電信電話の記憶 ８／震災を越えて（下）／ケーブル工事３年がかり」
・日本電信電話公社運用局管理課(1953)「電気通信業務研究 (47)」
・日本電信電話公社施設局 編(1959)「電気通信施設 11(10)」
・日本電信電話公社東北電気通信局(1964)「東北電信電話史資料 〔第10 第1〕」
・日本電信電話公社東北電気通信局編(1982)「東北の電信電話 公社30周年」
・日本電信電話公社二十五年史編集委員会(1978)「日本電信電話公社二十五年史 中巻」
・日本電信電話公社二十五年史編集委員会(1978)「日本電信電話公社二十五年史 別巻」
・日本電信電話公社福岡無線通信部(1984)「九州無線史」
・日本放送協会(1969)「NHK年鑑'69」
・日本放送協会青森放送局(1993)「歳月 あおもりふれあいの五十年」
・日本放送出版協会(1967)「放送文化 23(7)」
・日本民間放送連盟(1961)「民間放送十年史」
・野辺地町史編纂委員会 編(1977)「野辺地町郷土史年表」
・八戸市(1969)「地震：'68十勝沖地震の記録」
・林新二(1957)「マイクロウェーブ通信方式」
・北海道電気通信局 編(1964)「北海道の電信電話史」
・北海道放送社史編纂室・編(1972)「北海道放送二十年」
・米沢滋(1977)「私の履歴書」日本経済新聞社
・青森放送社史編纂委員会(1980)「青森放送二十五年史」
・札幌テレビ放送社史編纂委員会編(1978)「札幌テレビ放送二十年史」
・四国電気通信局(1973)「四国電信電話事業史 : 公社発足20年」
・仙台無線通信部(1978)「東北無線史」
・電波監理委員会 編(1950)「日本無線史 第1巻」
・東奥日報社(2009)「2009年3月30日付夕刊 連載／ふるさとあの瞬間（とき）／電信電話の記憶 ８／震災を越えて（下）／ケーブル工事３年がかり」
・日本電信電話公社運用局管理課(1953)「電気通信業務研究 (47)」
・日本電信電話公社施設局 編(1959)「電気通信施設 11(10)」
・日本電信電話公社東北電気通信局(1964)「東北電信電話史資料 〔第10 第1〕」
・日本電信電話公社東北電気通信局編(1982)「東北の電信電話 公社30周年」
・日本電信電話公社二十五年史編集委員会(1978)「日本電信電話公社二十五年史 中巻」
・日本電信電話公社二十五年史編集委員会(1978)「日本電信電話公社二十五年史 別巻」
・日本電信電話公社福岡無線通信部(1984)「九州無線史」
・日本放送協会(1969)「NHK年鑑'69」
・日本放送協会青森放送局(1993)「歳月 あおもりふれあいの五十年」
・日本放送出版協会(1967)「放送文化 23(7)」
・日本民間放送連盟(1961)「民間放送十年史」
・野辺地町史編纂委員会 編(1977)「野辺地町郷土史年表」
・八戸市(1969)「地震：'68十勝沖地震の記録」
・林新二(1957)「マイクロウェーブ通信方式」
・北海道電気通信局 編(1964)「北海道の電信電話史」
・北海道放送社史編纂室・編(1972)「北海道放送二十年」
・米沢滋(1977)「私の履歴書」日本経済新聞社
←クリックでブログランキングに投票！
コメント
コメント一覧
札幌オリンピックの海外向け中継の詳細が出てきました。当時はインド洋衛星がテレビ１回線しか確保できなかった関係で、OIRT向けとEBS向けは時間帯を分けて送信してたようです。同時に、OIRT向けが西ドイツ国内で衛星から受信し、ハンブルグで東側の放送網に中継していたとは・・・
札幌オリンピック当時は衛星中継は西側諸国独自の技術だったのかと感じた次第です。
いつもコメントありがとうございます。
貴重な資料ありがとうございます。札幌オリンピックの衛星通信のことが詳細に書かれていると思います。
「日本電信電話公社二十五年史 中巻」によると、ソ連は1971年に、地球局を搭載したソ連船を小樽か新潟に入港させてモルニア衛星に繋ぎOIRT加盟の東側諸国へ中継することを打診し、電電公社とKDDは富山港を適地として調整したようです。ただ、法的な問題や技術的制約から最終的には断念しています。
技術的制約の詳細は不明ですが、法的な問題は日本国の領海からソ連が電波を送信することが電波法にひっかかるということかなと思っています。